カナダのボンバルディアは現地時間10月19日、三菱航空機を米ワシントン州シアトルの連邦地裁に提訴した。地元紙シアトル・タイムズなどによると、三菱航空機がボンバルディアの小型旅客機Cシリーズ(現エアバスA220)の開発に携わった社員らを採用し、リージョナルジェット機「MRJ」の開発に機密情報などを不正流用したと主張している。
*三菱重工と三菱航空機が反論を発表。記事はこちら。
三菱航空機は三菱重工業(7011)の100%子会社で、ボンバルディアでCシリーズの開発に携わった社員らが在籍。三菱航空機の米国におけるMRJの開発拠点はシアトルにあり、飛行試験は同州モーゼスレイクで行っている。
報道によると、機体の安全性を航空当局が証明する「型式証明」の取得に向け、ボンバルディアの機密情報を三菱航空機が活用したとしている。三菱航空機と協力会社の米エアロテックがCシリーズの開発に携わった元社員らを起用し、TCCA(カナダ航空局)とFAA(米国連邦航空局)の型式証明に関する機密文書とデータを、不正流用したと主張していると報じている。
MRJは、メーカー標準座席数が88席の「MRJ90」と、76席の「MRJ70」の2機種で構成。三菱航空機は、2020年半ばまでにMRJの納入開始を計画しており、現在は国土交通省航空局(JCAB)の型式証明取得に向け、飛行試験を行っている。
ボンバルディアは、エアバスにCシリーズの製造や販売を担う事業会社「CSALP(C Series Aircraft Limited Partnership)」を売却。今年7月10日に、エアバスはCシリーズをA220に改称し、CS100(108-135席)をA220-100、CS300(130-160席)をA220-300に改めた。
三菱航空機は10月22日、Aviation Wireの取材に対し、「訴状の内容を確認しているが、報道されている内容は根拠がない」とコメントした。
MRJなどリージョナル機を巡っては、再編が進んでいる。CSALPを傘下に収めたエアバスに対し、ボーイングはエンブラエルと、航空宇宙分野での戦略的提携を確立するための覚書(MoU)を7月に締結。エンブラエルの民間機事業を母体とする合弁会社の設立も含まれており、2019年末までに発足させる。エンブラエルが開発した「E2シリーズ」はMRJ最大のライバルで、最初に実用化した機体「E190-E2」は4月から納入を始め、10月15日には羽田空港へ飛行試験機(登録番号PR-ZGQ)が初飛来した。
関連リンク
Commercial Aircraft(Bombardier)
三菱航空機
三菱重工業
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