豪州のカンタス航空(QFA/QF)は、19時間におよぶ超長距離フライトの調査飛行を10月から3回実施する。豪州発着のニューヨークやロンドンへの直行便就航を目指す同社の「Project Sunrise」計画の一環で、ボーイング787-9型機を使用して実施する。豪州-ニューヨーク線の直行便を運航した航空会社は過去になく、実現に向けたデータを収集する。
—記事の概要—
・ニューヨーク/ロンドンからシドニーへ
・40人が19時間フライト
・シンガポール航空はA350ULRでニューアーク線
ニューヨーク/ロンドンからシドニーへ
調査フライトは10月と11月、12月に予定されている787-9のデリバリーフライトを活用。通常は米国にあるボーイングの工場で機体が引き渡された後、豪州へ乗客なしで向かうが、ニューヨークやロンドンからシドニーまで、カンタスの社員を中心に乗客役が搭乗して模擬飛行を行う。
豪州-ニューヨーク線やロンドン線を実際に開設するかは、調査飛行の結果や経済性、航空当局の承認、労使合意を踏まえた上で、今年12月までに決定する見通し。これらの路線に対し、エアバスはA350 XWBを、ボーイングは777Xをカンタスに提案している。
シアトル近郊のエバレット工場でカンタスのパイロットが787-9を受領後、調査フライトの出発地であるニューヨークやロンドンに向かい、シドニーへ約19時間飛行する。ニューヨーク発は2回、ロンドン発は1回の予定で、機内は通常運航にも対応できる状態で挑む。
40人が19時間フライト
搭乗するのはカンタスの社員が中心で、乗員を含めて最大40人。機内食やドリンク、貨物を最小限に抑えることで、787-9の航続距離を伸ばす。シドニー大学のチャールズパーキンスセンターとモナーシュ大学が協力し、搭乗者の多くはウエアラブル端末を装着して過ごし、19時間のフライトのさまざまな段階で調査に参加してデータを集める。
シドニー大の科学者と医療専門家が睡眠パターンをはじめ、機内食やドリンクの消費状況、照明、体の動き、機内エンターテインメントの使用状況などをモニターし、健康や快適性、体内時計に与える影響を評価する。
モナーシュ大の研究者は、パイロットのフライト前後と飛行中のメラトニン量レベルを記録。パイロットはEEG(脳波)測定器を装着し、脳波のパターンや覚醒度を測定する。これらのデータは、長距離路線を運航するパイロットに最適な仕事と休息のパターンを作る際などに活用する。
カンタスはProject Sunriseの構想として、豪州東海岸のシドニーやメルボルン、ブリスベンと、ニューヨークやロンドンを直行便で結ぶ計画を検討している。実現すると、シドニー-ニューヨーク間は世界初、シドニー-ロンドン間は世界で2番目の民間航空会社による商業フライトになる。
また、カンタスは1989年に、ボーイング747-400型機導入を記念し、ロンドンからシドニーまで23人を乗せてノンストップ飛行を実施。この時に使用した747-400(登録記号VH-OJA)は、航続距離を伸ばすため、機内は最小限の装備だったという。
シンガポール航空はA350ULRでニューアーク線
カンタス以外の航空会社では、シンガポール航空(SIA/SQ)がシンガポールとニューヨーク対岸のニュージャージー州ニューアークを結ぶ世界最長路線を2018年10月11日に復活。飛行時間は約19時間で、A350の超長距離型となるA350-900ULR(Ultra-Long Range)を投入している。座席数は2クラス161席で、ビジネス67席とプレミアムエコノミー94席となっており、エコノミーの設定はない。2013年まではA340-500で運航しており、約5年ぶりに再就航した。
A350-900ULRは、A350-900の航続距離を伸ばした機体で、燃料システムや翼端のウイングレットを改良し、燃料タンクを追加。最大離陸重量(MTOW)は280トンに増加し、航続距離を最長9700海里(約1万7964キロ)または20時間に伸ばした。燃料タンクの容量は、A350-900より2万4000リットル多い16万5000リットルとなっている。
777Xはメーカー標準座席数が3クラス350-375席の777-8と、400-425席の777-9の2機種で構成。航続距離は777-8が8700海里(1万6110キロ)、777-9は7600海里(1万4075キロ)を計画している。
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カンタス航空
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シンガポール航空が19時間フライト
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