シンガポール航空(SIA/SQ)は7月28日、ボーイング787-10型機をシンガポール-中部(セントレア)線に就航させた。国内では関西と成田に続き3路線目となった。中部空港で開かれた就航式典には、787の主翼や胴体を製造する重工メーカーの社員も招かれた。
中部空港に就航したシンガポール航空の787-10のエコノミークラスを体感するSUBARUと川崎重工、三菱重工の社員ら=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
–記事の概要—
・座席数18%増
・重工社員に謝意
座席数18%増
787-10は、3機種ある787のうち長胴型787-9の胴体を5.5メートル延長したもので、全長は68メートルとなり、大型機777-200より4.3メートル長い。座席数は2クラス337席(ビジネス36席、エコノミー301席)で、観光需要が多い中距離路線を中心に投入している。
中部空港の消防車による放水アーチをくぐるシンガポール航空の787-10初便=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
シンガポール-中部線はこれまで、エアバスA330-300型機(2クラス285席:ビジネス30席、エコノミー255席)で運航していたが、787-10の投入で1便あたりの提供座席数が52席(18%)増えた。
運航スケジュールは、中部行きSQ672便はシンガポールを午前1時20分に出発し、午前9時5分着。シンガポール行きSQ671便は、午前10時30分に中部を出発し、午後4時20分に到着する。
中部空港に就航したシンガポール航空の787-10のビジネスクラス=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
シートは、日本路線などアジア域内路線用に新開発したもの。ビジネスクラスは、1-2-1席のスタッガード配列のステリア・エアロスペース製フルフラットシートを採用。既存の2-2-2席配列と異なり、全席が通路に面している。
長さは193センチ(76インチ)、幅は66センチ(26インチ)で、個人用画面は18インチのタッチパネルモニター。中央席は可動式のパーティションがあり、カップルや友人であれば開放、隣席が他人であれば閉めることができる。収納スペース内に電源コンセントや充電用USB端子を完備し、脇には鏡を設けた。
中部空港に就航したシンガポール航空の787-10の前方エコノミークラス=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
エコノミークラスはレカロ製。3-3-3席配列で、6段階に調整可能なヘッドレストを備える。個人用画面は11.6インチのタッチパネルモニターを採用した。従来あったフットレストは利用率が低いことからなくし、手荷物をしまいやすくするとともに、足もとを広くした。
機内エンターテインメント(IFE)「クリスワールド」も新世代のものを採用。米パナソニック・アビオニクス製「eX3」を搭載する。コンテンツは日本語に対応しており、シンガポール航空のマイレージサービス「クリスフライヤー」の会員であれば、往路で途中まで観た映画を、復路で続きを観ることもできる。
シンガポール航空は、787-10を運航する世界初の航空会社で、最多となる49機を確定発注。エンジンは、ロールス・ロイス製トレント1000の改良型「トレント1000 TEN」を採用した。
重工社員に謝意
787は主要部品の約35%を日本企業が製造。特に中部地方には、関連企業が多く集積している。28日の就航記念式典には、三菱重工業(7011)と川崎重工業(7012)、SUBARU(7270)の社員が招かれ、787-10を見学したほか、模型やサプライズで航空券がプレゼントされた。
中部空港に就航したシンガポール航空の787-10のビジネスクラスで三菱重工と川崎重工、SUBARUの社員と話す名古屋市の河村市長=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
シンガポール航空のウィルソン氏=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
シンガポール航空のセールス・マーケティング担当シニアバイスプレジデントのキャンベル・ウィルソン氏は、「機体の35%を製造している日本への感謝の気持ち」と述べた。来賓として出席し、ビジネスクラスとエコノミークラスのシートを体感した名古屋市の河村たかし市長は、「こうした気持ちの表し方はなかなかなく、ありがたいものだ」と語った。
ウィルソン氏は、シンガポール航空系LCCのスクート(TGW/TR)が就航した際に、CEOを務めていた。ウィルソン氏に中部の市場動向を尋ねると、「現時点ではビジネス需要が多いため、シンガポール航空が適しているが、観光需要がもう少し伸びればスクートと両方でカバーすることもあり得る」と述べた。
また、スクートは787-8(2クラス329席または335席)と787-9(2クラス375席)を運航しているが、787-10をスクートでも投入する可能性について、「400席以上になってしまうので、そこまで必要かという議論になる。シンガポール航空で運航する方が適している」(ウィルソン氏)と語った。
28日のシンガポール発初便となったSQ672便(787-10、登録番号9V-SCB)は、中部空港の消防車による歓迎の放水アーチをくぐり抜けて到着。出発時は、展望デッキから多くの人が見送っていた。
シンガポール航空は、A330-300で運航している福岡線も年内に787-10へ置き換える。
運航スケジュール
SQ672 シンガポール(01:20)→中部(09:05)
SQ671 中部(10:30)→シンガポール(16:20)
*写真は32枚。
中部空港に進入するシンガポール航空の787-10初便=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
中部空港に着陸するシンガポール航空の787-10初便=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
中部空港に着陸するシンガポール航空の787-10初便=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
中部空港の駐機場へ向かうシンガポール航空の787-10初便=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
中部空港の消防車による放水アーチをくぐるシンガポール航空の787-10初便=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
中部空港に到着するシンガポール航空の787-10初便=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
中部空港に到着したシンガポール航空の787-10初便=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
シンガポール航空の787-10中部就航を祝う鏡開きをする名古屋市の河村市長ら関係者=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
シンガポール航空の787-10中部就航を記念し招待された三菱重工と川崎重工、SUBARUの社員ら=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
中部空港に就航したシンガポール航空の787-10のビジネスクラス=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
中部空港に就航したシンガポール航空の787-10の前方エコノミークラス=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
中部空港に就航したシンガポール航空の787-10の後方エコノミークラス=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
中部空港に就航したシンガポール航空の787-10のビジネスクラスを体感する名古屋市の河村市長=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
中部空港に就航したシンガポール航空の787-10のビジネスクラスを体感する三菱重工と川崎重工、SUBARUの社員ら=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
中部空港に就航したシンガポール航空の787-10のビジネスクラスを体感する三菱重工の社員=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
中部空港に就航したシンガポール航空の787-10のエコノミークラスを体感する名古屋市の河村市長=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
中部空港で787-10初便の乗客に記念品を手渡すシンガポール航空の客室乗務員ら=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
中部空港を出発するシンガポール航空の787-10初便を見送る重工社員と高校生ら=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
787-10のコックピットから手を振るシンガポール航空のパイロット=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
中部空港を出発するシンガポール航空の787-10初便を見送る重工社員ら=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
中部空港を出発するシンガポール航空の787-10初便=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
中部空港を出発するシンガポール航空の787-10初便=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
中部空港を離陸するシンガポール航空の787-10初便=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
中部空港を離陸するシンガポール航空の787-10初便=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
中部空港を離陸するシンガポール航空の787-10初便=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
中部空港を離陸しシンガポールへ向かうシンガポール航空の787-10初便=18年7月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
関連リンク
シンガポール航空
関空就航時の写真特集
・777-200より長い最新787(18年5月4日)
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・シンガポール航空の787-10、関空就航 世界初の定期便、18%供給増(18年5月3日)
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・シンガポール航空、関空で787-10日本初公開 就航50周年、5月に世界初定期便(18年4月4日)
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・シンガポール航空、787-10公開 新シート採用、5月に関空就航(18年3月28日)
・シンガポール航空の787-10、関空へ世界初の着陸 5月就航(18年3月28日)