日本航空(JAL/JL、9201)は、福岡空港で働く地上係員(グランドスタッフ)の接客スキルを競う「空港サービスのプロフェッショナルコンテスト 福岡代表選考会」を開いた。8人の出場者の中から、空港オペレーション部第3グループの早田ひかりさんと、同第2グループの本多沙帆さんが福岡代表の栄冠を勝ち取った。2人は11月に開かれる全国大会に出場し、JALの空港サービスナンバーワンの座に挑む。
福岡の空港サービスコンテストは、2012年に第1回が開催され、今年で7回目。昨年は旅客システム刷新作業のため開かれず、2年ぶりの開催となった。福岡空港のチェックインカウンターや搭乗口の業務を担当する子会社のJALスカイ九州には、10月1日現在で国内線208人と国際線82人の合わせて290人の地上係員が乗客を出迎えている。8日に開催されたコンテストには選考や投票で選ばれた8人が参加し、基本的な能力と天候不良などイレギュラー時の対応力を評価する「アナウンス審査」、チェックインカウンターでの接客技術を競う「ロールプレイ審査」が行われた。
—記事の概要—
・遅延案内わかりやすく
・骨折ラガーマンが非常口席希望
・全国大会も自分らしく
・優勝奪還目指す
遅延案内わかりやすく
基本アナウンスは、日本語と英語の搭乗時刻案内を、1分間の持ち時間で披露した。イレギュラーアナウンスでは、3分で話せる内容をまとめた日英二カ国のアナウンスを、事前に10分間で作成した。
設定は「目的地の航路混雑のため、航空管制の指示で1時間の遅延予定」で、新しい出発時刻や到着予定時刻、搭乗口などもあわせて案内。乗客が知りたい情報をわかりやすくするだけではなく、乗客にお詫びの気持ちが伝わるかなどを評価項目として審査した。
イレギュラーアナウンスでは、アナウンス内容は出場者により大きな差が見られなかったが、話すスピードや声のトーン、お詫びの気持ちを表わした表情などに個性が見られた。
骨折ラガーマンが非常口席希望
カウンターチェックインのロールプレイでは、「ひとり一人に寄り添うサービスができるか」「次もJALを選んでもらえるような好印象を与えられるか」などを中心に、7分間で審査した。社員が扮する乗客役の1組目は出張に向かう2人組のビジネスマン、2組目は腕を骨折しているラガーマンで、3組目まで応対できた出場者はいなかったが、飛行機が大好きな女性客が登場予定だった。
1組目は伊丹行きに搭乗する設定。2人のうちの1人は英語しか話せず、日本語を話す乗客は「通路側」と座席の希望を伝えると電話をかけるためにカウンターから離れてしまい、その後は英語だけで応対する必要があった。
本多さんが希望の座席を尋ねると「どちらでもいい」と応じた乗客に対し、「富士山が見える左の窓側がおすすめ」と具体的な提案をした。早田さんは土産物のおすすめを聞かれ、白あんが入ったまんじゅう「博多通りもん」を挙げる出場者が多いなか、明太子を外国人にわかるような説明で勧めた。
2組目は、試合で腕を骨折したラガーマンの設定で、「いつも非常口座席を利用している」と、今回も非常口座席を求めるシナリオが用意された。緊急時に脱出の援助をする必要がある非常口座席を希望する乗客に、利用できない理由を明確に伝えるのが良いのか、すでに席が埋まっていることを理由に断るのが良いのか判断に迷う場面でも、出場者はさまざまな対応をみせた。
本多さんは、足元が広い座席を求めていると会話から判断し上位クラスの「クラスJ」を、早田さんは出入りがしやすい通路側を乗客に提案していた。
JALによると、非常口座席が利用できない理由を明確に伝えるかに正解はなく、最終的に乗客が満足できる対応ができるかが重要で、審査もその点を重視したという。
全国大会も自分らしく
審査発表では、福岡代表として早田さんと本多さんの名前が告げられたほか、特別賞として空港オペレーション部第4グループの合瀬(おわせ)かおりさんにJALスカイ福岡の斉藤久美子社長の名前から取った「KUMIKO de 賞」が贈られた。また、今年度から代表選考会の出場者は「サービスリーダー」に任命され、福岡空港のサービス向上につながる取り組みの中心的な役割を担っていく。
表彰式であいさつした斉藤社長は、「このスタッフにサービスを受けたい、もう一度会いたいと思ってもらえるサービスを福岡空港のみんなで進めていきたい」と述べ、一番大切なのは人によるサービスであることを出場者に語りかけた。
「接客とお客様が大好き」と話す早田さんは、落ち込んだ時やミスをした時など「なぜかいつもお褒めの言葉をいただいたりして何度もお客様に助けられた」という。普段から毎日心を込めて接客にあたってきたという早田さんは、いつも通りの表情や寄り添い方ができたとコンテストを振り返った。「福岡空港は偉大な先輩が多い空港なので、福岡の名に恥じぬよう、本選では必ず結果を出してきます。死ぬ気で努力します」と力強く宣言した。
