11月に開かれる日本航空(JAL/JL、9201)の「空港サービスのプロフェッショナルコンテスト」。国内外から集まった空港の地上係員(グランドスタッフ)が、チェックインカウンターなどでの接客スキルを競う大会で、現在は各地で代表選考会が進んでいる。
JALでもっとも多くの地上係員が働くのが羽田空港で、チェックインカウンターや搭乗口の業務は子会社のJALスカイが担当。9月1日現在、国内線752人と国際線653人の計1405人が乗客を出迎えている。10月1日、羽田の代表選考会「JALスカイ羽田事業所サービスプロフェッショナルコンテスト」が開かれ、国際線担当(KI)の森田菜月さんと西野恵理さん、国内線担当(KD)の石原愛さんの3人が選ばれた。
昨年は旅客システム刷新のため、JAL全体のコンテストは開かれなかったが、羽田と成田合同の大会が開催されたことから、優勝者の大迫玲子さん(羽田国際線)を加えた4人が羽田代表として11月のコンテストに出場する。
—記事の概要—
・出場5分前に課題提示
・ニーズを察した接客
・3大会連続優勝目指す羽田
出場5分前に課題提示
今回の選考会には、所属する部署内で行われた投票などで選出された国際線担当と国内線担当6人ずつ計12人が出場。選考会では、イレギュラー運航の「アナウンス審査」と、チェックインカウンターでの接客技術を審査する「ロールプレイ審査」が行われた。
今年のアナウンス審査はKIとKD共通で、出場5分前に課題を言い渡され、日本語と英語のアナウンスを3分程度で披露することが求められたが、従来と異なり時間制限は設けなかった。
搭乗開始15分前に左エンジンからオイル漏れが確認され、機材変更が発生。出発準備に1時間30分ほどかかり、変更後の出発時刻が2時間後となり、食事券を配布する想定でアナウンスすることが求められた。
出場者により、オイル漏れの表現方法や、出発準備の所要時間を「1時間半」「90分」とするかなどの違いがみられた。わかりやすく自然な語りかけであることや、乗客が安心できるよう工夫しているかや、乗客に感謝やお詫びの気持ちを伝えているかなどが評価項目になった。
ニーズを察した接客
ロールプレイ審査は持ち時間が5分で、4組の乗客役の社員がチェックインカウンターに並んで熱演した。1番目はダイヤモンド会員の日本人ビジネスマン、2番目は同行者の搭乗券を持った外国人ビジネスマン、3番目はペースメーカーをつけて初めて旅行に出掛ける女性、4番目は出発ロビーで空港への到着が遅れている夫を不安そうに待つ妻で、夫が到着すると妻が日ごろからの怒りを爆発させ、カウンター前に案内する時点では険悪な雰囲気になるシナリオだった。
1人目のビジネスマンを応対するシナリオでは、電話をしながらカウンターにならび、早く搭乗手続きを済ませてラウンジに行きたいオーラを放つ男性の気持ちを察したり、男性側からは申告されない電子タグを表示するバッテリー付きのスーツケースに対して、そのまま預かれないことを正しく説明できるかといった危険物に対する知識などが審査対象になった。
2人目の外国人はチェックイン時に同行者の航空券を持っており、本人確認を徹底しているかや、英語で正しく応対できるかなどが評価された。
3人目と4人目は、乗客の不安な気持ちを察したり、カウンター外にも目を配れるかといった点が審査された。
3大会連続優勝目指す羽田
代表に選出された森田さんと西野さん、石原さん、昨年の羽田と成田合同大会の優勝者である大迫さんには、羽田代表の証となるティアラとガウンが表彰式で贈られた。
表彰式であいさつしたJALスカイ社長を兼務するJALの屋敷和子東京空港支店長は、「システムやカウンターの刷新が進むが、重要なのは人のサービス」と述べ、航空会社のサービスの原点は人による接客であることを出場者に語りかけた。
今年4月に国内線担当から国際線に異動したという森田さんは、「英語でしっかりご案内できるかが不安でした」と、大舞台を終えて安堵(あんど)した様子だった。一方、同じ国際線担当でも帰国子女の西野さんは、森田さんとは逆の不安を抱きながら出場した。西野さんは「接客として正しい日本語が話せるかが心配で、先輩に練習していただきました」と、結果を出せたことを喜んでいた。
