エアライン, 企業 — 2019年2月22日 15:56 JST

JAL、民間月面探査「HAKUTO-R」支援 月着陸船、20年半ば打ち上げへ

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 月面資源開発に取り組む宇宙スタートアップ企業ispace(アイスペース、東京都港区)は2月22日、同社が計画している世界初の民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」を支援するパートナー企業3社を発表した。航空関連では日本航空(JAL/JL、9201)と契約。JALはランダー(月着陸船)組み立てで技術支援する。

ランダーの模型とのフォトセッションに臨むispaceの袴田代表(左から1人目)とJALの下條貴弘コミュニケーション本部長(左から2人目)ら関係者=19年2月22日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

—記事の概要—
エンジン整備ノウハウで支援
21年半ばに月面着陸

エンジン整備ノウハウで支援

 HAKUTO-Rでは、2022年までにランダー2機を月に送り込む計画で、1機目の「ミッション1」を2020年半ば、2機目の「ミッション2」を2021年半ばに打ち上げる。JALは、成田空港にある整備子会社JALエンジニアリング(JALEC)のエンジン整備センターで、ランダー2機を組み立てる。このほかX線を用いた非破壊検査や、紫外線を使った傷の確認など、エンジン整備のノウハウを取り入れる。

 また、打ち上げを予定する米国へ、ランダーやランダーに積み込むローバー(月面探査機)、スタッフらの輸送もサポートする。

 ispaceはJALのほか、三井住友海上火災保険と日本特殊陶業(5334)の2社ともパートナー契約を締結。三井住友海上は、宇宙分野で保険商品を提供するなどのリスク管理で、日本特殊陶業は、月面で電力を安定的に供給する電池開発で、それぞれ支援する。

宇宙に対する世間の関心の高まりに期待を寄せるispaceの袴田代表=19年2月22日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

 1969年にNASA(米国航空宇宙局)のアポロ11号が月面に着陸してから、今年で50周年を迎える。プロジェクトを指揮するispaceの袴田武史代表は「月面探査に大きな盛り上がりがある。プロジェクトを開始した2010年と比較し、現在は宇宙産業盛り上がっている」と述べ、世間の関心の高まりに期待を寄せた。

21年半ばに月面着陸

 ispaceは日本初の民間月面探査チーム「HAKUTO(ハクト)」を立ち上げ、ローバー「SORATO(ソラト)」を開発。国際宇宙開発レース「Google Lunar XPRIZE(グーグル・ルナ・エクスプライズ、GLXP)」に挑戦した。

 GLXPはグーグルがスポンサーとなった、民間組織による月面無人探査を競う総額3000万ドル(約33億2300万円)の国際賞金レース。月面に純民間開発の無人探査機を着陸させ、着陸地点から500メートル以上走行し、指定された高解像度の動画や静止画データを2018年3月末までに地球に送信するミッションを課した。

 GLXPには世界から32チームが参戦し、HAKUTOは最終5チームに選出されたものの、勝者がないままレースは終了した。

 HAKUTOはインドのチームと提携し、月へ打ち上げる予定だった。今回のランダー2機は自社で開発。2020年半ばの打ち上げを予定するミッション1は、月の周回軌道を進み、月に激突(ハードランディング)する。

 2台のローバーを積み込むミッション2は、月に着陸し月面を探査。2021年半ばの打ち上げを予定する。

20年半ばの打ち上げを予定するランダーの模型=19年2月22日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

21年半ばに月面に着陸する予定のローバーの模型=19年2月22日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

関連リンク
ispace
日本航空
三井住友海上
日本特殊陶業

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