1月16日に高松空港へ緊急着陸した全日本空輸(ANA、9202)のボーイング787型機(登録番号JA804A)でのバッテリー発煙トラブルについて、国土交通省の運輸安全委員会(JTSB)は1月23日、フライトレコーダー(DFDR)の記録から発煙元のメインバッテリーの電圧は31ボルトと正常値を示していたが、操縦室内で異臭を感じた頃に電圧が急降下していたと発表した。
機体の前方電気室に搭載されたメインバッテリーは約4ボルトのリチウムイオン電池8個で構成され、フル充電時の電圧は約32ボルト。飛行中の電力は2基のエンジンに備えられた4つの発電機からまかなうため、通常は使用しない。JTSBによると、煙が出たメインバッテリーの内部は焼損により炭化し、異臭が発生したものの、火災発生の形跡はなかった。DFDRの記録では、トラブル発生後に電圧が31ボルトから急降下し、その後も31ボルト以下の範囲で上下に変化を繰り返していたという。
また、DFDRの記録からは現時点で過充電を示すデータは見つかっていないが、「過充電が本当になかったと結論づけるのは時期尚早。まだ調査が始まったばかり」(JTSBの後藤昇弘委員長)として、今後はバッテリーの製造元であるジーエス・ユアサ(6674)での分解調査や、後方電気室に搭載され同一品を使用している補助動力装置(APU)の始動用バッテリー、充電器などの調査を行い、慎重に原因究明を進めていく。
トラブルが発生したのは山口宇部発羽田行きNH692便。16日午前8時26分ごろ、高松空港上空で操縦室内の計器にバッテリーの不具合を示す表示が出た。同時に異臭がしたため、午前8時47分に高松空港へ緊急着陸。滑走路(方位26)に着陸後に誘導路T4上で停止し、脱出用シューターで非常脱出した。乗客129人と乗員2人の計137人のうち、乗客1人が手首のねんざ、乗客2人がかすり傷の軽傷を負った。
バッテリーからの煙は機内では確認されておらず、機体外観で煙が出た痕跡があったのはメインバッテリーのある前方電気室近くにある、機内の冷却ファンが故障した時などに機外へ空気を吸い出す流れを作る「装備品クーリング・オーバライド・バルブ」と、客室の与圧制御に使う「アウトフローバルブ」の2カ所。メインバッテリーの外観は金属製ボックス上部に膨らみがあり、側面には液漏れがみられた。
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運輸安全委員会
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