航空会社にとって、ビジネスクラスは出張需要獲得の中心的な存在だ。日本の航空会社の場合、約10年で新しいシートが登場している。全日本空輸(ANA/NH)は、日系では初となるドア付き個室タイプの新ビジネスクラス「THE Room」を、羽田-ロンドン線に8月から投入。10月27日から始まる冬ダイヤ期間中には、2路線目のニューヨークやフランクフルトにも就航し、導入が本格化していく。
シート配列は、1-2-1席の1列4席。進行方向の前向きシートと、反対の後ろ向きシートが互い違いに並んでいる点が真新しい。これにより、ANAのビジネスクラスでは過去最大の広さを実現しつつ、ビジネスの座席数は従来から4席減に留めた。機内エンターテインメント(IFE)も進化し、個人用モニターは24インチと従来の17インチから大型化するだけではなく、解像度が4K対応となり、高精細な映像作品も楽しめるようになった。
新しいANAの長距離国際線ビジネスクラスとなるTHE Room。私は羽田発ロンドン行きNH211便(777-300ER、JA793A)の後ろ向きシートに座った。この搭乗記では、前編で主にシートの座り心地などを、後編では4Kモニターなどに触れていく。
—記事の概要—
・ファースト並みのシート
・リビングのような空間
・反対席の視線、気にならず
*後編はこちら。
ファースト並みのシート
おおむね10年ごとに進化してきたANAのビジネスクラスの歴史を振り返ると、1986年の国際線進出、1991年の「CLUB ANA」、2002年の「New Style, CLUB ANA」、2010年の「ANA BUSINESS STAGGERED」と発展し、今回「THE Room」が登場。New Styleでライフラット、STAGGEREDでフルフラットシートと全席通路アクセスを実現した。
THE Roomはこれらを踏襲しつつ、ドア付き個室タイプに進化。自宅でくつろぐような空間をテーマに掲げた。ANAの空港ラウンジ監修も手掛ける建築家の隈研吾氏と、英Acumen(アキュメン)が機内デザインを監修した。これまではANAのコーポレートカラーであるブルーを基調としていた配色は、日本の建築を想起させるものに刷新し、落ち着いた機内になった。ANAは、新シートを装備するボーイング777-300ER型機の新造機を年内に6機導入予定で、2021年までに既存機を6機改修して計12機体制にする。
座席数は4クラス212席で、ファーストが8席、ビジネスが64席、プレミアムエコノミーが24席、エコノミーが116席となり、全クラスに電源コンセントと充電用USB端子を設置。THE Roomの特徴は、個室タイプであることや後ろ向きシートがあることに加え、機内の個人用モニターでは世界初となる4K対応モニターを採用した点だ。
画面サイズは24インチに大型化。4KモニターのコンテンツはANAのスマートフォンアプリと連動でき、手持ちのiPhoneなどIFEのリモコンとしても使える機能も備えている。
この4KモニターはHDMIケーブルでノートパソコンと接続してデュアルモニターとして使用することも可能だ。食事の時間など、機内サービスの時間帯を画面で確認できるようにし、10時間以上の長いフライトで乗客が自分の時間を過ごしやすくしている。
パーティションはファーストクラスと同じく可動式を採用。ペアで搭乗するニーズにも対応する。シートメーカーは、仏サフラン・シーツ(旧ゾディアック・シート・フランス)で、窓のシェードもファーストと同じく電動式のものを採用した。
自宅をテーマとしたTHE Roomは、シートなどハードウェア面ではファーストクラス並みと言っても過言ではない仕上がりになっている。
リビングのような空間
では、もっとも気になる座り心地はどうだろうか。シートの最大幅はこれまでの約2倍となり、ANAの歴代ビジネスクラスではもっとも広い空間を実現したという。座面と背もたれが2人掛けに近い広さになる一方、足もとは従来通り1人分の広さで、前向きと後ろ向きのシートは直角三角形を2つ組み合わせたような構造になっている。
シートをメジャーで測ったところ、長さは220センチくらい、横幅は最大93センチ、足もとは32センチ程度だった。私は身長179センチ、横幅が最大50センチ程度、ひざまわり30センチくらいの体格なので、座面や背もたれをおおむね2人分の広さで使うことができた。また、足もとも特に狭く感じることはなかったが、広めの寝袋に入っているイメージ、といったところだろうか。
ファーストクラス並みの最大シート幅を実現したTHE Roomだが、ファーストクラスが背もたれから足もとまで同じ横幅で、長方形のスペースを構成しているのと比べると、THE Roomは足もとを絞り込んでいる点が相違点だ。
しかし、座面がほぼ2人分の広さであるため、ベッドポジションにすると、あぐらを組んだり横になったりと、リビングでごろごろするような過ごし方ができる。このシートクッションは、寝具メーカーの西川と共同開発して座り心地や寝心地をよくしたものだ。
私の場合、今回のフライトも客室乗務員が機内サービスするシーンやシート周辺の写真を撮影する合間に自席でくつろいだため、長時間眠るよりはベッドポジションでごろごろする時間が長かったが、どのような姿勢でも疲れにくいシートだった。
また、最近のビジネスクラスでは3点式シートベルトが増えている。ここで気になるのが、離着陸時に使うショルダーベルトの金具だ。ほかの航空会社のビジネスクラスシートでは、金具が背中に当たり、シートポジションで
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