国土交通省航空局(JCAB)は7月20日、日本貨物航空(NCA/KZ)に対し事業改善命令を通達した。機体の整備不良や整備記録の改ざんによるもので、8月17日までの報告を求めている。
—記事の概要—
・不適切な整備8件
・連続耐空証明はく奪
・7月5日運航再開
不適切な整備8件
JCABによると、NCAや委託先による不適切な整備が8件発覚。2017年1月21日には、シカゴ発KZ192便(ボーイング747-8F型機、登録番号JA11KZ)に鳥が衝突し、シカゴに引き返して点検したところ、機首上面に損傷が見つかった。構造修理マニュアル(SRM)によると、当該損傷は運航を停止し、整備が必要なものであったが、NCAは許容範囲と判断し、運航を継続した。
このトラブルは大修理を要するものだったものの、航空日誌には「小修理」と記載した。運航中に発生した大修理を要する損傷だったため、航空事故に該当。国土交通大臣への速やかな報告が必要だったものの、報告したのは今年5月17日だった。
2017年4月12日には、関西空港行きKZ283便(747-400F、JA08KZ)が運航中に被雷したものの、関空着後の整備でSRMに基づき、整備を持ち越し(キャリーオーバー)、成田で整備することとした。成田で整備を引き継いだNCAの整備士は、整備記録が不明確だったことから、具体的な内容が読み取れず、適切に整備しないまま運航を継続した。
今年4月3日には、成田で747-8F(JA14KZ)の整備をしていたNCAの整備士が、フラップを駆動する装置への潤滑油の補給量が、点検・交換が必要な値だったことを確認したにもかかわらず、点検・交換しなかった。整備記録には改ざんした値を記載した。
連続耐空証明はく奪
JCABは今年5月22日から24日と、同月29日から31日、6月4日と6日の計8日間立ち入り検査を実施。不適切な整備と整備記録の改ざんが判明した。事業改善命令を通達し、安全意識の再徹底や適切な整備など、7項目を指示。取得していた連続式耐空証明をはく奪し、耐空証明(AC=Airworthiness Certificates)の期間を1年間とする。
耐空証明検査とは強度や構造、性能、騒音、エンジンの排出物などを検査するもので、自動車の「車検」のようなもの。検査基準を満たした機体については、国交省がACを発行する。有効期間は1年間。検査を受けるためには、年間でおよそ3日から4日程度の運休が必要となる。
連続式耐空証明は、保有する任意の機体1機を、2年に1回検査する。基準に満たしていれば、保有する機体すべてで基準を満たしていると見なす。
事業改善命令を受け、NCAは同日に声明を発表。「全社一丸となり、『一から再生』する気持ちで安全運航に向け全力を尽くす」とした。
7月5日運航再開
NCAが保有する機材は11機すべてが貨物専用機で、このうち8機が747-8F、残り3機が747-400F。同社は747-8F(JA14KZ)で見つかった整備記録に不備により、6月17日から7月4日まで、全便の運航を停止した。5日から運航を再開し、現在は747-8F(JA18KZ)と747-400F(JA05KZ)の2機を運航している。
NCAはエンジン整備の記録不備により、2016年10月5日付で、JCABから厳重注意を受けている。
17年に航空事故1件、重大インシデント3件
・17年度、航空事故2件と重大インシデント5件 国交省(18年7月18日)
6月に運航停止
・NCA、安全確認に数週間 整備記録不備で運航停止(18年6月25日)
・NCA、全便が運航停止 747-8Fの整備記録不備、安全確認1週間(18年6月16日)
16年10月に厳重注意
・NCA、国交省から厳重注意 エンジン整備の記録不備で(16年10月7日)