全日本空輸(ANA/NH)とソフトバンクグループ(9984)傘下のSBドライブは2月25日、自動運転バスの実証実験を、羽田空港の新整備場地区で報道関係者に公開した。2020年以降の実用化を目指す。空港周辺での自動運転バスの実証実験は、国内では初めて。
—記事の概要—
・空港内バスの自動運転目指す
・片野坂社長「自動運転検証に適している」
空港内バスの自動運転目指す
今回の実証実験では、公道で運転席に運転手が座る「自動運転レベル3」と、運転席は無人で遠隔操作のみの「レベル4」相当の自動走行を実施。市販の小型バス「日野ポンチョ」(定員28人)を先進モビリティ(目黒区)が改造した実験車両と、SBドライブが開発中の遠隔運行管理システム「Dispatcher(ディスパッチャー)」を用いて、走行時の制御技術やシステムの検証などを、21日から28日まで実施する。
実験用バスには、前後左右の情報を収集できるようにカメラやセンサー、ミリ波レーダー、GPS、通信機器などを設置した。ステアリング(ハンドル)やアクセル、ブレーキ、ウインカーは、自動運転に対応するよう改修。車線や速度を維持したり、障害物回避や車線変更の制御、バス停の正しい位置に停車できるようにした。
ANAは今後、空港内で乗員や乗客を運ぶ実証実験を、2018年度内に実施する見通し。空港内を走るバスのうち、決められたルートを繰り返し走行するものを自動運転化することで省力化し、人員配置を見直す。
片野坂社長「自動運転検証に適している」
25日に新整備場地区で公開されたレベル3の実証実験では、1周2.4キロのコースを最高時速30キロで走行。レベル4相当では、1周1.4キロのコースを運転席が無人の状態で走行し、大型2種免許の保持者が遠隔監視した。
ANAを傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)の片野坂真哉社長は、「制限区域内なので、一般公道と比べて自転車や人の侵入が起こりにくく、リスクが限定的。空港内の車両は時速30キロ以下なので、自動運転のコントロールもしやすい」と、自動運転技術の検証に適していると説明した。
「地上支援業務(グランドハンドリング)は数十年間仕事の進め方がほとんど変わっていない。より少ない人数と労力で、働きやすい環境を作りたい」(片野坂社長)と、自動運転の実用化による業務改革に触れた。
SBドライブの佐治友基社長は、「実証ではなく活用しようとするANAと取り組む。日本のオリジナリティーのある発信につながると思う」と語った。また、ソフトバンクグループの今井康之副社長は「AI(人工知能)とIoT(モノのインターネット化)、ロボティクスに力を入れており、自動運転バスは3つにまたがる。非常に重要な位置づけだ」と述べた。
実証実験により、1人の遠隔管理者が複数台のバスを運用する形態での実用化を目指す。
片野坂社長は2020年以降の実用化の進め方について、「可能性は無限だが、安全性に不安があってはいけないので、着実に進めていきたい。(構内バス以外では)貨物コンテナも、今は列車の車両のようにつながっているが、応用が期待できる」と語った。
また、航空会社を監督する国土交通省航空局(JCAB)も、先端技術を活用して旅客サービスの向上を図る官民連携の会議「航空イノベーション推進官民連絡会」を、1月に航空会社などと立ち上げた。少子高齢化による人手不足が懸念されることから、先端技術を活用した省力化や自動化を官民連携で進めていく。
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