スカイマーク(SKY/BC)は2月13日、洞駿(ほら・はやお)新社長の就任会見を都内で開いた。同日開催の取締役会で退任した市江正彦前社長の後任で、洞社長は「スカイマークのビジネスモデルはFSC(フルサービス航空会社)である全日本空輸(ANA/NH)や日本航空(JAL/JL、9201)でも、LCC(低コスト航空会社)でもない独自のもの。大きく言えば国内は2色(ANAの青とJALの赤)に分かれていく中で、小さいけれど黄色い光を光らせてがんばる唯一の存在」と表現し、大手2社と一定の距離を置く第三極の航空会社として、存在感を増していく必要性を強調した。
—記事の概要—
・ANAと一定の距離置く
・独立性維持し地方間路線と国際線拡大
ANAと一定の距離置く
洞氏は1947年11月1日生まれの72歳。1971年に運輸省(現・国交省)に入省し、航空局長や国土交通審議官を経て、2007年10月からANAの常勤顧問を務め、2008年4月に上席執行役員、2008年6月に常務取締役執行役員、2009年4月に専務取締役執行役員に就任し、2011年6月から副社長を務めた。2014年4月から2018年3月まではANAを傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)の常勤顧問、2018年7月からはスカイマークの非常勤顧問を務めてきた。会長は、筆頭株主である投資ファンド「インテグラル」の佐山展生代表が引き続き務める。
前社長の市江氏は、スカイマークの株主である日本政策投資銀行(DBJ)出身。2015年1月28日にスカイマークが経営破綻後、同年9月29日に社長就任した。同社では退任理由について、「一身上の理由」に留めている。
佐山会長は「1月の終わりごろに内々に何度か話があり、28日の臨時株主総会で新体制を固めた。2月13日に開催が決まっていた取締役会をもっての退任を希望された」と、新体制に移行するまでの流れを説明した。
「洞さんはスカイマークの状況をよく理解されており、非常勤顧問は出席が必須ではない毎週火曜の経営戦略会議にも出席されていた。積極的に発言され、ポイントを突いた意見をいただいていた。ほかのどなたかではなく、最初から洞さんに打診した」(佐山会長)と、新社長を打診した背景を語った。
一方で、洞社長は長くANAで要職を務めてきたことから、ANA色が強まるのではと懸念が社内外を問わずあった。洞社長は「ANAに10年半ほどお世話になったのは事実だが、現在雇用関係はまったくない」と明言。スカイマークについて、「航空局時代は規制緩和で発足する前の、議論の時から注目してきた。スカイマークのサービスは強い支持を得ていると確信している」と述べた。
洞社長は「バトンを引き継いだからには、さらなる飛躍を目指す。新型肺炎で悪い時期に交代したなと思っているが、そんなことを言っていられない状況だ。やる気のある若い人ばかりなので、力を借りて打てる手を打っていきたい」と抱負を述べた。
独立性維持し地方間路線と国際線拡大
スカイマークは2019年10月25日に、東京証券取引所に再上場を申請。今後の成長戦略として、洞社長は「飛行機(ボーイング737-800型機、1クラス177席)が29機あるが、路線を増やすにしても機材が足りない」と述べ、路線拡大には増機が不可欠との見方を示した。
国内線については羽田発着便の大幅増が難しいことから、神戸空港や茨城空港を活用した地方間路線の拡大を検討。2019年11月29日に就航した初の国際線である成田-サイパン線のように、国際線は競合が少ない路線の新設を視野に、収益源の拡大を目指す。
洞社長は「将来的には海外からスカイマークの航空券を予約できるようにしたい。コードシェアは否定している訳ではなく、いろいろとやりたいがシステムを抜本的に変えないといけない。(社内業務も)手作業でやっている作業も多く、機械に置き換える効率化を積極的にやらなければならない」と課題に触れた。
佐山会長は「コードシェアは否定していない。ANAの予約システムには入りませんよと言っているだけで、インターフェース経由でできると提案もしている。お互いにメリットがあれば探るべきだ」と、独立性を維持しながらのコードシェアには前向きな姿勢を示した。
1990年代の規制緩和以降に誕生した航空会社のうち、スカイマークを含む「新規航空会社」と呼ばれる中堅航空会社4社は、エア・ドゥ(ADO/HD)とソラシドエア(SNJ/6J)、スターフライヤー(SFJ/7G、9206)の3社は業績悪化後、事実上ANAの子会社として生き残る道を選んだ。この結果、3社の運賃は徐々に大手との差が縮まりつつある。
第三極としての独立性について、洞社長は「ほかのANAの出資を受けている会社は、ANAのネットワークに取り込まれている。われわれは独自路線で、ANAの色に染まることはあり得ない」と、今後も一定の距離を置きながら公共交通機関としての利便性向上を目指す。
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