11月に開かれるコンテストは、各空港から地上係員が集まるいわば全国大会で、2014年11月開催の第3回からは海外空港も参加している。このうち、羽田の優勝は第1回(13年2月開催)と第5回(16年12月開催)、前回第6回(18年3月開催)の通算3回だが、直近2回は国際線担当者が優勝している。
4人の中で唯一、国内線担当で代表に選ばれた石原さんは、「国際線担当者の優勝が続いているので、国内線担当の意地を見せたいです」と、第1回以来となる羽田国内線担当者の優勝を目指すと意気込んだ。
会場には、前回大会の国内空港部門で優勝した永見愛里さん(国際線担当)の姿もあった。同僚とともに森田さんや西野さんを応援していた永見さんは、2人の代表選出を我がことのように喜んでいた。
それぞれ違った不安を抱えながらも代表の座を手にした4人は、羽田の3大会連続優勝をめざす。
*写真は17枚(写真下に出場者一覧)。
JALスカイ羽田事業所サービスプロフェッショナルコンテスト出場者(敬称略で出場順、括弧内は所属)
會田 夏実(空港オペレーション第3部国内パッセンジャーサービスグループ)
菅原 愛奈(空港オペレーション国際部第3室)
今田 早紀(空港オペレーション国際部第3室)
野藁 若世(空港オペレーション第3部国内パッセンジャーサービスグループ)
今枝 恭子(空港オペレーション国際部第1室)
小峯 里佳子(空港オペレーション国際部第1室)
芦沢 早耶香(空港オペレーション第1部国内パッセンジャーサービスグループ)
成澤 佳奈(空港オペレーション第1部国内パッセンジャーサービスグループ)
垣内 愛弥子(空港オペレーション第2部国内パッセンジャーサービスグループ)
森田 菜月(空港オペレーション国際部第2室)
石原 愛(空港オペレーション第2部国内パッセンジャーサービスグループ)
西野 恵理(空港オペレーション国際部第2室)
第7回
・先輩から受け継いだ接客でJAL空港接客No.1 第7回コンテスト優勝・羽田国際線西野さん(20年2月24日)
・JAL、空港接客No.1に羽田・西野さんとロンドン・ザヒアさん 現制服最後のコンテスト、羽田国際線が三連覇(19年11月28日)
各地で代表選出
・JAL、伊丹空港の接客No.1に小田さん 11月に全国大会(19年9月28日)
・JAL、成田空港の接客No.1に宮里さん N-1グランプリ、2年ぶり開催(19年9月5日)
第6回
・「どうしたら伝わるか」同僚からも学ぶ 特集・JAL空港接客No.1 永見さんに聞く(18年10月28日)
・JAL、空港接客No.1に羽田・永見さんと釜山・キムさん 聴覚障がい対応も(18年3月3日)
第5回
・「人間らしさって何だろうと悩んだ」優勝は羽田とソウル(16年12月7日)
・JALの空港接客No.1、羽田・町野さんとソウル・キムさん輝く(16年11月16日)
第4回
・「心を尽くすことだけは忘れない」JAL、空港接客No.1の田島さん(15年11月14日)
・最高の接客競った13人、福岡は優勝と特別賞 第4回JAL空港サービスコンテスト(15年11月13日)
・JAL、空港接客No.1に福岡・田島さん 植木社長「彼女だけ気づくことがあった」(15年11月13日)
第3回
・「心を伝えられる人の価値は、必ずある」 JAL植木社長の「寄り添うサービス」とは?(14年11月17日)
・アルメリアの銀バッチ胸に 3代目JAL空港サービスのプロたち(14年11月17日)
・JAL、空港接客No.1にソウル金浦・イさん 海外勢初出場で(14年11月14日)
第2回
・花言葉はおもてなし アルメリアの銀バッチ授かるJALの空港係員たち(13年11月14日)
・JAL、空港係員の接客コンテストで福岡・片山さん優勝(13年11月14日)
第1回
・実技シナリオの難易度維持に苦労 JALグランドスタッフコンテストの舞台裏(13年2月18日)
・JAL、グランドスタッフが能力競うコンテスト初開催(13年2月15日)