パイロットの飲酒トラブルが起きた日本航空(JAL/JL、9201)は12月20日、アルコール感知機で検査せずに乗務した事例の調査結果を明らかにした。新型感知機を導入した2017年8月1日以降、感知機による検査を意図的に実施しなかった事例が今年11月8日までに163件あり、失念していたケースが34件あった。意図的な未実施のうち、67.5%にあたる110件は同じ男性機長(52)で、JALは業務指示違反で処分を予定している。
JALによると、当時の社内規定ではアルコール感知機を使用した検査を乗務前に実施することが明記されていなかったことから、機長は自身が飲酒していない時は必要ないと判断していたという。ほかの4件は別の機長で、同様に判断していた。また、残り49件は110件の機長と同乗した副操縦士で、同じ理由で感知機を使用せず、相互確認で済ませていた。
JALでは「規定違反ではないが、回数が多いことから悪質と判断した」として、機長を処分する方針。このほかに、感知機による検査を実施したものの、社員番号の入力忘れや間違いで記録が欠損していた事例が3941件あり、急な乗員交代など会社の指示で乗務する飛行機に直行したケースが27件、検査の記憶があいまいな事例が10件あり、記録の欠損としては計4175件にのぼるという。
検査記録の欠損は、国土交通省航空局(JCAB)の立入検査後に発覚。アルコール感知機の検査記録について、JALでは「基準値を超えた場合の確認を想定しており、すべてのデータを保存して事後に確認することは想定していなかった」と説明している。JALは11月16日に、規定にアルコール検査の実施を明記するなどの再発防止策をJCABに提出した。
また、10月にJALの男性副操縦士(懲戒解雇)が過度な飲酒により英国で身柄を拘束され、禁錮10カ月の判決が11月に現地で言い渡されたことなどを受け、JCABはJALに対し、21日に事業改善命令を出した。
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日本航空
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