ボーイング, 官公庁, 機体, 解説・コラム — 2013年3月11日 14:35 JST

米運輸安全委、787の中間報告行うも原因特定至らず 航空会社も困惑

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 米国家運輸安全委員会(NTSB)は3月7日(現地時間、以下同)、1月7日にボストンで起きた日本航空(JAL、9201)のボーイング787型機(登録番号JA829J)のバッテリー火災の調査について、中間報告を行った。NTSBのウェブサイトには48ページの中間報告書がPDFで公開されたが、主に発生の経緯と調査状況をまとめたもので、原因特定に踏み込んだ内容には至っていない。

NTSBが787問題の中間報告を行ったものの原因特定には至らず=12年2月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 報告書によると、成田発ボストン行きJL008便がボストン・ローガン国際空港に到着後、火元となった補助動力装置(APU)始動用バッテリーの電圧が、フル充電の32ボルトから着陸約21分後に0ボルトまで減少した後に28ボルトまで上昇する現象が、フライトレコーダー(FDR)に3回記録されていたとしている。

 バッテリーの損傷状況については、8つのセルのうち、5-8番セル側は1-4番セルと比べてセルが膨張しており、5-8番セル側は激しい熱損傷を受けていた。このうち、6番セルがもっとも激しく熱損傷を受けていた。また、8番セルを除くすべてのセルでショートがみられた。セル内の圧力が上昇したときに作動するベント・ディスクについては、1-3番セルはわずかに開いており、4番セルのものは無傷、5-8番セルのものはより大きく開いていたという。

 当該機JA829Jは12年12月20日にJALへ引き渡し後、火災発生までの飛行時間は169時間、飛行サイクルは22サイクル。ボーイングは787の認証プロセスで、バッテリーから発煙する確率を飛行時間1000万時間に対して1件未満としていた。しかし、787全体の飛行時間は総計5万2000時間で、10万時間にも満たない状況下で2件の重大なバッテリートラブルが発生している。

 ボーイングでは米国連邦航空局(FAA)に対し、8つの独立したセルで構成されるバッテリー内で隣接するセル同士の熱を遮断する構造の導入や、セルが全焼した場合も機体を保護する仕組みを改善策として示している。

 日系航空会社の現場では、機体などに不具合が見つかった際に製造元が発行する改修手順を記した書類「サービスブリテン(SB)」についても、「噂ばかりで進まない」と困惑の表情を隠せない。一方、未だに初号機を受領できていない海外の航空会社からは、早期の問題収束を望む声が日ごとに強まっている。

 NTSBでは4月中旬にリチウムイオン電池と輸送の安全に関するフォーラムを開催し、4月後半には787の電池システムの設計と認定に焦点を当てた公聴会を開く。

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