全日本空輸(ANA/NH)は11月8日朝、新千歳空港の出発カウンターをリニューアルオープンした。これまで2階出発ロビー北側にあったが中央寄りに移転。羽田空港で導入している自動手荷物預け機や、大きめのピクトグラム(絵文字)などを採用し、動線を分かりやすくするとともに、土産物を預ける乗客が多いことから待ち時間短縮を図る。
—記事の概要—
・開業以来の旧カウンターに一礼
・自動預け機で待ち時間短縮
・伊丹や福岡も導入
開業以来の旧カウンターに一礼
新千歳の現国内線ターミナルは、25年前の1992年7月1日開業。国内線旅客数が当時と比べて300万人増となる年間1700万人台に達したことから、運営する北海道空港会社が2018年3月の完成を目指し、改修工事を2015年3月16日に始めた。
改修はターミナル南側から北側に向かって進められている。このため、日本航空(JAL/JL、9201)のカウンターは2016年12月13日にリニューアルしており、ANAの新カウンターが8日にオープンしたことで、大手2社のカウンター刷新がほぼ終わった。今後は、跡地にANAが混雑時などに使用する多目的カウンターや、グループのLCCであるピーチ・アビエーション(APJ/MM)とバニラエア(VNL/JW)のカウンターなどが1階から移転してくる。
移転前日の7日夜は、ANAの最終便羽田行きNH988便の手続きを終えた後、午後9時40分すぎに、地上係員が開業以来25年間使用してきたカウンターに一礼。係員たちはカウンターで記念撮影し、別れを惜しんでいた。
最終便出発後は、新カウンターへの引っ越しを開始。始発の乗客を迎える開館時間の午前6時20分に向け、引っ越しと同時に端末や放送機器のテストを急ピッチで進めていた。
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自動預け機で待ち時間短縮
ANAでは、新カウンターのレイアウトや自動手荷物預け機、障がい者向けカウンター、上級顧客が利用できるプレミアムチェックインカウンターの導入など、一連のサービスを「FAST TRAVEL(ファストトラベル)」と命名。新千歳は羽田に続き、2空港目の導入となった。
自動チェックイン機や、自動手荷物預け機「ANA Baggage Drop サービス(ABD)」などセルフサービスのエリアを集約することで、特定のカウンターの混雑を防ぎ、待ち時間削減を狙う。案内表示に大きめのピクトグラムを用いることで、日本語がわからない訪日客なども利用しやすくする。
ABDは10台導入。乗客自身が操作して手荷物に、受託手荷物を機械に預けるもので、日本語と英語、中国語(繁体・簡体)、韓国語の4カ国5言語に対応している。
ANAの空港センター空港サポート室の島田俊哉・旅客品質チームリーダーは、ADB導入について、「銀行での入出金が窓口からATMに移行したように、ABDへ移行することで待ち時間を短縮できる」と説明する。8日朝のカウンターオープン時は、有人カウンターよりもABDの前に多くの人が並び、シニア層の利用者も手慣れた手つきで手荷物を預けていた。
また、中央保安検査場付近には、赤ちゃん連れや障害を持つ乗客などが利用できる「スペシャルアシスタンス(Special Assistance)カウンター」を設置。車いすのまま手続きできるカウンターを導入し、利便性を高めた。
上級顧客が利用できる室内型カウンター「プレミアムチェックインカウンター」を新設。専用の保安検査場も設け、9月にリニューアルした国内線ラウンジ「ANAラウンジ(ANA LOUNGE)」と新たに設置したマイレージサービスの最上級会員向け「ANAスイートラウンジ(SUITE LOUNGE)」に直結している。
同カウンターはプレミアムクラスの利用客と、マイレージサービスの最上位「ダイヤモンド」会員と2番目の「プラチナ」、プラチナとダイヤモンド会員が入会できる「ANA スーパーフライヤーズカード」会員、ANAが加盟する航空連合「スターアライアンス」の「ゴールドメンバー」が利用できる。
伊丹や福岡も導入
ファストトラベルは今後、ラウンジのリニューアルや空港のターミナルビル改修などとともに導入。伊丹や福岡、那覇などターミナル改修が進む基幹空港で導入を予定している。
一方、地方空港はカウンターが新千歳などより小規模であることから、「案内の文字の大きさを変えるなど、コンセプトを踏襲するものを空港の規模に合わせて考えていきたい」(島田氏)と話す。
ANAの新川新一千歳空港支店長兼ANA新千歳空港社長は、「新千歳を利用するANAのお客様は1日1万1000人。新カウンターのコンセプトは、シンプルでわかりやすくした。お土産やスキーの板などウインタースポーツ用品を預けるお客様が多く、これまでは手荷物と保安検査場の2カ所でお待ちいただくことがあった」として、「ADBはだいたい60秒で預けられ、慣れた人は20秒程度で預けており、待ち時間短縮につながる」と話した。
新川支店長によると、今夏は利用者が集中した際、手荷物を預けるまでに最長1時間程度かかった日もあったという。ファストトラベル導入で、時間短縮につなげるとともに、「新千歳の地上係員は約250人。ABD導入による自動化で、接遇など係員による人的なサービス強化につなげたい」(新川支店長)と語った。
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