日本航空(JAL/JL、9201)とKDDI総合研究所(埼玉県ふじみ野市)、KDDI(9433)は、次世代通信規格「5G」を用いたタッチレスの搭乗ゲートや、整備作業を遠隔支援する実証実験を、東京・天王洲のJAL本社近くにある「JALイノベーションラボ」で3月18日に公開した。
JALとKDDIグループは、2018年11月から5Gの実証実験を共同で実施。5Gは日本へ導入予定の次世代通信規格で、現行の「4G」と比べて通信速度や容量が約20倍になり、4K映像やVR(仮想現実)、センサーを多用した連携、データ遅延の低さから遠隔地とのリアルタイムなやり取りなどが可能になる。
2回目となる今回は、5G専用端末を使ったタッチレス搭乗ゲートのほか、整備部門の業務改善につながる実証実験を実施。4K映像を使って整備作業を遠隔で支援したり、8K映像を活用した整備作業の可能性などを検証した。
搭乗ゲートの実験では、搭乗券の情報が入ったスマートフォンなどをカバンの中に入れたまま通過した際、ゲートの扉が正常に開くかなどを検証。現在は搭乗口で二次元バーコードやICカードをかざす必要があるが、両手がふさがった状態でも搭乗できるようになる。
整備作業の支援では、4Kや8Kの高解像度映像と5Gを組み合わせて活用。地方空港でトラブルが発生した際、羽田空港など遠隔地のベテラン整備士が解決策を一緒に検討して修理時間の短縮につなげたり、肉眼で検査することが難しいエンジン内部を、分解せずにファイバースコープを使って8K映像で映し出し、修理が必要な部分を探すといった使い方が例として挙げられた。
遠隔支援が可能になると、高いスキルを持った整備士が、若手が困った際に素早くアドバイスすることで作業時間を短縮したり、より的確な指示を送れるようになる。18日の実験公開では、遠隔地で作業する整備士から送られてきた4K映像に対し、ベテラン整備士がパソコンの画面に指示を書き込むデモなどが行われた。
実験に参加した整備士は、「現場では“これを回して”というように説明することも多いので、直感的に指示を出せますね」と話していた。
JALのイノベーション推進本部長の西畑智博執行役員は、「ラボができたことで、社外の方とこうした実験をしやすくなりました」と、本社の会議室では実現が難しい実験ができたという。
KDDI総合研究所の中島康之所長は、「5Gは事業者用のネットワークを作れるので、整備場の中にスポット的なネットワークを構築できる」と説明し、4GやWi-Fiと比べて外部環境の影響を受けにくい無線ネットワーク作りができると語った。
西畑氏によると、実用化のロードマップは定めていないものの、実現可能なものから導入を検討していきたいという。
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