エアライン, 空港, 解説・コラム — 2017年9月28日 12:30 JST

「破綻のまっただ中。お断りせざるを得なかった」 特集・JALとハワイアン強者連合誕生(後編)

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 ハワイアン航空(HAL/HA)と包括的業務提携契約を締結した日本航空(JAL/JL、9201)。特集前編では、ハワイ路線の現状を中心に解説した。後編では、JALの海外パートナー戦略を取り上げる。

ハワイアン航空との提携会見に出席するJALの植木義晴社長(右)とハワイアンのマーク・ダンカリー社長兼CEO。終始にこやかな会見だった=17年9月26日 PHOTO: Yoshikazu TSUNO/Aviation Wire

—前編の概要—
「競争大変厳しいものになる」
LCC参入進む関空-ホノルル

—後編の概要—
「お断りせざるを得なかった」
ベトナム・インドで進む新事業領域
「価値観の合うところと組みたい」

前編はこちら。

「お断りせざるを得なかった」

ハワイアン航空との提携会見で質疑に応じるJALの植木義晴社長(右)とハワイアンのマーク・ダンカリー社長兼CEO=17年9月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 発着枠の制約によるJALの羽田-ホノルル線運休、全日本空輸(ANA/NH)のA380投入、海外LCCのホノルル線参入と、大きな節目を迎えたハワイ路線。ではなぜ、JALは今、ハワイアンと組むのだろうか。まずはハワイアンの日本参入当時の状況から見てみよう。

 羽田が再国際化し、現在の国際線ターミナルがオープンしたのが2010年10月21日。その約1カ月後の11月17日に、ハワイアン初の日本路線であるホノルル-羽田線が就航した。羽田発は深夜便で、2日後の19日に初便がホノルルへ向けて飛び立った。

 2010年といえば、1月19日にJALが経営破綻。1996年から運航していたコナ線をJALが運休したのも、この年の出来事だった。

羽田を出発するハワイアン航空のコナ行き初便。発着枠の関係でハワイ路線の羽田便を失ったJALにとってハワイアンの存在は大きい=16年12月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 「ハワイアンが日本に就航する際、われわれにお話をいただいた。グランドハンドリングやコードシェアで提携できないかということだったが、われわれは破綻のまっただ中。お断りせざるを得なかった」と、植木社長は振り返る。

 その結果、ハワイアンはANAと提携を結ぶ。ハワイアンは、ワンワールドやスターアライアンス、スカイチームといったアライアンス(航空連合)に加盟しておらず、2社間での提携だ。

 ANAとハワイアンとのコードシェアは、2010年12月から貨物便で開始し、旅客便は2012年1月19日にスタート。ハワイアンが運航するホノルル発着のコナ線、リフエ線、ヒロ線、カフルイ線にANA便名を、ANAの羽田-ホノルル線、国内線の羽田-札幌線と関西線、伊丹線、広島線、福岡線、大分線、鹿児島線、那覇線にハワイアンの便名を付与する形で始めた。マイルについては、2011年12月27日から実施した。

 ハワイアンはANAとの提携関係を、JALとのコードシェアが始まる2018年3月にも解消する見通しだ。

ベトナム・インドで進む新事業領域

ベトジェットのタオCEOからA320の模型をプレゼントされるJALの藤田副社長。JALは新興エアラインを育てるビジネスも模索する=17年7月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 一方でJALの経営破綻後、ANAとハワイアンとの関係とは逆のことも起きている。JALとベトナム航空(HVN/VN)の提携解消だ。

 JALはベトナムのパートナーとして、ベトナム航空と提携し、コードシェアを実施していた。しかし、ANAを傘下に持つANAホールディングス(9202)が、ベトナム航空に約8.8%出資する資本・業務提携を、2016年5月28日に締結した。

 これに伴い、ベトナム航空はJALとの提携を同年10月29日までの夏ダイヤ限りで解消し、翌30日開始の冬ダイヤからは、ANAとコードシェアやマイル提携を実施している。

