全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は4月1日、羽田空港の格納庫でグループ合同入社式を開催した。2019年度はグループ35社に3463人(男性853人、女性2610人)が入社した。
式にはANAHDの片野坂真哉社長のほか、ANAHDの長峯豊之副社長、ANAの平子裕志社長、志岐隆史副社長、清水信三専務、山本ひとみ常務が出席。エアバスA321neo(登録記号JA141A)も列席し、3月31日午前0時すぎに羽田空港へ到着したボーイング787-10型機(JA900A)も、後方から“参加”した。
片野坂社長は「安全は経営の基盤であり、社会への責務」とあいさつ。新入社員とともに「安全がすべて」と3回復唱し、「深く胸に刻んでほしい」と述べた。
2015年の就任以来、片野坂社長は入社式で過去の事故について語っている。今年は1971年の雫石事故や1966年の松山沖事故、1999年に起きた羽田発札幌行きNH61便ハイジャック事件など自社の事件・事故のほか、1985年に起きた日本航空(JAL/JL、9201)の群馬・御巣鷹山事故にも触れた。
2018年に、羽田空港にあるJALの安全啓発センターを訪れた片野坂社長は、御巣鷹山に墜落したJL123便(747SR-100、JA8119)の残存機体などを見学。「墜落を阻止しようとするパイロットと管制塔のやり取りが記録してあった。事故の緊迫さが伝わってきた」と語り、「安全を願う気持ちに航空会社の違いはない」と述べた。
また、2018年から頻発している乗務員らの飲酒トラブルにも触れ、「お客さまや社会全体から厳しい批判を受けた。失われた信頼を回復し、二度と起こさない」と述べ、決意を新たにした。
新入社員には「油断や心の隙間にアルコールが入り込むことがある。学生時代に飲酒して羽目を外したことがあると思う」と語りかけ、「社会人になったら、しっかりとした酒の飲み方を身に着ける必要がある」と説いた。
1979年4月に入社した片野坂社長は、今年で40年目を迎える。「独身寮で電気ストーブに毛布をかぶせて小火を起こした。始末書も2回書いた」と新人時代を振り返り、「入社直後は、自信満々の社員よりも不安を抱えている社員の方が頼もしい。自信過剰は禁物」と激励。「先輩たちを怖がる必要はない。習ったことを復習し、技を磨いてほしい」とエールを送った。
新入社員を代表して、ANAにパイロット訓練生として入社する田中裕貴(たなか・ゆうき)さん(22)があいさつ。「片野坂社長の熱い激励を受け、身の引き締まる思い」とし、「未来のANAグループを作るのは、私たち1人ひとり。常に挑戦を続ける」と抱負を語った。
式典ではグループの有志で結成したバンド「ANA Team HND オーケストラ」が演奏を披露。ANAグループのイメージソング『Another Sky(アナザースカイ)』などを演奏し、新入社員を歓迎した。
*写真は13枚。
19年度の入社式
・入社式中に新元号「令和」発表 JAL赤坂社長「真のプロ目指して」(19年4月1日)
これまでの入社式
・片野坂社長「安全がすべて」4回繰り返す ANA、18年度入社式(18年4月1日)
・片野坂社長「初心忘れず、誇りと自覚大切に」 ANA、17年度入社式(17年4月1日
・片野坂社長「自己ベスト発揮と成長期待」 ANA、16年度入社式(16年4月1日)
・片野坂社長「チャレンジして失敗を」 ANA、15年度入社式(15年4月1日)
・ANA、入社式にジャンボも”列席” 寄せ書き「ちょっと書きにくかった」(14年4月1日)
・ANA、持ち株会社制初の入社式 受領したての777-200ERとともに(13年4月1日)
後方から“参加”した787-10初号機
・ANAの787-10初号機、羽田に到着 日本初導入、4月就航(19年3月31日)