成田国際空港会社(NAA)は11月30日、LCC専用の第3ターミナルを改修すると発表した。2019年度をめどに、出発客と到着客の動線を分け混雑緩和を目指すほか、受託手荷物や機内持込手荷物の検査に高性能の機器を導入し、手続きの時間短縮を狙う。
—記事の概要—
・出発・到着動線区別、手荷物検査に高性能機器
・夏目社長「LCCのビジネスモデル変わりつつある」
出発・到着動線区別、手荷物検査に高性能機器
現在の第3ターミナルは、出発客と到着客ともにターミナルビル2階を使用。双方が同じフロアを行き交っている。2019年夏をめどに、1階に到着ロビーを増築し、出発と到着の動線を分離する。到着ロビーはバス降車場と直結する。
受託手荷物の検査は現在、保安検査員がX線装置を使用し、手作業で検査している。2019年度末をめどに、X線検査と手荷物搬送システムを一体化した装置「インラインスクリーニングシステム」を第3ターミナルにも導入し、効率の向上を図る。
インラインスクリーニングシステムでは、手荷物搬送中に爆発物などの危険物を自動で検査できる。成田空港では第1ターミナル南ウイングに2006年6月、北ウイングに2008年7月、第2ターミナルには2008年4月に導入済み。NAAによると、導入によりチェックイン手続きの時間短縮や、高度なセキュリティの確保でき、効率が25%程度上がるという。
機内持込の手荷物検査に、高度な保安検査機器「スマートセキュリティ」を導入する。長さ17メートルで、3人まで利用できる。再検査が必要な手荷物の自動仕分けや、使用したトレーを自動で入り口に搬送するなど、時間短縮のほか、検査員の負担を軽減する。
スマートセキュリティも、2019年度末までに導入する。
夏目社長「LCCのビジネスモデル変わりつつある」
第3ターミナル(LCCターミナル)は2015年4月8日に供用を開始。ジェットスター・ジャパン(JJP/GK)とジェットスター航空(JST/JQ)、バニラエア(VNL/JW)、春秋航空日本(SJO/IJ)、チェジュ航空(JJA/7C)の5社が供用当初から乗り入れ、現在も5社が使用している。
当初、年間750万人の利用客を見込んでいたが、2016年度は688万人が利用し、2017年上期(4-9月期)は392万人が利用した。
LCCターミナルについて、NAAの夏目誠社長は、2011年ごろに必要性をLCC各社と協議したと説明。「2011年は日本のLCC就航前で、当時はLCCの未来が不確実だった」とし、各社が「LCCのビジネスモデルに合致した『できるだけコストのかからない施設にしてもらいたい』と要望した」と述べた。その上で、「ここまで急速にLCCが成長するとは、(2011年)当時は思っていなかったのではないか」と続けた。
成田に就航するLCCでも、第1や第2ターミナルを使用している航空会社も多い。夏目社長は「LCC各社にはLCCターミナルを使用してもらいたい、と考えている」と述べた。現在のところ、LCC各社からは「強い入居希望が寄せられているわけではない」という。
2019年度以降は機能強化により、混雑緩和が期待される。現在、第1と第2ターミナルを使用しているLCC各社の第3ターミナルへの入居について、「第3ターミナルは、旅客施設利用料(PSFC)がほかのターミナルと比較しほぼ半額」とした上で「お客さま(利用客)の負担を考えると、(転居を)希望するのではないか」と述べた。
また夏目社長は、LCC各社の現状にも言及。「LCCのビジネスモデルは、世界的に見ても変わりつつある」とし、「フルサービス航空会社(FSC)との提携を考えている会社もある。乗り継ぎ客の獲得などに力を入れるのであれば、(FSCの多い)第1や第2ターミナルに移ることも考えられなくない」との持論を述べた。
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