全日本空輸(ANA/NH)は10月30日、成田空港で実施している自動追従型の電動車いす(パーソナルモビリティ)の実証実験を、報道関係者向けに公開した。高齢者など車いすを必要とする利用客の、国際線から国際線への乗り継ぎをサポートするもので、乗り継ぎ客が実際に利用した。
—記事の概要—
・2種類で検証
・ホーチミンから北米へ乗り継ぎ
2種類で検証
ANAは5月に、成田で電動車いすの実証実験を開始。今回使用する電動車いすは2種類で、5月から検証しているパナソニック(6752)とWHILL(横浜市)が共同開発した「WHEEL NEXT(ホイールネクスト)」のほか、今回からはDoog(ドーグ、茨城・つくば市)が開発した1人乗り搭乗型ロボット「Garoo(ガルー)」も検証している。
パナソニックのWHEEL NEXTは、重さは75キロ。先頭の1台を係員が有線リモコンで操作し、ほかの車いすが自動追従する。時速4キロで走行し、前を走る車いす後部の追従用反射板を、後ろの車いす前部に備えたセンサーで読み取って追従する。最大10台まで追従し、1回の充電で10キロ程度走行できる。
DoogのGarooは重さ40キロ。カルガモのように前を歩くものを追従するのが特徴で、最大3台同時運行できる。2機種とも最大100キロまで搭載可能で、後部には荷物を置けるスペースも設ける。
ホーチミンから北米へ乗り継ぎ
降機した乗り継ぎ客は、成田空港第1ターミナル3階に到着後車いすに乗り、4階の乗り継ぎ検査場に移動する。検査を受けた乗り継ぎ客は3階の出発階に戻り、出発便に搭乗する。
30日の実証実験で自動追従型の電動車いすを使用したのは、ホーチミンから成田に到着したNH834便(ボーイング787-8型機、登録記号JA802A)の乗り継ぎ客で、車いすを使う20人のうち5人が電動車いすを利用した。5人のうちWHEEL NEXTには3人、Garooは2人が乗り、先頭を従来の人力の車いすが進んだ。5人はターミナル内の約1キロの乗り継ぎ動線を、ANAの地上係員が手押しせずに移動した。残りの15人は従来の手押し式の車いすを利用した。乗り継ぎ客はいずれも北米へ向かった。
ANAは、アジア各国と北米間での乗り継ぎを考慮したスケジュールを設定している。乗り継ぎ時に車いす利用を求める旅客も多く、1便あたり30人程度、1日約300人が車いすを利用。中でもベトナムやフィリピン、インドからの乗り継ぎが多いという。電動車いすの利用は、高齢者をはじめとした乗り継ぎ時の移動に不安を抱えている旅客を想定する。
旅客を乗せた実証実験は10月9日に開始。11月28日まで検証する。ANAは今回の実証実験の結果を踏まえ、正式導入を今後検討する。どちらの機種を導入するかを今後検討し、2020年の東京五輪前には正式導入したい考え。
関連リンク
全日本空輸
パナソニック
WHILL
Doog
成田空港
・ANA、成田空港で自動追従型電動車いす体験会 11月まで(19年10月10日)
・ANA、成田で自動追従車いす 国際線乗継ぎで実証実験(19年5月16日)
・成田空港、米国発の乗り継ぎ保安検査省略 国内初、4月に実証実験(19年3月29日)