航空自衛隊は3月24日、政府専用機の機種交代式典を千歳基地の特別航空輸送隊格納庫で開催し、政府や自治体、企業の関係者ら約150人が出席した。現行機「B-747-400」(機体番号20-1101、20-1102)は2018年度末の3月31日をもって退役予定で、4月1日からは「B-777」(80-1111、80-1112)が任務運航に就く計画を進めている。
—記事の概要—
・地球を365周
・B-747貴賓室は公開
地球を365周
政府は1987年(昭和62年)に、政府専用機の導入を決定。1991年(平成3年)9月に初号機を、同年11月に2号機を、当時の総理府が民間機として受領した。1992年4月には、千歳基地に臨時特別航空輸送隊が編成されて自衛隊機となり、同年9月に運用試験を開始した。1993年2月に初の任務運航に就き、同年6月に特別航空輸送隊に新編された。
25年以上重責を担ってきたB-747は、24日時点で100カ国を訪問し、269カ所に寄港。任務運航は349回にのぼる。天皇陛下をはじめとする皇族や、宮沢喜一氏から現在の安倍晋三首相まで15代にわたる総理大臣の外遊などを支えたほか、PKOや邦人救出といった自衛隊の国際活動でも活躍した。
特輸隊が属する航空支援集団の司令官を務める山田真史空将は、「約1460万キロを飛行し、地球を365周したことになる。隊員が任務の重責を理解し、高い使命感を持って誠実かつ確実に任務に取り組んできた証左」と、隊員たちを激励した。
山田空将は、「任務運航では企業の力添えが欠かせず、本邦と現地で力を合わせ、定時運航の確保に至ったエピソードを数多く耳にしている」と、政専機の運用を支えた企業に謝意を示した。「新機種でも官民力を合わせ、安全確実、柔軟に任務を遂行していく」(山田空将)と誓った。
24日の式典には、日本航空(JAL/JL、9201)の赤坂祐二社長やANAホールディングス(ANAHD、9202)の片野坂真哉社長、全日本空輸(ANA/NH)の平子裕志社長らも出席した。
鈴木貴子防衛大臣政務官(衆院・比例北海道、自民)は、B-747について「349回の任務運航を実施してきたが、単に数が多いだけではなく、歴史に残る任務を果たし、国の内外で高く評価されている」とし、「安全な運航と、日本人らしく時間通りに運航される任務の正確性というレガシーを引き継ぐには、高い意識とたゆまぬ努力が不可欠。安全な運航の確保という政府専用機の最大の任務に全力を尽くして欲しい」と、B-777と隊員たちに期待を寄せた。
B-747貴賓室は公開
次期政府専用機のB-777は、民間機のボーイング777-300ER型機をスイスのバーゼルにあるジェット・アビエーションが改修した機体で、初号機が2018年8月17日に、2号機は12月11日に千歳基地へ到着した。
777が後継機に選ばれたのは2014年8月12日で、整備や教育の委託先は、JALからANAHDに変わった。
機種選定の条件として、片道約13時間かかる米国東海岸へノンストップで飛べることや、貴賓室や執務室など要人輸送に必要な装備を設けられること、国内の航空会社が長期的に整備できることなどの条件を政府は挙げていた。航続距離は、B-747が約1万2600キロ、B-777が約1万4000キロでやや伸びた。
エンジンは、747-400をベースとするB-747が4基のGE製CF6だったのに対し、B-777は2基の同GE90に半減する。燃費は向上するものの、最大離陸重量はB-747の約363トンに対し、B-777は約348トンとやや減少する。
24日の式典では、B-747機長の髙野彰彦2佐が鈴木政務官に3月末での任務終了を報告。任務運航時に首相らが乗降に使う左前方1番目「L1ドア」に掲げられてきた、空自のシンボルマークをデザインした直径38センチのエンブレムが、髙野2佐から鈴木政務官に返還された。
その後、B-777機長の鈴木克洋2佐が、4月1日からの任務開始を鈴木政務官に報告。エンブレムが授与された。B-777では、左前方2番目「L2ドア」にエンブレムを掲げる。
B-747は3月31日で退役予定。8日には機体の入札が行われ、2機とも応札があった。空自によると、正式に運航終了後、売却先と契約する予定だという。貴賓室は取り外し、一つは静岡県浜松市にある空自の広報施設「エアーパーク」に展示し、もう一つも無償貸出を条件に貸出先の選定を進めている。
*写真は16枚。
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