日本航空(JAL/JL、9201)が9月15日、ハワイ島・コナに再就航してから1カ月が過ぎようとしている。同路線は1996年6月2日、週3往復で運航を開始したものの、経営破綻の影響により、2010年10月30日に運休。再就航にあたり、JALの大西賢会長が「夢が叶った」と表現する肝いりの路線だ。
就航後の26日には、JALとハワイアン航空(HAL/HA)が包括的業務提携契約を締結するなど、ハワイ路線を取り巻く環境も変わりつつある。JALは成田-コナ線を1日1往復、ハワイアン航空はコナ-羽田線を深夜便で週3往復運航する。JALはデイリー運航で利便性の向上を図り、ハワイアンは都心に近い羽田に乗り入れることで差別化を図っている。
私(記者)は15日の成田発初便に搭乗した。利用客の客層はどのような感じで、コナの雰囲気はどうだったのだろうか。
—記事の概要—
・CAに拍手が送られる機内
・余裕を感じられるエコノミー
・白い砂浜と黒い溶岩の海岸
・平屋建てのコナ空港
・2人組の利用が多いコナ線
・満席だったコナ発便
CAに拍手が送られる機内
JALは成田-コナ線にボーイング767-300ER型機の新仕様機「スカイスイート767(SS6)」(2クラス199席:ビジネス24席、エコノミー175席)を投入し、2人のパイロット、9人の客室乗務員で運航する。
運航スケジュールは現在、コナ行きJL770便が成田を午後9時25分に出発し、午前10時5分着。成田行きJL779便はコナを午後0時5分に出発し、翌日午後4時に到着する。
私が搭乗した15日の初便では、成田空港の62番スポットを出発直後に、11人の客室乗務員が出身地と名前を紹介。乗客からは1人ひとりに拍手が送られた。大半が観光客のプレジャー路線ならではの光景だ。
私は当日、エコノミークラスに乗った。出発から1時間少々経過したあたりで、機内食の提供が始まった。資生堂パーラーとコラボレーションした機内食「資生堂パーラー for Resort」で、牛肉のクリーム煮「ビーフのブランケット」に、ケチャップで味付けしたチキンライスが添えられていた。
ハワイ線限定ドリンクとして、スパークリングワインのほか、JALのオリジナルドリンク「スカイタイム」キウイ味をスパークリングワインで割ったオリジナルカクテル「スカイ・ロワイヤル」を提供。甘酸っぱい飲み口で、夜便の寝酒にもいいかもしれない。
ビジネスクラスでは、洋食に「ドフィノワと牛肉のペリグールソース」、和食に「鴨治部煮と金目の煮付け」を提供。このほか、ハワイをイメージしたオリジナルカクテル「ビッグ・アイランド・ブリーズ」も用意する。
余裕を感じられるエコノミー
SS6のエコノミークラスは、シートピッチが約84-86センチ(33-34インチ)で座席幅は約48センチ。足元にカメラやバッグなど、大きめの荷物を置いても問題なく、両脇はがっちりホールドされている感覚もなかった。
いつもなら窮屈に感じてしまうエコノミーだが、やや余裕があるようにも感じられた。今回は8時間程度だったが、もう少し長い時間乗っていても疲れなかったように思える。
成田を離陸してからおよそ8時間後、ハワイ島が見えてきた。火山島であるハワイ島はあちこちに冷えた溶岩が点在し、コナ空港周辺も溶岩が多く見られた。着陸後、放水アーチで歓迎を受け、多くの乗客が拍手していた。
白い砂浜と黒い溶岩の海岸
午前10時過ぎにコナ空港に到着した私は、正午過ぎの成田行き出発初便を取材。荷物を持ったまま、駐機場に向かった。当日の気温は30度以下だったものの、日差しが強く日に焼けた。ハワイの日差しを甘く見ていた。
取材を終え、コナ中心部のホテルに向かう。チェックインまで時間に余裕があったので、空港近くの海岸に行ってみた。サンゴのかけらでできた白い砂浜と、黒い溶岩のコントラストが美しく、振り返ると山がそびえている。日本ではなかなか目にできない風景かもしれない。しかし、磯の香りはかぎ慣れたものと同じで、海が日本とつながっていることを実感させてくれた。
空港から南に7マイル(約11キロ)進むと、コナ中心部に到着する。交通手段は乗り合いバスやタクシー、レンタカーに限られる。空港から中心部までは、海沿いを走る片側1車線の幹線道路が1本で、慢性的に渋滞しているようだ。道路を拡張する工事も進められていた。このほか、山を通る迂回ルートもあった。
平屋建てのコナ空港
コナ空港は国際空港でありながら、とてもこぢんまりした作りだった。一般的には空港はセキュリティの厳しい場所だが、バゲージクレームと荷物受け取り後のエリアの仕切りが一切なかった。
おかげで私は、ATMを探して敷地内を歩いていたら、バゲージクレームにうっかり入ってしまった。
2人組の利用が多いコナ線
コナからの初便となった成田発JL770便(767-300ER、登録番号JA607J)は、乗客201人(うち幼児3人)が利用した。JALによると、初便はおよそ95%が日本人客で、残りの5%が外国人客だという。今後は日本人客90%、外国人客10%程度になるとし、中国や韓国、フィリピンなどアジア各国からの乗り継ぎ需要の取り込みを狙う。また、コナ線を利用する3分の2程度が、コナのあるハワイ島のみに滞在するという。
ホノルル線の利用客は、若い家族連れが多いのに対し、コナ線は50代から60代くらいの夫婦などが目立つ。ペアでの利用が多いようだ。SS6のエコノミークラスは、シート配列が2-3-2席で、グループが離ればなれになってしまう可能性がある。2-4-2席配列の787-8や、今後需要が拡大し、ホノルル線を飛ぶ3-4-2席配列の777-200ERなどの機材になると、離ればなれになる確率も下がるのではないだろうか。
満席だったコナ発便
コナ発便は翌16日のJL779便を利用した。コナ発便は満席で、ほぼ全員が日本人客だった。成田発便は夜間飛行で多くの乗客が眠っていたが、コナ発便では酒をたしなんだり、映画などの機内エンターテインメントを楽しむ乗客が多く見られた。
16日のコナ発便は、15日の成田発便と同じパイロットと客室乗務員11人が担当した。客室乗務員のひとりは、21年前の初便にも乗務していたという。再就航について「感慨深い。コナ線には思い入れがある」と話していた。
エコノミークラスの機内食は、和食にはご飯を添えた鶏の生姜焼き、洋食にはシュレッドポークのパスタを用意。当初、パスタを選択する搭乗客が多かったが、後半は生姜焼きが盛り返していた。
◇ ◇ ◇
JALとハワイアン航空は、2018年3月25日以降、コードシェア(共同運航)やラウンジの相互利用などを計画している。両社が手を組むことでハワイ路線がどのように変わっていくのか、注目していきたい。
運航を再開したからには、長く続けてもらいたい。ホノルルのあるオアフ島とは違う、ハワイ島の魅力を訴求できれば集客力はあるはずだ。
個人的にはホノルルを含め、初めてのハワイ訪問だった。成田を出発したのが金曜の夜で、コナ到着が金曜の午前。金曜日がとても長く感じられた。次回こそ1泊ではなくもう少し長く滞在し、パンケーキなどを味わってみたいものだ。
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日本航空
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