ANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下の全日本空輸(ANA/NH)は1月3日、同じく傘下で地方路線を担うANAウイングス(AKX/EH)の40代男性機長から乗務前のアルコール検査で基準値を超える反応が出たため、別の機長と交代させたことを明らかにした。この影響で、機長が乗務予定だった3日午前7時10分発予定の伊丹発宮崎行きNH501便(ボーイング737-800型機、登録記号JA89AN)が17分遅延するなど、国内線5便に最大1時間44分の遅れが生じ、乗客677人に影響が出た。ANAは機長の処分について、厳正に対処するとしている。
*社内調査で機長が虚偽報告。記事はこちら。
ANAによると、機長はANA本体からANAウイングスへ出向中。会社が行った本人からの聞き取りでは、乗務開始12時間前にあたる2日午後7時まで、同乗予定だった副操縦士と缶ハイボール(350ミリリットル)を2本飲み、午後7時以降は飲酒していないという。
飲酒量は、ANAが定めるアルコール摂取量の上限「2単位」以内だった。1単位はアルコール20グラムにあたり、2単位はビール1リットル、日本酒2合、ワイン400ミリリットルに相当し、8時間程度で分解できる量と定義している。
機長は3日午前6時ごろ、伊丹空港へ出社。バータイプのアルコール検査機を用いて乗務前検査を実施したところ、アルコール反応が出た。ANAによると、呼気1リットル当たり0.05ミリグラム以上のアルコールを検出すると反応するが、数値は表示されないという。別の検査機を使うなど複数回検査したが、アルコール反応が出続けたことから交代を決めた。一方、一緒に飲んだ副操縦士からはアルコールは検出されず、予定通り乗務させた。
この影響で、機長が乗務予定だった伊丹を午前7時10分発予定の宮崎行きNH501便(乗客40人、うち幼児1人)が17分遅延、宮崎午前8時55分発予定の中部行きNH342便が19分遅延(同169人、うち幼児5人)、中部午前10時55分発予定の那覇行きNH303便が49分遅延(同152人、うち幼児3人)となった。
また、乗員繰りにより、伊丹午前7時35分発予定の那覇行きNH761便(同161人、うち幼児3人)が1時間37分遅延、那覇午前10時40分発予定の伊丹行きNH762便(同155人、うち幼児4人)が1時間44分遅延し、機長が乗務予定だった3便と合わせて国内線5便に影響が及んだ。
ANAウイングスでは、昨年10月25日にも当時機長だった40代男性が飲酒により体調不良となり、乗務予定の国内線5便が遅延。男性は11月6日付で諭旨退職処分を受けた。また、ANAでは10月2日に当時パリ支店長兼ブリュッセル支店長だった50代男性が、ビジネスクラスでワイン6杯を飲んで酒に酔い、隣席の乗客にけがをさせて諭旨解雇処分となっている。こうした飲酒問題を受け、1日の初日の出フライトでは、ANAの平子裕志社長が安全運航を誓ったばかりだった。
ANAでは再発防止策として、パイロットの自己管理の再徹底や、現在見直しを進めているアルコール検査の強化などを急ぐとしている。監督する国土交通省は昨年12月21日に、パイロットの飲酒問題が相次いだことを受け、日本航空(JAL/JL、9201)に対し事業改善命令、ANAとANAウイングス、スカイマーク(SKY/BC)、日本エアコミューター(JAC/JC)の4社を厳重注意とした。いずれも1月18日までに、再発防止策を報告させる。
・ANAウイングス機長、飲酒で虚偽報告 規定時間後も飲み摂取上限超える(19年1月8日)
・国交省、JALに事業改善命令 ANAとスカイマークなど厳重注意 パイロット飲酒問題(18年12月22日)
・ANA、アルコール検査の記録欠損406件(18年12月22日)
・国交省、JALとANAに立入検査 パイロット飲酒で(18年11月27日)
・ANA、飲酒量を明文化 ビール1リットル、国交省に対応策(18年11月16日)
・ANAウイングス、飲酒機長を諭旨退職(18年11月9日)
・ANA、子会社パイロット飲酒で5便遅延(18年10月31日)
・ANA、パリ支店長が酒酔いで乗客けが ワイン6杯、諭旨解雇(18年10月5日)