国土交通省は10月2日、有識者会議「全国主要空港における大規模自然災害対策に関する検討委員会」(委員長:家田仁・政策研究大学院大学教授)の初会合を、関西空港で開いた。委員会の開催に合わせ、台風21号による被害を受けた関空の施設を委員が視察した。
8人の有識者で構成する同委員会では、関空のほか羽田や成田、伊丹、新千歳、福岡、那覇など、旅客数や貨物扱い量が多い全国の主要空港を対象に、大規模災害の対策を検討。災害が起きても、空港の被害を最小化する「減災」につながる対策などを検討していく。
家田委員長は、4つの検討課題として「想定する災害に対してハードウェアやソフトウェア、運用が適切かの検証や、設計値を越える事態が起きた際の減災思想、利用者への電力提供、関空のように民間企業が運営する空港での官と民の役割分担」を挙げた。
災害発生時に、多くの人がスマートフォンを使って情報収集していることから、「従来は水や毛布の配布が最小限だったが、それでいいのかも検討が必要だ」と述べた。
台風21号の影響で、関空は地下にあった変電・分電施設が高潮による水害に遭い、9月4日は孤立した8000人の人たちが、電気がほぼ使えない状況で一夜を明かすことになった。今回出席した家田委員長ら6人の委員は、ターミナルの地下施設や、現在も完全復旧の見通しが立たない貨物地区、滑走路の排水ポンプなどを視察した。
視察と初会合を終えた家田委員長は、「委員会の意見を集約する段階ではないので、個人的な意見だが、減災対策に注力すべき。関空の事例で見れば、例え浸水しても電気が使えるようにする対策は、著しく難しいことではない。タンカーが流されて衝突した問題も、安全規制を強化すれば連絡橋は守れたはず」と述べた。
また、関空のように国が空港を所有したまま、運営権を民間へ売却するコンセッション方式による空港民営化ついては、「きちんと検討すべき。人口減少で官庁や自治体ができることは限られているが、(官庁や自治体など)パブリックサイドが一定のリーディングファンクションを果たすのが不可欠。南海トラフ地震や首都直下地震などに対して、今回の事例を基に考えたほうがいい」(家田委員長)と語った。
国交省によると、今後の委員会は東京で開くという。
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