日本航空(JAL/JL、9201)は6月22日、第68期株主総会を千葉県浦安市の舞浜アンフィシアターで開催した。配当や定款の一部変更、取締役の選任、取締役への新報酬制度導入の4議案をすべて可決して閉会した。
総会の冒頭、植木義晴社長は2017年度から2020年度までの中期経営計画を紹介。「世界が認める日本の良さを活かし、世界中のお客さまから評価され、支持されるエアラインになる」と述べ、「『世界のJAL』に変わる」とあいさつした。
業績連動の役員報酬
役員報酬では新制度を導入し、基本報酬のほか、業績に連動した賞与と株式報酬を付与する。現行制度では基本報酬と賞与を年額で合計4億5000万円以内とし、社内・社外取締役に支給している。新制度では、基本報酬と業績連動型賞与をそれぞれ年額3億5000万円を上限とし、業績連動株式報酬を最大で10万株付与する。
新制度では、社外取締役は基本報酬のみを対象とし、年額5000万円を上限として支給する。業績連動型の報酬は、社内取締役のみを対象とする。
信念を持っていい会社に
株主からは、経営破綻後の2010年末に整理解雇した165人の再雇用を求める声があった。解雇者側が起こした裁判では、2015年2月に最高裁で整理解雇の有効性が確定している。
植木社長は165人のほか、「1万人以上の仲間が(会社を去ることを)自ら判断してくれた」と述べ、2012年9月の再上場後に、社員と株主を守ることが「私の務め」とした。「1万人以上と165人に『戻ってこい』というのは無責任」と理解を求め、「信念を持っていい会社にしていきたい」と語ると、会場からは拍手が起こった。
日岡裕之総務本部長は「二度と同じことを繰り返さないことが、会社に残ったものの責務」と述べた。
業務でJAL便に搭乗する際、どのクラスを利用するかを質問する株主もいた。植木社長は「国際線は、空席があればビジネスクラス以上を利用する。国内線は普通席」と回答した。
株主の一人は、運航乗務員の育成と拡充について質問した。進俊則運航本部長は「適正数を確保できている」とし、訓練効率を向上させ、訓練期間を短縮した新方式「MPL(マルチクルー・パイロット・ライセンス)」を紹介した。
地方から出席した別の株主は、株主総会の会場を羽田空港に近い都内などに変更するよう求めた。日岡総務本部長は、2013年から2015年まで会場としていた日本武道館について、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックに向けて改修工事が入る可能性を指摘。「設備面と音響面で問題があった」とし、「都内での会場選定はむずかしい。しばらくは(舞浜アンフィシアターを)使わせていただこうと考えている」と述べた。
657人出席
配当は普通株式1株94円で、配当総額は332億3648万6442円。現在は連結純利益から法人税等調整額を除いた額の25%程度を充てるが、2017年度以降は30%程度とする。
定款は、剰余金の配当について一部を変更。年度内に1回に限り、配当できるようにした。
新役員体制については、新たな取締役を選出せず、昨年より1人少ない10人(うち3人は社外取締役)となった。
出席者数は657人で、昨年より17人減少。所要時間は昨年より5分長い2時間16分だった。質問者数は昨年と同様の12人。議事進行を妨げて退場処分となった株主は2015年から3年連続でいなかった。
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