日本航空(JAL/JL、9201)は10月17日、空港で貨物・手荷物の搬送や航空機への搭降載を担当するグランドハンドリングスタッフ(グラハン)の技量を競う「グランドハンドリングコンテスト」を羽田で開いた。決勝には6空港が出場し、福岡空港の立石洋章さん(入社16年目)と小川和恭さん(9年目)のペアが優勝した。福岡の優勝は第1回以来で、2度目となった。
JALの第6回グラハンコンテストで優勝した福岡空港の立石さん(左)と小川さん=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
—記事の概要—
・出発10分前想定
・福岡が優勝
出発10分前想定
コンテストは今回で6回目となり、JALグループ便を運航する国内32空港から選抜された63人に加え、海外からフィリピンのマニラ空港とミャンマーのマンダレー空港の2空港3人のスタッフが参加。荷物をロープで固定する「タイダウン」、ばら積み(バルク)貨物室を想定した貨物コンテナへの搭載、コンテナを運ぶ「ドーリー」が4台連結されたトーイング・トラクター(TT車)の運転技術などによる予選を勝ち抜いた、6空港が決勝に進出した。
出発10分前を想定したJALの第6回グラハンコンテスト決勝=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
決勝に進出したのは、福岡と成田、羽田、中部、女満別、鹿児島の各空港。このうち、鹿児島は敗者復活戦枠での参加で、機体の重量制限などグラハンの知識を競う○×形式のクイズ大会で勝ち残った。
会場となった羽田の格納庫には、ボーイング737-800型機の国内線仕様機(登録番号JA348J)が用意され、決勝進出6空港の出場者は2人1組で挑んだ。出発予定時刻の10分前を想定したシナリオで、コンテナドーリー2台が連結されたTT車を機体に横付けし、後部貨物室にベルトローダー車を使って貨物や乗客の手荷物を積み込んだ。
コンテナは1台目に貨物、2台目に手荷物を搭載。ベルトローダー車脇に立つロードマスター(搭載監督者)から搭載指示書を受け取り、搭載作業を始めた。
出場者に対する審査は、搭載に問題があるとみられる貨物を発見し、監督者に報告するかや、封筒や筒状の貨物といったコンテナ内で発見しにくいものを見つけられるか、乗客が搭乗を取りやめたことで、機体に積まなくなった手荷物を落ち着いて発見できるかなどが、丁寧な積み込みに加えて評価された。
福岡が優勝
審査の結果、福岡が優勝し、3連覇がかかっていた成田は2位、羽田が3位となった。このほかに審査員特別賞が伊丹と広島、マニラの3空港に贈られた。
JALの第6回グラハンコンテスト決勝でコンビを組む小川さんとやり取りする立石さん=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
表彰式で優勝した喜びを話す福岡空港の小川さん(右)=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
優勝した立石さんと小川さんは、立石さんがコンテナから荷物を降ろし、小川さんが機内で積み込む役割分担で挑んだ。常に声を出して確認し合い、搭載後もコンテナ内やベルトローダー車の下など、荷物類が置き忘れられる可能性がある場所をくまなく確認して、競技を終えた。
表彰式で優勝を告げられると、2年前にも出場した小川さんは思わず涙ぐんだ。前回は帰りの飛行機で悔し泣きをしたという小川さんは「当時ペアを組んだパートナーの方に迷惑を掛けてしまい、ずっと後悔していましたが、それが原動力になりました」と喜んだ。
ひとつ一つの作業を的確にこなし、疑問に感じた荷物類に対しては、素早く責任者と対応を協議していた立石さんは、「“見せる安全”を心掛けました」と話す。そして、2人が共通して重視していたのは、コミュニケーションだった。小さいころからグラハンの仕事に興味を持ち、この道に進んだという小川さんは「相手が先輩で言いにくくても、最大限の安全確保が大切なので、コミュニケーションが一番大事です」と話した。
第6回グラハンコンテストの講評を述べるJALの阿部空港本部長=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
コミュニケーションをしっかり取ることで、「チームで仕事をしているので、お互いにミスをカバーし合えるようにするのが大事」という立石さんは、「コンテストは練習では想定外の課題が出されるので、あらゆる状況に対応できるよう、福岡に帰ったら他空港から学んだことも伝えたいです」と語った。
空港本部長の阿部孝博執行役員は、「グラハンコンテストは今回出場したマニラ空港でも始めてくれている。安全を確認しないと飛行機を出さない姿勢に誇りを感じている」と述べ、コンテストで得た各空港のスキルを業務に取り入れて欲しいと語った。
第6回グラハンコンテスト入賞者(敬称略)
優勝
福岡空港
立石洋章(16年目)
小川和恭さん(9年目)
準優勝
窪田雄人(5年目)
湯田成俊(5年目)
第3位
村石尚弥(9年目)
星川良太(5年目)
競技に使用した737の前で記念撮影するJALのグラハンコンテストの出場者=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
敗者復活戦で○×クイズ最後の問題に参加する出場者=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
決勝の出場順を決めるくじ引きをする阿部空港本部長=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALの第6回グラハンコンテスト決勝でTT車を運転し競技をスタートさせる出場者=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALの第6回グラハンコンテスト決勝で機体への積み込み後にコンテナ下を確認する出場者=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALの第6回グラハンコンテスト決勝でベルトローダー車を使って荷物を積み込む出場者=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALの第6回グラハンコンテスト決勝でTT車を運転し競技をスタートさせる福岡空港チーム=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALの第6回グラハンコンテスト決勝でTT車を誘導する福岡空港チーム=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALの第6回グラハンコンテスト決勝で貨物を積み込む福岡空港の立石さん=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALの第6回グラハンコンテスト決勝で貨物を点検して積み込む福岡空港の立石さん=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALの第6回グラハンコンテスト決勝で貨物を貨物室で受け取る福岡空港の小川さん=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALの第6回グラハンコンテスト決勝で貨物を積み込む福岡空港の立石さん=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALの第6回グラハンコンテスト決勝で問題のある貨物をロードマスターに報告した福岡空港の立石さん(右)=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALの第6回グラハンコンテスト決勝で貨物を貨物室で受け取る福岡空港の小川さん=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALの第6回グラハンコンテスト決勝で手荷物を積み込む福岡空港の立石さん=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALの第6回グラハンコンテスト決勝で搭載作業を終えコンテナを点検する立石さん=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALの第6回グラハンコンテスト決勝で協議を終え指さし点検する立石さん(左)と小川さん=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALの第6回グラハンコンテストで第3位となった羽田空港チーム=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALの第6回グラハンコンテストで準優勝した成田空港チーム=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALの第6回グラハンコンテストで優勝しメダルを贈られる福岡空港の立石さん(左)と小川さん=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
表彰式で優勝した喜びを話す福岡空港の立石さん(左)=18年10月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
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