仙台空港を運営する仙台国際空港会社は3月26日、ターミナルのリニューアルを着工したと発表した。目標とする年間旅客数550万人に向けた空港機能強化の一環で、商業施設や飲食店の大半を、保安検査通過後の制限エリアに集約。制限エリアを主体としたサービスに変更することで、通過後から搭乗までの時間の快適性を高める。2021年度下期のグランドオープンを目指す。
—記事の概要—
・制限エリアに店舗集約
・非旅客の制限エリア立入も
・44年度に旅客数550万人へ
制限エリアに店舗集約
リニューアルするのは3階建てのターミナルビルのうち、出発階の2階と商業エリアの3階。2階の国内線と国際線の保安検査場を拡張し、国内線用のレーンを現在の4レーンから最大5レーンに、国際線は1レーンから最大4レーンに増やす。また、検査場の面積を広げることで、靴や上着の着脱、荷物の出し入れなど、利用客の準備スペースを確保する。また、スマートレーンの導入も検討する。
2階には増築棟を建設し、チェックインエリアを拡張する。
現在は保安検査通過前の一般エリアにある店舗を、リニューアルにより制限エリアに集約。利用客が制限エリアに早めに入り、搭乗までの時間確保を促す。
現在の3階はすべて一般エリアで、レストランや店舗などが入居している。リニューアルにより3階の一部も制限エリアとなり、2階の制限エリアとエスカレーターでつながる。2階の店舗は東北の名産品を扱う物販店や、東北グルメを提供する店舗などを計画し、3階にはフードコートやカフェなどを新設する。
現在のターミナルビルの面積は4万9180平方メートル。このうち改修対象となるのは約2割にあたる9848平方メートルで、1683平方メートルを増築する。現在の商業店舗の床面積は2288平方メートルで、リニューアルにより22.5%増の2804平方メートルに増える。また、国内線制限エリアの店舗面積は197平方メートルから、リニューアル後は2013平方メートルに拡張し、およそ10倍近く増える。
総事業費は50億円を予定する。工事は3月26日から2021年度下期までを計画する。2021年度上期は国内線制限エリアの一部店舗の開業や、国際線保安検査場の拡大、2階物販店の開業など、下期は国内線保安検査場の拡大と制限エリア内の店舗を全面開業する。
非旅客の制限エリア立入も
26日に仙台空港で会見した仙台国際空港会社の岩井卓也社長は、旅客動線について、現在の制限エリアでは搭乗までの時間をつぶすだけとした上で、「順番を変えて、保安検査通過後に買い物や食事を集約し、通過後エリアに“楽しいこと”を集めた」とした。チェックインや保安検査など「事務・義務的作業を先に済ませる」ことで、「すっきりした状態で買い物や食事を楽しんで」と述べた。
現在は一般エリアにある商業施設や飲食店を、保安検査通過後の制限エリアに含めることで、搭乗客以外の非旅客が利用できなくなる。また3階からエレベーターで向かうターミナルビルの屋上には展望デッキを備えており、リニューアル後は非旅客が利用できなくなる。
岩井社長は制限エリアへの非旅客の立入について、規制を緩和する意向を示した。岩井社長は「当局(国土交通省航空局)からマルをもらっている」とし、「あとは空港会社と航空会社による実務的な協議。実現したい」と述べ、非旅客の立入解禁に前向きな姿勢を見せた。
44年度に旅客数550万人へ
仙台空港は2016年7月1日に民営化。民営化後の2017年4月には1階国内線到着エリアを改修し、2018年10月には旅客搭乗施設「ピア棟」を増築した。
2018年度の総旅客数は361万人で、国内線は330万人、国際線は31万人が利用した。
仙台国際空港会社の運営最終年度となる2044年度には、年間旅客数を国内線435万人、国際線115万人の計550万人を目標としている。
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