全日本空輸(ANA/NH)は11月6日、廃食油や動植物油脂を原料とする「SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)」を使った定期便の運航を始めた。国内の航空会社による日本発の定期便では初の取り組みで、フィンランドに本社を置くNESTE(ネステ)社のSAFを給油したヒューストン行きNH114便のボーイング787-9型機(登録記号JA892A)が乗客29人(幼児1人含む)を乗せ、羽田を午前10時25分に出発した。
SAFは従来「バイオ燃料」と呼ばれていたもの。これまでの植物油などに加え、さまざまな原料から製造されるようになり、IATA(国際航空運送協会)が呼称を改めた。ANAはSAFの調達について、NESTEと10月に提携。輸入や品質管理、空港への搬入までのサプライチェーンを伊藤忠商事(8001)と3社で構築した。
NESTEのSAFは、航空機やエンジンメーカーが定めるジェット燃料の国際規格「ASTM D1655」と英国国防省の防衛規格「DEF STAN 91-091」を満たすもので、輸入段階でのジェット燃料との混合比率は30-40%。通常のジェット燃料と同じ設備で運用でき、給油量も従来と変わらない。6日のNH114便には予備燃料も含め、タンクローリー4台分にあたる約7万7000リットルが給油された。
羽田空港は、成田や関空、伊丹など他の主要空港と同じく「ハイドラントシステム」と呼ばれる埋設型の給油施設が整備されている。羽田では三愛石油(8097)の施設からジェット燃料が駐機場へ圧送され、「サービサー」と呼ばれる車両を介して航空機に給油される。1分間に2500リットル給油でき、6日のNH114便は30分強で満タンになった。
今回ANAが調達したNESTEのSAFは、ジェット燃料と混合した状態で約5500トン。欧州からタンカーを使い10月24日に羽田空港、28日に成田空港へ約2750トンずつ到着した。国際的な第三者認証機関ISCCによるライフサイクル評価で、原油の採掘や日本までの輸送を含め、既存のジェット燃料使用時と比べて約90%の二酸化炭素(CO2)削減効果が証明されているという。
ANAは、2050年までに航空機の運航で発生するCO2排出量を、2005年比で50%削減することを目標に掲げている。2019年には、排ガスを原料とするSAFの調達について米LanzaTech(ランザテック)と契約を結んでおり、同年11月にボーイング777-300ER型機の新造機(登録記号JA797A)を受領した際、ワシントン州シアトル近郊にあるボーイングのエバレット工場から羽田へのデリバリーフライトに使用している。
ANAによると、現在のSAFの生産規模は流通するジェット燃料全体の0.02%程度に過ぎないといい、航空会社側は安定的にSAFを確保するのが課題だ。ANAは、LanzaTechのSAFを2022年初頭から使用する予定で、オランダのロッテルダムから輸入しているNESTEのSAFは、同社のシンガポール製油所で生産されるものに2023年以降切り替え、アジア域内での安定供給を目指す。
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