全日本空輸(ANA)は5月26日、ボーイング787型機の商業運航を臨時便で再開した。1月以来、約4カ月ぶりで、定期便は6月1日から再開する。
商業運航の再開初便は札幌発羽田行きNH1404便で、機材は335席の国内線仕様機(登録番号JA812A)。乗客218人と乗員9人(運航乗務員2人、客室乗務員7人)を乗せて午後5時3分に出発し、羽田空港には定刻通り午後6時35分に到着した。
搭乗開始に先立ち、新千歳空港の搭乗ゲート前でANAの伊藤博行副社長が「日米両国の当局が承認した改修作業後、約200便の慣熟運航を実施し、万全の準備を整えた」と乗客に説明。搭乗手続きが始まると、運航乗務員や客室乗務員が手書きのメッセージカードを手渡し、乗客を見送った。
睡眠を取る乗客も
出発後の機内では、客室乗務員が「787の運航停止に伴う欠航や機材変更をお詫び致します」とアナウンス。その後同機は午後5時15分に離陸し、手元の時計で同22分にシートベルト着用サインが消え、客室乗務員が飲み物のサービスを開始した。
その後、石井正之機長が、「改修作業を終了し、FAA(米国連邦航空局)と国土交通省により安全性が確認され、ANAをはじめとする各航空会社による確認飛行で(新バッテリーシステムの)健全性が確認され、運航再開となりました」とバッテリー改修作業について説明。
「皆様に安心をお届けするため全社員が一丸となって安全を第一に、“あんしん、あったか、あかるく元気”(記者注・ANAのスローガン)に空の旅を提供していきます」と、今後の取り組みについても乗客に説明した。
離陸から30分が過ぎた機内を見渡すと、熟睡している人も多く見られた。羽田に着陸した際も拍手などは起こらず、平穏な機内だった。到着後の機内はLED照明で天井が7色に染められ、写真におさめてから降機する乗客が目立った。
787に初めて乗ったという40歳代の女性は、「不安はまったくなかった。機長のアナウンスで安心できた」と感想を述べた。
羽田に到着した伊藤副社長は、「私どもが、たくさんの言葉を使って大丈夫だ、大丈夫だと言っても、お客様にはなかなか伝わらないと思う。1便、1便、確実に飛ばしていく」と、安全運航の実績を積み重ねて理解を得たいとの姿勢を示した。
整備態勢と需要で札幌
ANAでは新型バッテリーへの改修を終えた機体については、動作状況を確認する確認飛行を改修対象の全17機で実施。これまでの飛行でバッテリーの不具合や異常は起きていないという。
今回の臨時便を含めて、ANAでは技術者の同乗は行わなくても問題ないと判断し、商業運航はバッテリートラブル発生前と同じ態勢で運航するとしている。
運航乗務員の慣熟飛行や臨時便を羽田-札幌線とした理由は、整備など地上支援の態勢が十分であることや、臨時便の需要が見込めるなど、総合的に判断したという。初便で使用した機体も、26日に札幌で慣熟飛行を行った後、同便に充当された。
定期便は羽田発の国際線
ANAと日本航空(JAL、9201)は、5月23日に国土交通省へバッテリーシステムの改修作業と確認飛行が全機完了したことを報告。6月1日からは、ANAが羽田を午前1時に出発するフランクフルト行きNH203便、JALが同じく羽田を午前1時に出発するシンガポール行きJL035便で定期便の運航を再開する。
海外では、エチオピア航空(ETH)が現地時間4月27日に世界で初めて787の商業運航を再開。1月から成田空港へ就航しているユナイテッド航空は、同5月20日に米国内線で再開しており、成田とデンバーを結ぶ新路線は国際線を再開する6月10日から就航予定で、成田へは日本時間11日に到着する見込み。
また、787の航空会社への引き渡しは現地時間5月14日に再開。最初の機体(登録番号JA818A)がANAホールディングス(9202)に引き渡され、日本時間16日夜に羽田へ到着した。この日は高松空港に緊急着陸した機体(登録番号JA804A)も羽田へ戻った。
関連リンク
ボーイング787型機 ANAからのお知らせ(全日本空輸)
・全日空と日航、787定期便を再開 羽田から4カ月半ぶり
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・高松に緊急着陸の全日空787、120日ぶりに羽田へ帰還
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・ユナイテッド航空、787運航をヒューストン-シカゴ線で再開
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