エアライン — 2020年4月1日 21:45 JST

JAL、ライブ配信で入社式 赤坂社長「イベントリスクは必ず終わりある」

By
  • 共有する:
  • Print This Post

 日本航空(JAL/JL、9201)の赤坂祐二社長は4月1日、JALグループに入社した34社2315人の新入社員に対し、中国から拡散した新型コロナウイルスへの対応や安全の重要性などについて、ライブ配信で訓示した。グループ合同入社式は例年、羽田空港の格納庫で開催しているが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大により開催形式を改めた。

赤坂社長の訓示などをライブ配信する形で入社式を開いたJAL=20年4月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 赤坂社長は、「航空業界はこれまでも数々のイベントリスクを経験してきたが、今回は全世界に及ぶ極めて深刻な事態に陥っていると言わざるをえない。JALグループはイベントリスクを契機に経営破綻に至った痛恨の反省をもとに努力を重ねてきたが、今回はこれまでの備えを一気に使い果たすほどの大打撃を受ける可能性がある」と、新型コロナウイルスによる大量運休による影響の大きさに触れた。

 一方で、「イベントリスクは必ず終息を迎え、終わりがある。ダメージを最小限に留めるよう懸命な努力で現在をしのぎ、次の反転攻勢に向け、抜かりない準備を行っていかなければならない」として、新型コロナウイルス収束後に向けた準備の必要性を述べた。

 安全問題については、2019年にパイロットの飲酒問題について、国土交通省から2度の事業改善命令を受けたことに言及。「御巣鷹山の記憶が薄れてしまったのではないか、過去の教訓を忘れたのかと、厳しい声もあった。安全を守るとは、人命を守ること。もう一度安全を守るとは何かを問い直し、決められたことを確実に行うことだけではなく、安全を守るために何をしなければならないか、常にひとり一人が自ら考え、自ら行動に移していかねばならない」と、1985年8月12日に520人が亡くなり、単独機事故では史上最大となった日本航空123便墜落事故の教訓を後世に伝えるJALの責務と、人命を守るために自ら行動することの重要性を語りかけた。

 「安全すなわち人命に関わっているのは、パイロットや整備士、客室乗務員だけではない。空港で働く人は、航空テロを防ぐ保安要員として重要な役割を担う。事業計画の作り方ひとつ、現場サポート部門の姿勢ひとつが、安全の最前線に大きな影響を及ぼし、安全を脅かすことになりかねない」と、すべての部署の仕事で起こる問題が、安全に影を落とす可能性があることを強調した。

 新型コロナウイルスの影響で、JALは中期計画の策定を中断している。赤坂社長は、「解決のカギは、新しいテクノロジーと、テクノロジーをどう活かすかを創造する『人の力』にある。まさにみなさんが、この『人の力』となる」と、新入社員に期待を寄せた。

 入社式のライブ配信は、羽田空港新整備場地区にあるM1格納庫の会議室で、午前11時30分から23分間配信。赤坂社長と在京関連会社社長13人の計14人が出席した。格納庫で新入社員らが紙飛行機を飛ばす恒例行事は、赤坂社長ら14人だけで行われた。

 また、4月1日からは客室乗務員など運航に携わる全部門の制服をリニューアルしたが、入社式のあいさつで赤坂社長は制服には言及しなかった。

関連リンク
日本航空

ANAはビデオメッセージ
ANA、入社式中止で片野坂HD社長がビデオメッセージ 安全訴える(20年4月1日)

新型コロナウイルスで新路線縮小
JAL、羽田国際線新設 シカゴとダラスなど、新型コロナで新規縮小(20年3月29日)

破綻10年や1年間に2度の事業改善命令
赤坂社長「課題は新しいことを生み出す人材」特集・JAL経営破綻から10年(20年1月19日)
JAL、意識改革と管理強化でパイロット飲酒根絶目指す 事業改善命令で報告書(19年10月23日)
JAL、赤坂社長が安全統括管理者に 飲酒問題の指揮一本化(19年10月8日)
国交省、JALに再び事業改善命令 パイロット飲酒、赤坂社長「傍観者いてはいけない」(19年10月8日)
慰霊の園で追悼式 日航機事故34年、権藤常務「人間と自動化の関係、大きな課題」(19年8月13日)
日航機事故から34年、赤坂社長「飲酒問題は痛恨の不祥事」(19年8月12日)

4月から新制服
JAL、7年ぶり新制服着用開始 CAは11代目、地上係員7代目(20年4月1日)
JAL、新制服お披露目 CAなど全部門20年4月導入(19年7月23日)

これまでの入社式
入社式中に新元号「令和」発表 JAL赤坂社長「真のプロ目指して」(19年4月1日)
JAL赤坂新社長「安全は全員で守っていくもの」18年度入社式(18年4月2日)
JAL、17年度下期入社式 植木社長「つぶれたのではなく、つぶした会社」(17年10月3日)
JAL植木社長「成長というものを誤解しないで」17年度入社式(17年4月3日)
松井秀喜氏「練習苦にならなかった」 JAL入社式で激励(16年4月1日)
植木社長「新しいことに挑戦する勇気を」JAL、15年度入社式(15年4月2日)
JALが入社式 決意託した紙飛行機がテイクオフ(14年4月2日)
JAL、3年ぶり再上場後初の入社式 植木社長「選んでくれてありがとう」(13年4月1日)

  • 共有する:
  • Facebook
  • Twitter
  • Print This Post