2018年12月に、乗務中の女性客室乗務員(46)から社内基準を超えるアルコールが検出された問題で、日本航空(JAL/JL、9201)は1月10日、この客室乗務員が機内での飲酒を認めたと発表した。処分については、現在検討中だという。
—記事の概要—
・ギャレーで飲酒
・過去にも機内飲酒
ギャレーで飲酒
客室乗務員が乗務していたのは、12月17日の成田発ホノルル行きJL786便(ボーイング787-9型機、3クラス239席、登録記号JA874J)。JALによると、客室乗務員はビジネスクラスを担当しており、機内食のサービス後に疲れを感じたことから、シャンパンの小ビン(約170ミリリットル)を1本あけ、プラスチック製コップに半分ほどついで飲んだという。
その後、同僚の客室乗務員3人がアルコール臭を感じ、別の1人を加えた4人が普段と様子が異なると感じたことから、機内でアルコール検査を実施。客室の責任者である先任客室乗務員が日本時間17日午後11時50分ごろ、手持ちのアルコール感知機を使って検査したところ、呼気から社内基準の1リットル当たり0.1ミリグラムに対し、0.15ミリグラムのアルコール値が2回検出された。30分ほどあけた3回目の検査でも、基準値を超えた。客室乗務員は最初にアルコールを検出された後、すべての業務から外された。
このシャンパンは、プレミアムエコノミークラスの乗客に提供しているもので、客室乗務員はビジネスとプレエコの間にある「MIDギャレー」と呼ばれるギャレー(厨房設備)から持ち出していた。JL786便では40本搭載していたが、乗客に提供していないにもかかわらず、空きビン1本がMIDギャレーのゴミ箱から見つかった。
JALによると、客室乗務員がシャンパンを飲んだのもMIDギャレーで、飲み残しはギャレーの流し台に捨てていたという。
客室乗務員は、機内サービス時はビジネスクラスの進行方向右側の列を担当。緊急脱出時にドアを扱うポジションは左前方2番目の「L2」ドアで、MIDギャレーの左側にあたる。
過去にも機内飲酒
客室乗務員は当初、帰国後に行われた社内調査で飲酒を否定。マウスウォッシュを使用したなどと説明していた。しかし、2017年11月にも乗務中に飲酒の疑いがあったことや、この客室乗務員の証言に基づく実証実験では、マウスウォッシュや食べた食事がアルコール検査の結果に影響を及ぼす可能性がなかったことなどから、JALは客室乗務員が機内で飲酒したと判断した。
その後、12月26日に客室乗務員は上司に対し、JL786便乗務中の飲酒を認める電話を入れ、28日と年明け1月3日に行われた面談で、飲酒の事実を認めた。
客室乗務員は、2017年11月17日のホノルル発成田行きJL781便(777-200ER、JA708J)の乗務中にも、同乗した別の客室乗務員から飲酒を疑われていた。当時の社内調査では飲酒を明確に否定していたが、今回の面談翌日の2019年1月4日にJL781便でも乗務中に飲酒していたと上司へ電話で説明し、1月8日に改めて面談した結果、飲酒を認めた。
再発防止策として、JALでは業務中の客室乗務員が実施する相互確認で、アルコール飲料や薬品の影響が疑われる場合、会社に報告することを義務化した。JALの客室乗務員は6000人弱で、このうち日本人は5000人強。現在は管理職1人が40人から45人の客室乗務員を管理しているが、2割から3割減らす。また、JALが社員に対して実施している飲酒に関する講習を、この客室乗務員は12月10日に受講したばかりだった。
航空各社ではパイロットや客室乗務員の飲酒問題が相次いでおり、監督する国土交通省航空局(JCAB)はJALに対し、事業改善命令を12月21日に出している。JALは1月18日までに再発防止策を報告する。
*国交省がJALに業務改善勧告。記事はこちら。
関連リンク
日本航空
運航乗務員の飲酒による法令違反に関する調査経過と再発防止策について(JAL)
国交省が業務改善勧告
・国交省、JALに業務改善勧告 客室乗務員の機内飲酒で(19年1月11日)
JAL客室乗務員の飲酒問題
・JAL、客室乗務員が機内で飲酒 昨年も疑い、本人は否定(18年12月25日)
・JAL、乗務中の客室乗務員からアルコール検出(18年12月21日)
JAL運航乗務員の飲酒問題
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