独ハンブルクで4月10日から12日まで開催された「エアクラフト・インテリア・エキスポ2018」(Aircraft Interiors Expo 2018)には、世界各国の内装品メーカーが出展していた。機体メーカーであるエアバスも、過去最大となる広さ約550平方メートルのブースを構え、A320向けの新客室内装「エアスペース」(Airspace)のモックアップを展示。今回の目玉で、多くの招待客が見学していた。
—記事の概要—
・伸びる単通路機の航続距離
・簡単にフルフラット化
・20年代にLCC新時代へ
伸びる単通路機の航続距離
エアバスがA320向けエアスペースを目玉としていたのには、理由がある。航続距離が従来よりも長い単通路機が、LCCを中心に需要が高まっているためだ。
エアバスは大西洋横断も可能なA321neoの航続距離延長型「A321LR」の開発を進めており、3月にはセイシェルのマヘ島から仏トゥールーズまで、8797キロ(4750海里)を11時間かけて飛行することに成功した。
こうした中、客室の内装も従来のように片道最長4時間から5時間程度のフライトを想定したものから、より長距離でも乗客が快適に過ごせるものが求められている。
また、胴体の長さはそのままに、ギャレー(厨房設備)やラバトリー(化粧室)の配置を見直すことで、従来よりも座席数を増やせる仕様が登場していることから、頭上の手荷物収納棚(オーバーヘッドビン)の大型化も課題となっている。
例えば、ピーチ・アビエーション(APJ/MM)が運航しているA320の座席数は、現在1クラス180席。これが2019年から導入を始める新型エンジンを搭載したA320neoでは、上述の見直しで8席増えて188席となる。海外では、すでに188席仕様のA320を就航させているLCCもあるが、手荷物収納棚の大きさは従来と同じなので、機内に手荷物を収納しきれないケースも生じているのが現状だ。
簡単にフルフラット化
エアバスの目玉展示となったA320向けエアスペースは、フルフラットシートや大きくなった手荷物収納棚、LEDを用いた新しい照明などが特徴。このうち、60%大きくなったという手荷物収納棚は、従来キャリーバッグが5つ入ったスペースに、タテ置きで8つ収納できるようになった。ラバトリーは、ゴミ箱のフタに手をかざすとフタが開くなど、手に触れずに使える工夫がなされていた。
モックアップの中で特に人だかりができていたのは、ビジネスクラスなどとして使用することを想定したフルフラットシート。1列あたり片側2席で、プレミアムエコノミーとして販売したシートの背もたれを前方に倒すだけで、片側1席のビジネスクラスとして販売できるものだ。
例えば、片道4時間程度の路線では、1列あたり2席+2席のプレミアムエコノミーとして販売する。目的地へ到着後、片道6時間以上ある別の路線を飛ぶ際は、2席のうち1席の背もたれを前に倒して足などが置けるスペースにし、ビジネスクラスに早変わりさせることができる。
さらに2席とも倒すと、フルフラットのベッドとして扱える。現在は通路が2本あるワイドボディー機を使い、フルフラットシートのビジネスクラスが普及している10時間前後の長距離路線も、A321LRでこのシートを採用すれば、通路が1本のナローボディー機で同等のサービスを提供できる。
また、ヘッドレストは回転式で、片側が折れ曲がっており、簡易パーティションとして使える。
このほかの部分では、手荷物収納棚の大型化で、頭上のヘッドクリアランスは1インチ(約2.5センチ)低くなったが、内窓を大きくすることで窓が大型化したように見せるなど、これまでよりも広く感じる工夫がなされていた。
20年代にLCC新時代へ
これまでLCCと言えば、運航コストを抑えるため単一機種を大量にそろえ、シートのクラス設定もモノクラス(1クラス)がスタンダードだった。
しかし、従来であればA330のようなワイドボディー機が必要だった長距離も飛べるA321LRなどを投入すれば、運航コストの上昇を最小限に抑えて、路線を拡大できる。短中距離路線はA320neo、長距離はA321LRと、路線に応じて機材を使い分け、さらに長距離用機材を低コストで複数クラス化することも可能だ。
前述のフルフラットシートを、A321LRの機体前方に導入すれば、1列目をビジネスクラス、2列目をプレミアムエコノミー、残りをエコノミーとする3クラス構成すら可能になる。
エアバスによると、A320向けエアスペースを採用した機体が登場するのは2020年から。大型化した手荷物収納棚だけは、先行して2019年から採用できるという。2020年代に入ると、LCCは新たな進化を遂げそうだ。
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