エアバスは11月1日、同社製航空機や市場動向の報道関係者向け説明会を都内で開いた。日本の国内線と国際線で運航される旅客機数は、国内と海外の航空会社合わせて約890機の現状に対し、2037年までに1600機上に拡大するとの予測を発表した。また、羽田空港や成田空港の発着枠がほぼ飽和状態にあることから、国が目標に掲げる2020年までに年間訪日客数4000万人の達成には、現状では500万人不足するとの見方を示した
訪日4000万人「500万人足りない」
日本を含むアジア太平洋地域で、2018年から2037年までの20年間に必要となる旅客機は1万5900機とエアバスは予測。内訳は100席から230席の機体が全体の79%にあたる1万2490機、300席までの機体が15%にあたる2310機、350席までの機体が4%にあたる620機、350席以上が3%にあたる480機としている。
日本市場については、2037年までの20年間で旅客需要が年平均2.9%で成長すると予測。このうち、国内線は年1.4%となるものの、国際線は年4.2%の成長を見込む。旺盛な訪日需要が見込まれることから、日本市場で必要とされる旅客機数は、国内・海外の航空会社の合計で現在は890機以上であるのに対し、1600機以上に拡大するとの見方を示した。
アジア・北米担当マーケティング バイス・プレジデントのヨースト・ヴァン・デル・ハイデン氏は1日都内で、「日本では単通路機(ナローボディー機)の成長が顕著だ。2008年から2018年に増加した単通路機の機体数は世界平均が59%だが、日本は67%だ」と説明。LCCの台頭により、単通路機の伸び率が世界平均を上回った。
一方、双通路機(ワイドボディー機)については、「特にアジア・太平洋地域の航空会
社で人気が高い。同地域で運航中のワイドボディー機の43%が、今後引き渡される機体では57%がエアバス機だ」(ハイデン氏)と、アジア太平洋地域でのシェアの高さを強調した。
また、政府が掲げる2020年までの訪日客数4000万人達成については、「羽田と成田の現在の発着枠をすべて活用し、発着枠拡大が計画通り行われても、500万人分不足する」とハイデン氏は指摘。「A380であれば、発着枠を増やすことなく輸送量を拡大できる」と語った。
メーカー標準座席数を見ると、総2階建てのA380は4クラス575席、最大853席・これに対し、同社最大の双発機でボーイング777-300ER型機の後継機市場を狙うA350-1000は、3クラス366席で最大440席となる。
ハイデン氏は「羽田は発着枠が満杯で、成田も混雑時間帯に航空会社の就航リクエストを超えている。ロンドンのヒースロー空港は発着枠が満杯だが、10%がA380の運航便だ」と述べ、羽田にA380を就航可能にするなどの対策が、訪日客数4000万人を確実に達成する上で、効果があるとの見方を示した。
A321LR「日本からインド就航できる」
ハイデン氏は、エアバス機の現状についても説明。小型機A321neoは、「受注が好調で、2017年度のエアバス単通路機受注の63%を占める。競合の737 MAX 9と10に比べ、77%のマーケットシェアだ」と、優位性を強調した。
A321neoの航続距離延長型A321LRについては、「7月にピーチ・アビエーション(APJ/MM)がアジアで初めて発注した。日本からは東南アジアの大半の都市やインドへ就航できる」と、航続距離の長さをアピールした。
一方、A321neoを含むA320neoファミリーは、エンジンメーカーの供給遅延に伴い、機材引き渡しに影響がおよんでいる。ハイデン氏は、「この4カ月は計画通り納入できている」と述べた。
また、A330neoファミリーのうち、現行のA330-300の後継となるA330-900でも、エンジンの技術的な問題が起きている。ハイデン氏は「エンジンメーカーや航空会社と協議中だ」と説明した。
座席数に開きがあるA350-1000とA380の間を埋める機材の可能性について、ハイデン氏は「A350とA380は補完関係にある。例えば高需要路線で1日2便(往復)ある場合は、乗客数が多い便にA380、少ない便にA350を使えば良い」として、2機種の組み合わせを紹介するにとどめた。
7月に事業会社を買収し、A220に改称した旧ボンバルディアCシリーズについては、「100-150席クラスで、日本に適している」とする一方、三菱航空機が開発中のリージョナルジェット機MRJ(標準座席数88席)は、「座席数や航続距離が異なるクラス」と、直接競合しないとした。
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