エアライン, 企業 — 2017年7月1日 08:00 JST

「笑顔がまぶしいのは本当」資生堂、JAL客室乗務員に笑顔講座

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 笑ってるつもりでも、笑ってないと言われませんか──。客室乗務員といえば、いつも笑顔で乗客と接することが求められる仕事だが、自分の表情を客観的に評価するのは難しいものだ。日本航空(JAL/JL、9201)では、資生堂(4911)が開発した笑顔をトレーニングするiPad用アプリを2016年7月から試用してきた。

iPad miniにインストールされた笑顔アプリで笑顔をチェックするJAL客室乗務員の岩嶋さん=17年6月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 笑顔アプリは、客室乗務員がiPadのカメラで自分の笑顔を撮影し、アプリが笑顔の数値化と印象を判定して記録。時間と場所を問わず、他人に与える笑顔の印象を客観的に分析できるようにした。資生堂独自の表情筋エクササイズを行うことで、豊かな表情や笑顔に磨きを掛けられるという。

 JALでは、客室乗務員が出発前に行うブリーフィングで笑顔の練習に採り入れるなど、日常業務に織り交ぜて活用している。

“真の笑い”と“ニセの笑い”

 資生堂は6月29日、笑顔が相手や自分に与える影響や、美肌にどういった効果があるかなどが学べる「笑顔UP講座」を、羽田空港にあるJALのオフィスで開いた。笑顔アプリを活用しながら、客室乗務員により魅力的な笑顔になってもらおうと企画したものだ。

JALのオフィスで笑顔講座を開く資生堂の石川さん=17年6月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田のオフィスで開かれた資生堂の笑顔講座に参加するJALの客室乗務員ら=17年6月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 乗務を終えた客室乗務員をはじめ、40人以上の社員が受講。講師は資生堂で笑顔アプリの開発に携わる、ビューティークリエーション部ビューティークリエーションセンターの石川智子さんが務めた。

 資生堂は、2008年から学校や企業を対象に、笑顔の持つ意味や重要性を説く「笑顔講座」を開講。笑顔アプリは、講座の内容をデジタルコンテンツ化したものだ。表情から受ける人間の感性を数値化し、笑顔の度合いが20%から40%では、きちんとしていたり、落ち着いているという印象を与え、60%では気品のある笑顔、80%で魅力的な笑顔、100%から120%になると、親しみやすさを感じる笑顔になるとしている。

 石川さんは、「困った顔をしていないと、相手には困っているように見えません」など、表情が発する非言語によるコミュニケーションについて、具体例を交えて説明。「パンダは実は怖い表情をしています」と、周りの黒い縁取りで大きな垂れ目に見えることで、かわいらしさがあるパンダと、同じ写真から目の縁取りを取り去ったものを並べ、表情から伝わる印象の違いにふれた。

iPad miniにインストールされた笑顔アプリで笑顔をチェックするJALの客室乗務員=17年6月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 「笑顔は内面が素敵に見えるんです」と話す石川さんは、“真の笑い”と“ニセの笑い”にも言及。本当に笑っている時は口よりも目が笑っており、ニセの場合は逆に口のほほ笑みが印象に残るという。

 美肌についても触れ、「にっこり笑うと、笑顔がまぶしいのは本当です」と石川さんは話す。笑うことで肌に張りが出てつやつやして見えることが、“まぶしさ”につながるようだ。笑顔になることで肌のたるみを防ぐことができ、加齢とともに刺激を与えることが肌を良い状態に保つ上で重要だという。

 表情のフィードバックも重要だ。楽しくて笑うと、脳が楽しいと認識し、笑顔は気持ちを明るくすることにもつながるという。そして、集団の中で一人があくびをすると、つられてあくびする人が出てくることを例に、人間は自分がやったことがある行動に反応する特性を指摘。笑顔も同様に、周囲の人に広がるという。

 笑顔アプリも試用から1年がたち、従来は笑顔のトレーニングを記録できるのが3カ月分だったが、420日(約1年2カ月)分に伸ばした。

笑顔の評価「他人に言いにくい」

笑顔アプリと笑顔講座に携わるJALの松尾さん=17年6月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JALで笑顔アプリと今回の講座に携わる、客室品質企画部企画・運営グループの松尾絵里奈リードキャビンアテンダントは、「講座に参加した人を観察していると、笑顔アプリを使っているときが一番笑顔になってました。その人の本当の笑顔を引き出せるのでは」と話す。

 笑顔アプリについて、松尾さんは「他人に言いにくい、客観的な笑顔の評価を伝えやすいですね」と評価する。

 これまでは自分自身で笑顔の状態を評価するのが難しかっただけではなく、友人や同僚の笑顔が気になった時にも、指摘しにくかったという。「笑顔が変だよ、とは言いにくいですよね」と松尾さんは笑う。アプリのように数字で示すことができると、指標として扱いやすいようだ。

 乗務を終えて参加した客室乗務員の岩嶋理乃さんは、今までは口角のバランスなどに気をつけていたという。「自分で漠然とやっていたものが、成果が見られるのでわかりやすいですね」と、アプリを気に入った様子だった。

 講演を終えた石川さんは、「皆さん笑顔が素敵な方ばかりなので、今回は笑顔が与える印象や、ストレス解消につながることをお伝えしました」と話す。単に笑顔の練習をしてもらうのではなく、「自分自身にも効果があることを知っていただきたかったです」と、講座の狙いを語った。

 石川さんによると、病院のように、これまでは笑顔が必要だと認識されにくかった職場からも、依頼が舞い込んでいるという。笑顔アプリも、2018年から企業向けの販売を本格化させていく。

 ことわざの「笑う門には福来たる」も、根拠があると言えそうだ。

JALのオフィスで笑顔がたるみを防ぐと説明する資生堂の石川さん=17年6月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

黒い縁取りの有無でパンダの印象は変わると説明する石川さん=17年6月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

資生堂では笑顔の度合いが20%から40%はきちんとしていたり、落ち着いているという印象を与え、60%は気品のある笑顔、80%で魅力的な笑顔、100%から120%になると親しみやすさを感じる笑顔になると分類している=17年6月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

iPad miniにインストールされた笑顔アプリで笑顔をチェックするJALの岩嶋さん=17年6月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

iPad miniにインストールされた笑顔アプリで笑顔をチェックするJALの岩嶋さん=17年6月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関連リンク
日本航空
資生堂

資生堂、JALの客室乗務員と“笑顔力アプリ”開発 17年以降実用化へ(16年6月21日)

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