三菱航空機は現地時間6月19日、この日開幕した第52回パリ航空ショーで全日本空輸(ANA/NH)のカラーリングをまとった飛行試験3号機(登録番号JA23MJ)の機内を公開した。
5機あるMRJの飛行試験機のうち、3号機はアビオニクス試験とオートパイロット(自動操縦)試験、飛行特性試験に使用。19日の公開時は、機体前方は試験機器などがない状態で、中央から後方は技術者が機体の状態を観測する席が設けられていた。
このほかの飛行試験機は、初号機(JA21MJ)はシステム試験、2号機(JA22MJ)は機能・性能試験、内装を施す4号機(JA24MJ)はインテリアや騒音、防氷試験に投入。初号機から4号機までは、米モーゼスレイクを拠点に試験を進めている。
一方、当初国内でオートパイロット試験に使用する予定だったANA塗装を施した5号機(JA25MJ)は、県営名古屋空港に隣接する最終組立工場で機器配置の見直しなどに使われている。
パリ航空ショーが開かれているル・ブルジェ空港で会見した、三菱航空機の水谷久和社長は、今回の3号機出展について「開発がきちんと進んでいることを、実機を持ち込んで世界のみなさんにお示しし、理解をいただくことが重要なミッション」と説明。「開発の実態を実機を通して御理解いただき、将来のビジネスにつなげていくきっかけになれば」と述べ、パリでの受注は難しいとの見通しを示した。
実機を持ち込んだものの、受注は厳しいとみられるMRJ。一方、リージョナルジェット機の市場をリードするブラジルのエンブラエルは、開発中の「E2」シリーズで最大の機体サイズとなるE195-E2の初号機(登録番号PR-ZIJ)を出展。19日には当初20日に予定していた飛行展示を前倒しして実施。約6分間のフライトを終えると、会場からは拍手が沸き起こった。
リージョナルジェットの王者エンブラエルに対し、開発がリードしていたはずのMRJは徐々に巻き返され、苦しい戦いが続いている。
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