国土交通省は9月7日、「関西国際空港の早期復旧等に向けた対策プラン」を航空局(JCAB)を中心にまとめた。関空は2016年4月に民営化され、オリックス(8591)と仏空港運営会社ヴァンシ・エアポートが40%ずつ出資する関西エアポート(KAP)が運営しているが、早期の暫定再開案を打ち出せないKAP経営陣に対し、官邸サイドが“見切り”をつけた形だ。
*14日1タミ再開が正式発表。記事はこちら。
*T1運用再開当日の記事はこちら。
—記事の概要—
・鉄道は4週間後再開へ
・「できない理由しか挙がってこない」
・官邸激怒→7日の国内線再開
鉄道は4週間後再開へ
国の対策プランでは、7日のB滑走路運用再開によるピーチ・アビエーション(APJ/MM)の国内線一部再開、8日の国際線一部再開などに続き、9月中旬を目途に冠水したA滑走路の暫定運用開始を目指す。
また、復旧までの代替空港として、伊丹や神戸への国際線と国内線の振り替えを検討している。
タンカー衝突で損傷を受けた連絡橋については、道路は7日午前5時10分から対面通行に切り替え、鉄道もおおむね4週間で運行再開を目指す。
「できない理由しか挙がってこない」
関空の2017年度の国際線旅客数は、前年度比14%増の2190万1061人と、6年連続で過去最高を更新し、開港以来の年度合計として初めて2000万人を突破した。訪日客も、21%増の1500万6132人で6年連続で前年度を上回り、4年連続で日本人客を上回った。
首都圏よりアジアに近く、国内外のLCCが数多く就航する関空は、2020年に年間訪日客数4000万人を掲げる政府にとって、戦略的に重要な空港だ。しかしながら、4日の台風21号による被害以降も、KAPから航空各社に十分な説明がなされないなど、復旧対応は十分と言えない状況が続いている。
また、一日も早い暫定再開を求める政府に対し、KAPからは「できない理由しか挙がってこない」(関係者)との不満が渦巻いていた。
官邸激怒→7日の国内線再開
運営権売却による空港民営化は、国による発想を超えた、より多くの航空会社による新路線開設や増便、商業施設の充実、顧客満足度の向上などが狙いだ。
しかし、公共財である空港を預かる以上、災害に対して即時性のある対応力なども、運営者は強く求められる。
国内線の暫定運用が始まった7日、ヴァンシ出身のエマヌエル・ムノント副社長は「南側は状態が良い」として、第1ターミナルの南側を1週間以内に再開させると語った。
しかし、航空機の運航再開にこぎつけても、大きな被害を被った連絡橋をどう運用するかなど、利用者のストレスを最小限に抑える施策も打ち出さない限り、しわ寄せが来るのは直接応対する航空会社の社員や、KAPの現場スタッフたちだ。
オリックス出身の山谷佳之社長は、「大量輸送できる鉄道の早期回復が必要」との認識を示すものの、鉄道再開は早くても4週間後がめど。1タミ南側を再開させた際に、利用者を長時間待たせずに空港外へ送り届ける手段には、言及しなかった。
安倍晋三首相は6日午前、政府が開いた非常災害対策本部の会合で、関空の国内線7日再開に言及した。「5日深夜、ついに官邸が激怒し、指示が下りてきた」と、別の関係者は明かす。
山谷社長に、主導権はどちらが握っているのかを記者(私)が尋ねると、「私とエマヌエルが最高責任者だ」と応じた。確かに出資比率が対等であればそうだが、仮に意見が割れた際、どちらが収集するかが明確ではない現状は、スピーディーな復旧対応の足かせになりかねない。
KAP経営陣による今回の対応から、国は空港民営化を進めるにあたり、商業的な運用能力だけではなく、従来以上に非常時の対応力も、運営者に求めていく必要が増したと言えるだろう。
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