国土交通省航空局(JCAB)は12月18日、経営環境が厳しい地域航空会社の今後のあり方を考える「地域航空の担い手のあり方に係る実務者協議会」の検討結果報告書を公表した。取り組みの第1弾として、2019年度内に全日本空輸(ANA/NH)と日本航空(JAL/JL、9201)の大手2社と九州の地域航空会社3社によるLLP(有限責任事業組合)の設立を目指し、経営改善効果の試算や運営ルールづくりをはじめ、共同事業を模索する。
一方、経営統合については、早期実現は困難と結論づけた。
—記事の概要—
・大手2社+九州3社でLLP設立へ
・共通事業機やクーポン発行
大手2社+九州3社でLLP設立へ
同協議会はJCABと航空会社7社により、今年4月に設置。ANAとJALのほか、ANAと同じくANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下で地方路線を担うANAウイングス(AKX/EH)、JALグループで鹿児島空港を拠点とする日本エアコミューター(JAC/JC)、JALグループで札幌の丘珠空港が拠点の北海道エアシステム(HAC、NTH/JL)、JACと協力関係にある熊本の天草エアライン(AHX/MZ)、ANAが支援する長崎のオリエンタルエアブリッジ(ORC/OC)が参画している。
報告書の検討結果では、九州で2019年度内に大手2社とJAC、天草エア、ORCの5社を構成員とするLLP設立を目指す。LLPは、出資者が出資額までしか事業上の責任を負わない有限責任制で、意思決定は原則として出資者全員の同意の下で行われる。JCABでは、小規模な地域航空会社が参加しやすく、共同事業を実施する際に公平性や透明性を確保できる制度だと説明している。
九州や北海道の地域航空会社では、パイロットの確保や収益性向上、自動車の車検に当たる飛行機の「重整備」を実施する際の予備機の確保、機材更新にかかる多額の費用負担などが課題になっている。
協議会では、機材や規定の統一による運航や整備の効率化、系列を超えたコードシェア(共同運航)による収益性向上の重要性などについて、前向きに検討する方向性が共通認識として得られたという。一方で、経営統合となると、地元自治体や既存株主との関係を整理する必要があることに加え、経営改善が具現化するまでには機材や規定統一など、準備が長期間必要になることから、早期の実現は困難との結論に達した。
このため、早期に実現できる取り組みとして、九州の地域航空会社を対象としたLLP設立による共同事業開始を目指すことになった。経営統合については、LLP設立後3年が経過した時点で検証する。また、北海道については九州での取り組みを検証し、必要に応じて同様の取り組みを検討する。
共通事業機やクーポン発行
航空各社では、すでに九州で大手2社のマイルを活用した需要喚起型クーポン「しまとびクーポン」を11月からスタート。ANAのマイルでJACの奄美群島路線、JALのマイルでORCの長崎離島路線の航空券購入に利用できる。自治体も参画しており、長崎県はANAマイルの、鹿児島県はJALマイルの交換を自治体として支援している。
各社ごとの取り組みでは、JACと天草エアが2015年度から協力体制を構築。JACのパイロットと整備士が天草エアへ出向し、天草のパイロットが仏ATRのターボプロップ機ATR42-600型機(1クラス48席)への機種移行訓練を実施するなど、関係を強化した。天草エアは機材が機のATR42で運航しており、今年5月にはJACが両社の共通事業機としたATR42を期間限定でリースした。
すでにコードシェアを実施しているORCとANAは、2017年10月から機材リースで協力。ORCの機材はボンバルディアDHC-8-Q200型機(1クラス39席)だが、ANA塗装のDHC-8-Q400(同74席)をANAHDからリース導入し、ORCのパイロットと客室乗務員で運航している。
関連リンク
国土交通省
全日本空輸
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日本エアコミューター
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