「パイロット訓練は神様のような人が横に座って、まったく同じ計器を見て、これから起こることをこの人は予言者か! と思うくらい言い当てる。そろそろ高度上がるぞ、スピード出るぞ、と言うと本当にその通りになっちゃう」。パイロット出身の植木義晴会長は、自らが訓練を受けていた時の教官とのやり取りをこう振り返る。
2010年1月19日の経営破綻を経て、2014年8月21日から米フェニックスでパイロットの自社養成を再開した日本航空(JAL/JL、9201)。当時運航本部長で、今年6月に取締役を退任した進俊則氏は、新人訓練の初期段階から機長と副操縦士の2人乗務(マルチクルー)を前提とした「MPL(マルチクルー・パイロット・ライセンス)」にかじを切った。
MPLだけではなく、エビデンス(証拠)に基づいて構築した訓練・審査制度「EBT(Evidence-based Training)」を導入するなど、破綻により自社養成が中断された苦境を逆手に取り、日常の訓練を実施しながらでは手を付けにくい改革を進めた。こうした流れに会社としてゴーサインを出したのが、当時社長を務めていた植木会長だった。
—記事の概要—
・訓練は人のせいにできない
・先輩から受け継ぐ自習道具
特集・JALパイロット自社養成再開から5年(全5回)
(1)ナパ閉鎖を経てフェニックスで訓練再開
(2)旅客機の感覚学ぶジェット機訓練
(4)グアムで737実機訓練
(5)「訓練生がやりづらい状況ではやらせたくない」
訓練は人のせいにできない
夏場の最高気温が40度を超える一方、快晴日数は年間300日以上とパイロットの訓練に適したフェニックスでは、プロペラ機とジェット機の訓練が1年半弱行われ、訓練生たちはフェニックスで訓練漬けの日々を過ごす。
「訓練は人のせいにできない。相手は機械と自然なんだから、そのせいにしても仕方がない。高度がズレたら100%俺が悪い。とはいえ、失敗した時やうまくいかなかった時の落ち込みようはない。精神的にボディーブローのように効いてくる。(教官に)何も隠せない、誰のせいにもできない。今日うまくいかなかったことは、すべて俺のせいなんだよ」と、植木会長は訓練生の心中を代弁する。だからこそ、同期で助け合うことが大切なのだという。
訓練の同期は10人で、誰かが悩んでいれば誰かが助けるといった、副操縦士として乗務する際にも求められるパイロット同士のコミュニケーションを、自然と身につけていく。
フェニックスで飛行訓練を担当する教官の本郷猛さんは、「iPadなどを駆使するので、訓練生の情報共有は早いですね。何かを一人に言えば同期全員に伝わっています」と、チームワークの良さを評価する。「同期が一番見ているものです。クセから、性格から、顔つきから。それを踏まえた
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