有人宇宙旅行の事業化を目指す米ヴァージン・ギャラクティックは、成層圏をマッハ3(時速約3675キロメートル)で飛ぶ独自の超音速旅客機の開発に向け、エンジン大手の英ロールス・ロイス(RR)と提携したと現地時間8月3日に発表した。NASA(米国航空宇宙局)と協力し、機体の初期設計を完了。認証取得はFAA(米国連邦航空局)とも枠組みを協議を進めている。
ヴァージンは、機体設計の第一段階に当たる「ミッション・コンセプト・レビュー(MCR)」をこのほど完了し、初期設計のコンセプトを発表した。機体は9-19人乗りで、高速運航に適したデルタ翼(三角翼)を採用。高度6万フィート(約1万8000メートル)の成層圏をマッハ3で飛行する。製造は関連会社「スペースシップ・カンパニー(TSC)」が担う。
RRとは、エンジンの設計や開発で協業に向けて拘束力のない覚書(MoU)を締結した。同社は1976-2003年まで運航された超音速旅客機「コンコルド」のエンジンを手掛けた実績を持つ。成層圏をマッハ2で飛ぶコンコルドに対し、今回の機体は同程度の高度をマッハ3で飛行する計画で、エンジン設計や型式証明の取得作業に知見を持つRRと組んで開発を前進させる。
ヴァージンのチーフ・スペース・オフィサーを務めるジョージ・ホワイトサイズ氏は声明で、「初期設計コンセプトの披露をうれしく思う。高速旅行の新たな地平を開きたい」と意気込みを述べた。
一方、開発の道のりはまだ長く、実用化の時期は示していない。今後はシステム構成の定義や材料の選定を進める。また、超音速機の課題である熱マネジメントや整備、騒音、排気、燃費といった点にも引き続き取り組む。長距離の旅客運航を含めた機体運用シナリオを描いており、離着陸には既存の空港インフラを使用する方針だ。
ヴァージン・ギャラクティックは英ヴァージン・グループを率いる実業家のリチャード・ブランソン氏が設立した宇宙旅行会社。2018年12月には、サブオービタル(弾道)飛行を行う機体「スペースシップ・ツー」を用いて高度51.4マイル(約82.7キロメートル)の熱圏に到達した。
地球と宇宙の境目を巡っては、FAI(国際航空連盟)が高度100キロメートル以上を宇宙と定義する一方、米空軍は80キロメートル以上としている。
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