エアライン — 2019年1月8日 17:24 JST

ANAウイングス機長、飲酒で虚偽報告 規定時間後も飲み摂取上限超える

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 ANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下の全日本空輸(ANA/NH)は1月8日、乗務前にアルコール反応が出たANAウイングス(AKX/EH)の40代男性機長(ANAから出向中)が社内調査に対し、虚偽報告をしていたと発表した。機長交代で遅延便が生じた3日の時点では、社内規定時間前に飲酒を終え、飲酒量も規定内だったと報告していたが、実際には規定時間後も飲み続け、飲酒量も上限の約2倍だったことが判明した。

アルコール反応が出た機長が虚偽報告をしていたANA=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 機長は当初、社内調査に対して、酒を飲んでいたのは乗務前の飲酒禁止期間にあたる乗務開始12時間前の2日午後7時までで、飲酒量は一緒に乗務する予定だった副操縦士と缶ハイボール(350ミリリットル)2本を滞在するホテルの自室で飲み、いずれも規定内だったと説明していた。

 8日に完了した社内調査で、機長は副操縦士とともに2日午後6時すぎから大阪市内の飲食店で飲酒を始め、乗務12時間前の午後7時10分をすぎても飲み続け、午後10時ごろ店を出たことが判明。飲酒量はビールとハイボールなど計4杯で、社内規定で定められたアルコール摂取量の上限の約2倍となり、事実と異なる虚偽報告をしていたことがわかった。

 一方、同席した副操縦士は午後7時までに飲み終え、飲酒量は規定の約半分で、乗務前の呼気検査でもアルコールは検出されなかった。

 機長からアルコールが検出されたことで、3日は機長が乗務予定だった3便を含む国内線5便に最大1時間44分の遅れが生じ、乗客677人に影響が出た。

 ANAは、アルコール摂取量の上限を「2単位」と社内で定めており、1単位はアルコール20グラムにあたる。2単位はビール1リットルに相当し、8時間程度で分解できる量と定義している。同社によると機長が今回説明した飲酒量は約4.2単位に相当し、副操縦士は約1.1単位相当だったという。

 ANAでは、「このような事象を引き起こしましたことを大変重く受け止めております。安全運航を堅持するとともに、再発防止策を徹底し、グループ一丸となって信頼回復に努めてまいります」とコメントしている。

 昨年からパイロットの飲酒問題が相次いだことから、監督する国土交通省航空局(JCAB)では、問題が起きた航空会社から再発防止策を1月18日までに報告させる。

機長が副操縦士に口裏合わせ依頼

社内調査に対するANAウイングス機長の報告内容の変遷(ANAの発表を基にAviation Wire作成)

関連リンク
全日本空輸
ANAウイングス

副操縦士に口裏合わせ依頼
ANAウイングス機長、副操縦士に口裏合わせ依頼 飲酒で虚偽報告(19年1月9日)

1月3日発表に基づく記事
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