 結果としてJALは、今年7月にベトナム初の民間航空会社で、同国初のLCCであるベトジェット航空と提携を結んだ。そこには従来型のコードシェアやマイルといった提携だけではなく、JALが中期経営計画で示す「新しい事業領域」の姿が見えてきている。

 JALの藤田直志副社長は、「出来上がった航空会社同士が提携するというよりも、これから機材も増やして、成長していきたいのがベトジェット。規模の大きいエアラインのマネジメントについて、ノウハウを提供するビジネスもある」と、単なる提携にとどまらず、新しいビジネスも模索する。

 9月に提携したインドのビスタラとの関係も、こうした新興航空会社の育成ビジネスの可能性を含んだものだ。

「価値観の合うところと組みたい」

双方のモデルプレーンを手にするJALとハワイアン航空の客室乗務員=17年9月26日 PHOTO: Yoshikazu TSUNO/Aviation Wire

 では、ハワイアンとの関係はどうか。破綻後のJALが求めるパートナーには、ある共通項目がある。大西賢会長は、かつて私にこう説明した。「価値観の合うところと組みたい」。

 植木社長は「お互いに共通した価値観を持っている」と、ハワイのもてなしをサービスの軸に据え、定時性など運航品質でも評価の高いハワイアンに共通点を見いだす。

 ハワイアンのマーク・ダンカリー社長兼CEO(最高経営責任者)も、「お互いに自国の文化に根付いたサービスを提供しており、JALは理想のパートナーだ。ハワイアンも温かいもてなしを得意としており、搭乗した瞬間からハワイのバケーションが始まる」と、同じ価値観を持つことが、質の高いサービスにつながるとの認識を示した。

ホノルル空港で出発を待つハワイアン航空機=15年4月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ホノルル空港内にあるハワイアン航空の「プルメリア ラウンジ」=15年10月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 今回の提携でコードシェアの対象となるのは、JALが成田-ホノルル線とコナ線、関西-ホノルル線、中部-ホノルル線、ハワイアン航空便と乗り継ぎできる国内線と、香港やシンガポールなどのアジア路線。ハワイアン航空は成田-ホノルル線、羽田-ホノルル線とコナ線、関西-ホノルル線、札幌(新千歳)-ホノルル線、JAL便と乗り継げるハワイアン航空のハワイ州内路線が対象で、いずれも2018年3月25日開始を予定している。

 コードシェアやラウンジの相互利用、マイルの提携にとどまらず、ハワイ-アジア市場での事業展開に向け、共同事業(JV)の検討を進める。ダンカリー社長は「数カ月でATI(独占禁止法適用除外)を当局に申請し、共同事業を行う」と、今回の提携から時間を開けずにJALとの関係を深める考えだ。

ワイキキ周辺を飛ぶJALのハワイ就航60周年記念フライト。JALにとってハワイは他の国際線就航地とは違う意味合いを持つ=14年12月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ベトジェットやビスタラとの提携では、JALは伸び盛りのパートナーと、新しいビジネスモデルを開拓する意味合いもあった。一方、90年近い歴史を持つハワイアンとの提携は、強者連合を組むことでより盤石な基盤を築き、お互いの強みを発揮しやすい環境作りと言えるだろう。

 JALにとって、ハワイはドル箱であると同時に、閑散期の12月にホノルルマラソンを開くなど、地元と一体になって観光需要を開拓してきた自負がある。破綻前を振り返ると、全国各地からジャンボの愛称で親しまれた747がホノルルに集結していたが、JALの経営悪化とともに路線縮小が進んだ。

 そして、国の監視期間を終えた今、JALはハワイ州内路線に強みを持つハワイアンと提携に至った。従来の自前主義とは違ったアプローチでのハワイ路線強化だ。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催前に実施が見込まれる羽田の発着枠増枠も、劇的な規模拡大は期待できない。こうした環境下で、JALは牙城ハワイの守りを固めつつ、伸びしろがあり、共通の価値観を持つパートナーと成長を目指す。

(おわり)

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日本航空
ハワイアン航空

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