笑顔が自らのとりえで醍醐味だと話す本多さんは、“私らしさ”に強いこだわりを持つ。コンテストでは、「緊張で暗くなってしまうかと不安もあったのですが、笑顔はキープできました」と結果を分析した。「日頃の接客を表現したい。私らしさは一切なくさないようにいこうと思います」と、全国大会に向けての意気込みを笑顔で話した。
優勝奪還目指す
11月26-27日に開かれる「第7回空港サービスのプロフェッショナルコンテスト」は、各空港から地上係員が集まるいわば全国大会で、2014年11月開催の第3回からは海外空港も参加している。
このうち、福岡の優勝は第2回(13年11月開催)と第4回(15年11月開催)の通算2回で、優勝のほかに入賞者も多数輩出している。早田さんと本多さんは、第4回以来となる福岡の優勝奪還を目指す。
今回の福岡予選では、第2回の優勝者である片山佳恵さんと、第4回の優勝者の田島由佳里さんも運営側で参加。片山さんはコンテストの進行をサポートし、田島さんは乗客役のスタッフのサポートや、ロールプレイの課題作成などに携わった。
片山さんは早田さんと、田島さんは本多さんと同じグループの先輩にあたり、早田さんと本多さんは今回のコンテストに向けてのアドバイスだけでなく、入社直後の新人時代から全国大会優勝者の指導を直接受けてきた。
早田さんと本多さんの2人について田島さんは、「それぞれ個性があって持っている良さが違い、そこを見失わずに普段から接客にあたっている」と評価する。普段からの地道な積み重ねが、今回の栄光を勝ち取ることにつながったようだ。
全国大会に出場する早田さんに、片山さんは「あなたの大好きなお客様から選ばれる接客を見せてください」と語り掛け、田島さんは「本多さんらしさを見失わず、謙虚さや心を伝える思いを本選に持っていってもらって、JALのサービスの良さを世界中に伝えられるようがんばってください」と本多さんを激励した。
*写真は11枚。
空港サービスのプロフェッショナルコンテスト福岡代表選考会出場者(グループ毎の五十音順で敬称略、括弧内は所属)
塚本 綾子(空港オペレーション部第1グループ 国内)
牛嶋 友紀子(空港オペレーション部第2グループ 国内)
滝野 春奈(空港オペレーション部第2グループ 国内)
本多 沙帆(空港オペレーション部第2グループ 国内)本選出場権獲得
早田 ひかり(空港オペレーション部第3グループ 国内)本選出場権獲得
合瀬 かおり 空港オペレーション部第4グループ 国際)特別賞受賞
瀬筒 美帆(空港オペレーション部第4グループ 国際)
室井 紗季(空港オペレーション部第4グループ 国際)
各地で代表選出
・JAL空港接客コンテスト、羽田代表選出 バッテリー付きスーツケースも確認(19年10月2日)
・JAL、伊丹空港の接客No.1に小田さん 11月に全国大会(19年9月28日)
・JAL、成田空港の接客No.1に宮里さん N-1グランプリ、2年ぶり開催(19年9月5日)
第6回
・「どうしたら伝わるか」同僚からも学ぶ 特集・JAL空港接客No.1 永見さんに聞く(18年10月28日)
・JAL、空港接客No.1に羽田・永見さんと釜山・キムさん 聴覚障がい対応も(18年3月3日)
第5回
・「人間らしさって何だろうと悩んだ」優勝は羽田とソウル(16年12月7日)
・JALの空港接客No.1、羽田・町野さんとソウル・キムさん輝く(16年11月16日)
第4回
・「心を尽くすことだけは忘れない」JAL、空港接客No.1の田島さん(15年11月14日)
・最高の接客競った13人、福岡は優勝と特別賞 第4回JAL空港サービスコンテスト(15年11月13日)
・JAL、空港接客No.1に福岡・田島さん 植木社長「彼女だけ気づくことがあった」(15年11月13日)
第3回
・「心を伝えられる人の価値は、必ずある」 JAL植木社長の「寄り添うサービス」とは?(14年11月17日)
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第2回
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・JAL、空港係員の接客コンテストで福岡・片山さん優勝(13年11月14日)
第1回
・実技シナリオの難易度維持に苦労 JALグランドスタッフコンテストの舞台裏(13年2月18日)
・JAL、グランドスタッフが能力競うコンテスト初開催(13年2月15日)