経済産業省とボーイングによる「電動航空機ワークショップ」が7月25日、東京・霞が関で開幕した。26日までの日程で、航空機産業に関わりのある企業や今後参入を目指す企業など20社が参加し、ボーイングと日本企業の関係を深める。25日はボーイングから日本企業に対し、電動航空機で求められるバッテリーやモーターの性能などの説明があった。
—記事の概要—
・企業の出会いの場づくり
・電動航空機で巻き返し
企業の出会いの場づくり
日本の航空機産業は、国内生産額が1兆8000億円の規模で、2030年には3兆円を超えることが期待されている。一方、これまで日本企業はボーイング787型機の胴体や主翼といった機体の製造や、エンジンの国際共同開発に参加してきたものの、先端技術を生かせる装備品の分野は、機体製造やエンジン開発と比べて、日本企業が存在感を十分に発揮できていない。
ボーイングは、「空飛ぶクルマ」や電動化する次世代航空機向けに、軽量で高性能なバッテリーやモーターなどを求めており、日本企業との連携を模索している。経産省とボーイングは今年1月に電動化と複合材、製造自動化の3分野で技術協力の強化に合意しており、今回のワークショップもこの一環で開催が決まった。17日には、複合材の生産コストを抑える方法などを話し合う会合が都内で開かれた。
日本企業は、電気自動車でバッテリーやモーターの高性能化を実現していることから、ボーイングは航空機の電動化にこれらの経験が生かせるとみている。一方で、航空機産業は安全性の認証など、新規参入のハードルが高い。経産省は参入への第一歩として、ボーイングと日本企業が出会う場を設け、その後は企業の活動を後方から支援する取り組みを進めている。
電動航空機で巻き返し
ワークショップ初日の25日は、重工メーカーや商社、電機メーカー、研究機関などが出席。ボーイングとの個別BtoBミーティングには、GSユアサ(6674)や村田製作所(6981)、東芝(6502)、積水化学工業(4204)などが参加した。
冒頭のあいさつで、ボーイングのシニア・テクニカル・フェロー、カミア・カリミ氏は「ボーイングと経産省のビジョンは一致しており、最初の一歩を踏み出すためにここに来た。航空宇宙の未来の形作りを手伝ってくれるパートナーは、日本以上に適した国はない」と強調した。
経産省航空機武器宇宙産業課の畑田浩之課長は、「航空機の電動化は、すでに航空機産業のマーケットで活躍している企業の関係を拡大深化することと、潜在的な日本のパートナーとボーイングとのマッチングという2つの取り組みに密接に関係している」と、今後の成長が期待される電動航空機が、日本企業とボーイングの関係強化に適していると述べ、企業の出会いを後押ししていくという。
また、従来の航空機産業で日本企業が新規参入する場合は後発となり、低コストと新技術を両立した競合との戦いを強いられる。畑田課長は、「電動航空機は構造などが大きく変わるので、後発ではなく日本が参入できる」と指摘し、技術面で優位に立てる分野での参入を支援していく。
経産省は、日本企業が世界的に優位な技術を持ちながらも、これまでは欧米企業に主導権を握られてきたことに危機感を抱いている。日本企業が有利な状況でプロジェクトを主導できる開発体制を、電動航空機を契機に築いていく狙いもある。
関連リンク
経済産業省
Boeing
ボーイング・ジャパン
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