エアバス, エアライン, 機体, 解説・コラム — 2020年8月11日 19:54 JST

A350向けトレントXWB、中圧圧縮機ブレードに摩耗の兆候 運航に異常なし

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 ロールス・ロイス(RR)は現地時間8月11日、エアバスA350 XWB向けエンジン「Trent XWB(トレントXWB)」のうち、運航開始から4-5年が経過して最初のオーバーホールを迎えたエンジンの一部で、中圧コンプレッサー(IPC)のブレードに摩耗の兆候が確認されたことを明らかにした。RRによると、いずれのエンジンも飛行中に異常は見られなかったものの、運航期間が同程度のエンジンをすべて点検したという。EASA(欧州航空安全庁)は近く当該エンジンの安全性を確保する改修案をまとめた「耐空性改善命令(AD)」を発行する見込み。

A350が搭載するロールス・ロイスのトレントXWB=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ロールス・ロイスのトレントXWB=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 改修対象となるエンジンは、Trent XWBのうち推力が8万4000ポンドの「Trent XWB-84」。標準型のA350-900と長胴型のA350-1000の2機種で構成される双発大型機A350 XWBのうち、Trent XWB-84はA350-900向けとなる。

 A350-900は、カタール航空(QTR/QR)が最初に受領し、2015年から運航中。RRによると、エンジン内にあるIPCのブレードに摩耗の兆候が見られたのは、エンジン1基あたり平均1-2枚だったという。該当する運航期間が4-5年のTrent XWB-84は100基超あり、大半の点検は終えているという。運航期間がより短いエンジンに対しては抜き取り検査を実施したが、摩耗の兆候は見られなかったとしている。

 エアバスの納入実績によると、7月末時点で引き渡し済みのA350-900は327機で、RRによるとTrent XWB-84を搭載している機体は318機あるという。今回の摩耗に対応する追加作業は限定的で、予備部品や予備エンジンを提供できることから、航空会社の運航や年間コストに大きな影響を与えることはないとの見方を示している。

 日本の航空会社では、日本航空(JAL/JL、9201)がA350を導入しており、2019年9月1日に就航。A350-900を6機を受領済みで、いずれも国内線で使用している。このため、運航開始から4年以上経過したエンジンはない。

 RRは、Aviation Wireの取材に対して「日本国内で摩耗の兆候が見つかったエンジンはない」と回答。JALはEASAによるAD発行後の対応について「ADが発行され次第内容を確認し、メーカーと連携して速やかに対応します」とコメントした。

 RRのエンジンでは、ボーイング787型機向けエンジン「Trent 1000(トレント1000)」で、IPCのブレードに亀裂が生じる不具合が発生。運航不能になった機体が地上待機している状態「AOG(Aircraft On the Ground)」を、4-6月期に解消している。

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