1月に入り、ボーイング787型機でトラブルが相次いだ。現地時間7日にボストンのローガン国際空港で発生した、駐機中の日本航空(JAL、9201)の787から出火したトラブルでは、火元とみられる補助動力装置(APU)用リチウムイオンバッテリーの写真を、米国家運輸安全委員会(NTSB)が14日公開した。(関連記事)
トラブルが相次ぐ中、JALと全日本空輸(ANA、9202)の787運航便には、どのような影響が出ているのだろうか。両社の現状をまとめた。(高松空港に緊急着陸したANAの787についてはこちら)
7機中5機で運航するJAL
JALが保有する787は7機。このうち7日に出火した機体(登録番号JA829J)は現在もローガン空港で調査が行われている。8日と13日に燃料漏れを起こした機体(JA824J)は、14日から国交省航空局(JCAB)が成田空港で独自調査を開始。7機中2機が運航から離脱している。
787運航便は残り5機でボストン、モスクワ、北京、シンガポール、サンディエゴ線を運航中。JALによると、シンガポール線の一部便で767への機材変更が発生しているという。一方、ボストンやサンディエゴ線は、中型機ながら大型機並みの航続距離を持つ787の特性を生かした路線のため、優先的に787を割り当てているようだ。
JALでは2月25日に787の新路線として成田-ヘルシンキ線を新設する。週4往復で開設後、13年度上期中にデイリーへ増便予定だが、トラブル解決が長期化すると機材繰りに影響が出るため、早期解決が待たれる。
離脱機ないANA
787のローンチカスタマーで、世界でもっとも多く787を保有するANAの保有機数は現在17機。ANAの機体も1月に入り、ブレーキ制御システムに不具合が生じたり、オイル漏れや窓ガラスへひびが入るトラブルが発生した。
ANAによると、自社やJALでトラブルが起きた箇所の緊急点検は通常の整備時に行っているという。日々の点検項目では、バッテリーの健全性確認など一連のトラブルに関する内容を追加した。
運航から離脱している機体はなく、国際線と国内線で運航している。11日には787運航の成田-サンノゼ線を開設。初便は158席に対し乗客は146人と9割以上の席が埋まっており、「787離れ」は起きていないようだった。
FAAとボーイング共同調査の行方
現地時間11日に米国連邦航空局(FAA)は、ボーイングと共同で787の設計や製造工程、基幹システムについて調査を開始したと発表した。この共同調査の行方はどうなるのだろうか。
複数の航空関係者の話を総合すると、就航している787が全機飛行停止になるなど、最悪の事態は避けられる見通しだ。787は昨年12月末までに49機が引き渡され、受注残は799機となっている。
787は他の航空機と同様、FAAの型式証明を取得する以前に多くのトラブルが発生しており、これらを解決した上で型式証明を得ている。各社の就航率などを見ても、787のみの値と787以外の機体を含めた値では大きなかい離は見られず、787だけ突出した値は出ていない。
1月に入り発生したトラブルも、当該機以外では点検時に同一の問題は見つかっておらず、現時点では787全機共通の問題とは言えない状況だ。787を発注している各社も、今のところ計画を見直した社はない。
バッテリーのトラブルについては、NTSBが今週にもバッテリーを分解し、調査を行う予定。原因の早期解明を待つとともに、メディアは動向を冷静な視点で読者に伝えていく必要がある。
関連リンク
日本航空
全日本空輸
Boeing
ボーイング・ジャパン
・全日空の787、高松空港に緊急着陸 機内に異臭
・米運輸安全委、出火した787のバッテリー公開
・ボーイング、2012年の民間機受注は歴代2位の1203機、引き渡しは601機
・全日空の787、搭乗率1割高い 定期便就航から1周年