カンタス航空(QFA/QF)は現地時間7月22日、「ジャンボ」の愛称で親しまれたボーイング747型機による最後の旅客便を運航した。新型コロナウイルスの感染拡大もあり、当初予定を約半年早めての退役となった。最終便は上空で同社のシンボルであるカンガルーの絵を描くなどし、最後の別れを惜しんだ。
ラストフライトはシドニー発ロサンゼルス行きQF7474便で、機材は747-400ER(登録記号VH-OEJ)。操縦桿は同社初の女性機長であるシャレル・クイン氏が握った。
カンタスや航空機の位置情報を提供するウェブサイト「フライトレーダー24」(flightradar24.com)などによると、QF7474便は現地時間午後3時28分にシドニーを離陸し、航空博物館である「歴史的航空機修復協会(HARS)」などの上空を通った後、ニュージーランドとの間にあるタスマン海上で、同社のシンボルであるカンガルーの絵を描いて飛行した。
同機はその後、太平洋を横断し、ロサンゼルスには午後1時23分に着陸。飛行時間は14時間55分だった。
カンタスは1971年8月に、同社初の747となる「City of Canberra」(747-200、VH-EBA)を導入。同年9月17日に乗客294人(ファーストクラス55人、エコノミー239人)を乗せ、シドニーからシンガポールへ初フライトした。これまでに747-100、747-200、747-SP、747-300、747-400、747-400ERを計65機運航した。
1989年に就航した747-400は、6機の747-400ERを含めて27機購入し、リース機を含めて31機運航。最も新しい機体は2003年7月30日に受領した747-400ER「Wunala」(VH-OEJ)で、QF7474便はこの最終号機を使用した。
747は、長きにわたり長距離国際線の主役であったことから「空の女王」とも呼ばれる。カンタスでは、約50年間で地球9万周に相当する36億キロメートル以上を飛行した。1989年には、747-400の初号機(VH-OJA)のデリバリーフライトを活用し、シドニー-ロンドン間約1万8000キロで民間機によるノンストップ飛行の世界記録を20時間9分の飛行時間で樹立。この記録は、2019年に同社の787-9が同区間を19時間19分で飛ぶまで破られなかった。
一方、燃油費の高騰などにより747は世界的に退役が進み、中国から拡散した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受け、カンタスも当初予定を半年早めてラストフライトを行った。
カンタスグループのアラン・ジョイスCEO(最高経営責任者)は「747はオーストラリアの航空の様相を変え、低価格と直行便という新時代を打ち立てた」と振り返った。
今後は7月24日に、「航空機の墓場」とされる米カリフォルニア州モハベ空港まで飛行する予定で、17年間の旅客機としての役割を終える。
関連リンク
カンタス航空
カンタスの747
・カンタス航空、747退役 全6機、半年前倒し(20年6月25日)
・カンタス航空、羽田のジャンボ小型化 9月までA330に(20年3月11日)
・カンタス航空、ジャンボ退役へ 20年末(18年5月2日)
・カンタス航空、羽田にシドニー初便到着 747で毎日運航(15年8月1日)
・カンタスの747、ラストフライト動画公開 飛行時間15分弱(15年3月9日)
・カンタスの747、「世界最短」のラストフライトへ(15年3月4日)
各社で退役が進む747
・BA、747全機退役 新型コロナで運休のまま姿消す(20年7月17日)
・ヴァージン、747全機退役 A350-1000に置き換え(20年5月7日)
・デルタ航空の747、12月退役 最終便はソウル発デトロイト行き(17年11月15日)
・ユナイテッド航空、ジャンボ退役 ホノルル行きが最終便(17年11月9日)
・ガルーダ・インドネシア航空、747-400退役 23年間に幕(17年10月11日)
・エバー航空、747旅客型退役へ 21日に最終便(17年8月9日)
・キャセイパシフィック航空の退役747-400、社員乗せチャリティーフライト(16年10月8日)
・キャセイパシフィック航空、羽田からジャンボ最終便出発 747-400退役(16年10月1日)
・KLMオランダ航空、成田からジャンボ最終便 翼振り日本に別れ(16年9月3日)
・エールフランスの747、14日退役(16年1月8日)
・ANA最後のジャンボ、JA8961離日 747姿消す(14年4月16日)
・ANAの747ジャンボ、虹をくぐりラストフライト終える(14年3月31日)
退役した旧政府専用機
・鏡のようなバックルと菊菱模様のソファ 写真特集・前政府専用機 貴賓室公開(20年6月8日)
・旧政府専用機B-747初号機が離日 旅客型ジャンボ姿消す(19年6月28日)
・旧政府専用機B-747、2号機が離日(19年6月19日)
・旧政府専用機、2機落札 エコネコル、機体リサイクル事業進出へ(19年5月17日)
・地球365周で退役 写真特集・政府専用機B-747-400(19年3月31日)
初飛行50周年記念で特設サイト
・ボーイング、ジャンボ初飛行50周年で特設サイト(19年2月10日)