エアライン, 企業, 空港 — 2019年3月24日 08:15 JST

ANAグループ新整備拠点、塗装も対応 特集・MROジャパン那覇格納庫

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 国内線と国際線のターミナルを結ぶ「際内連結ターミナル施設」が開業するなど、施設の増強が進む那覇空港。ANAホールディングス(ANAHD、9202)などが出資する整備会社のMROジャパンは、1月から那覇で事業を開始し、前身の全日空整備時代から使用してきた伊丹空港の格納庫から全面移転した。

MROジャパンの大型ドックでリペイント中のANAウイングスのQ400=PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

—記事の概要—
EASA認可の取得目指す
塗装作業も対応

EASA認可の取得目指す

 MROジャパンが使用する格納庫は、沖縄県が2016年10月から空港西側に建設を始め、2018年11月に完成。整備するもっとも小さな機体はターボプロップ(プロペラ)機のQ400で、LCCが数多く運航する小型機のエアバスA320型機やボーイング737型機にも対応し、大型機の777-300ERクラスが最大の機体となる。

MROジャパンの小型ドックでC整備を受けるANAの737-800=PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

 日常の整備のほか、自動車の車検にあたる「重整備」や塗装作業も行える。敷地面積は2万9396平方メートル、格納庫の延床面積は1万7784平方メートルで、大型機が1機入る「大型ドック」と小型機3機が入る「小型ドック」で同時に作業できる。

 1月7日の本格稼働を前に、MROジャパンでは2018年10月から12月の約2カ月半をかけて、以前の事業拠点である伊丹から移転を進めた。また、6種類の実機を使い、整備士が機体や設備の動作確認などを行う「フィットチェック」を、11月6日から12月4日にかけて実施した。

 MROジャパンでは現在、ANAやピーチ・アビエーション(APJ/MM)、ソラシドエア(SNJ/6J)など、ANAHDのグループ会社や関係の深い会社の整備を受託。三菱航空機のリージョナルジェット機「MRJ」の推奨整備会社にも選ばれている。また、全日本空輸(ANA/NH)やピーチからライン整備(飛行間点検)も、不定期で請け負っているという。

 一方、海外からの受注はこれまでに獲得できていない。海外のMRO事業を行う整備専門会社のほとんどは、米国のFAA(米国連邦航空局)や欧州のEASA(欧州航空安全局)による事業認可を受けているが、MROジャパンは現在のところ国土交通省航空局(JCAB)からの認可のみだ。

 海外からの受注獲得には、両者いずれかの事業認可を受けていることを条件としている航空会社や航空機リース会社が多いことから、同社は2020年度中にEASAの認可取得を目指している。

塗装作業も対応

 格納庫を訪れると、ANAグループの航空機が2機整備中で、ANAの737-800(登録記号JA56AN)が小型ドックに、隣の大型ドックにはANAウイングス(AKX/EH)のボンバルディアDHC-8-Q400型機(JA844A)がドックインしていた。

MROジャパンの大型ドックでリペイント中のANAウイングスのQ400=PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

 小型ドックでは、737-800がC整備(定時整備)を行っていた。1年から2年ごとに機内のシートや備品を全て取り外し、機体構造や装備品などの点検と不具合の修正などを行う内容で、1日あたり約70人で作業し、20日間でのべ1400人規模の作業になるという。

 塗装に必要な設備を備えた大型ドックでは、Q400がリペイント(再塗装)を行っていた。C整備とあわせた作業で、1日あたり約50人、27日間でのべ1350人が関わった。リペイントは排水設備がある大型ドックを使い、塗装剥離、洗浄、再塗装の順で進める。

 MROジャパンは伊丹時代に、ANAの数々の特別塗装機を仕上げてきた。今後はこうした塗装作業も、那覇で行われる。

 MROジャパンの従業員数は250人前後で推移し、うち沖縄県出身者は現在4割ほど。2016年以降3年間で、県内出身者を67人採用した。毎年20人から30人程度を採用し、沖縄県出身者を増員するとともに、ANAグループからの出向者の比率を下げ、コスト面での競争力を高めていくという。

 高校や大学などを卒業した若い人材を積極的に採用し、未来の整備士を育成し、アジアの整備拠点を目指す。

*写真は13枚。

MROジャパンの小型ドックでC整備を受けるANAの737-800=PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

MROジャパンの小型ドックでC整備を受けるANAの737-800=PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

MROジャパンの小型ドックでC整備を受けるANAの737-800=PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

MROジャパンの小型ドックでC整備を受けるANAの737-800=PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

MROジャパンの小型ドックでC整備を受けるANAの737-800から取り外したプレミアムクラス用シート=PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

MROジャパンの小型ドックでC整備を受けるANAの737-800から取り外したギャレーエリアのユニット=PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

MROジャパンの小型ドックでC整備を受けるANAの737-800から取り外したオーバーヘッドビン=PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

MROジャパンの小型ドックでC整備を受けるANAの737-800から取り外した窓枠などの装備品=PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

使用する機種ごとに用意されたトーイングバー=PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

1月から那覇で事業を開始したMROジャパンの格納庫=PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

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