エアライン, ボーイング, 機体, 空港 — 2020年11月6日 14:34 JST

ANA、バイオ燃料で定期便運航開始 CO2を9割削減

By
  • 共有する:
  • Print This Post

 全日本空輸(ANA/NH)は11月6日、廃食油や動植物油脂を原料とする「SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)」を使った定期便の運航を始めた。国内の航空会社による日本発の定期便では初の取り組みで、フィンランドに本社を置くNESTE(ネステ)社のSAFを給油したヒューストン行きNH114便のボーイング787-9型機(登録記号JA892A)が乗客29人(幼児1人含む)を乗せ、羽田を午前10時25分に出発した。

国内航空会社では初めてSAFを使用した日本発の定期便の運航を始めたANA=20年11月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 SAFは従来「バイオ燃料」と呼ばれていたもの。これまでの植物油などに加え、さまざまな原料から製造されるようになり、IATA(国際航空運送協会)が呼称を改めた。ANAはSAFの調達について、NESTEと10月に提携。輸入や品質管理、空港への搬入までのサプライチェーンを伊藤忠商事(8001)と3社で構築した。

 NESTEのSAFは、航空機やエンジンメーカーが定めるジェット燃料の国際規格「ASTM D1655」と英国国防省の防衛規格「DEF STAN 91-091」を満たすもので、輸入段階でのジェット燃料との混合比率は30-40%。通常のジェット燃料と同じ設備で運用でき、給油量も従来と変わらない。6日のNH114便には予備燃料も含め、タンクローリー4台分にあたる約7万7000リットルが給油された。

 羽田空港は、成田や関空、伊丹など他の主要空港と同じく「ハイドラントシステム」と呼ばれる埋設型の給油施設が整備されている。羽田では三愛石油(8097)の施設からジェット燃料が駐機場へ圧送され、「サービサー」と呼ばれる車両を介して航空機に給油される。1分間に2500リットル給油でき、6日のNH114便は30分強で満タンになった。

羽田空港でANAの787にSAFを給油するホースをつなげる三愛石油のスタッフ=20年11月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

SAFのイラストが掲げられた三愛石油のサービサー=20年11月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 今回ANAが調達したNESTEのSAFは、ジェット燃料と混合した状態で約5500トン。欧州からタンカーを使い10月24日に羽田空港、28日に成田空港へ約2750トンずつ到着した。国際的な第三者認証機関ISCCによるライフサイクル評価で、原油の採掘や日本までの輸送を含め、既存のジェット燃料使用時と比べて約90%の二酸化炭素(CO2)削減効果が証明されているという。

 ANAは、2050年までに航空機の運航で発生するCO2排出量を、2005年比で50%削減することを目標に掲げている。2019年には、排ガスを原料とするSAFの調達について米LanzaTech(ランザテック)と契約を結んでおり、同年11月にボーイング777-300ER型機の新造機(登録記号JA797A)を受領した際、ワシントン州シアトル近郊にあるボーイングのエバレット工場から羽田へのデリバリーフライトに使用している。

 ANAによると、現在のSAFの生産規模は流通するジェット燃料全体の0.02%程度に過ぎないといい、航空会社側は安定的にSAFを確保するのが課題だ。ANAは、LanzaTechのSAFを2022年初頭から使用する予定で、オランダのロッテルダムから輸入しているNESTEのSAFは、同社のシンガポール製油所で生産されるものに2023年以降切り替え、アジア域内での安定供給を目指す。

*写真は14枚。

羽田空港でSAFを給油したヒューストン行きNH114便を横断幕を掲げて見送るANAの地上係員とグラハンスタッフら=20年11月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire


これより先は会員の方のみご覧いただけます。

無料会員は、有料記事を月あたり3記事まで無料でご覧いただけます。
有料会員は、すべての有料記事をご覧いただけます。

会員の方はログインしてご覧ください。
ご登録のない方は、無料会員登録すると続きをお読みいただけます。

無料会員として登録後、有料会員登録も希望する方は、会員用ページよりログイン後、有料会員登録をお願い致します。

会員としてログイン
 ログイン状態を保存する  

* 会員には、無料個人会員および有料個人会員、有料法人会員の3種類ございます。
 これらの会員になるには、最初に無料会員としての登録が必要です。
 購読料はこちらをご覧ください。

* 有料会員と無料会員、非会員の違いは下記の通りです。
・有料会員:会員限定記事を含む全記事を閲覧可能
・無料会員:会員限定記事は月3本まで閲覧可能
・非会員:会員限定記事以外を閲覧可能

* 法人会員登録は、こちらからお問い合わせください。
* 法人の会員登録は有料のみです。

無料会員登録
* 利用規約 に同意する。
*必須項目新聞社や通信社のニュースサイトに掲載された航空業界に関する記事をピックアップした無料メールニュース。土日祝日を除き毎日配信しています。サンプルはこちら
登録内容が反映されるまでにお時間をいただくことがございます。あらかじめご了承ください。