離島路線をはじめ、存続が今後厳しくなるとみられる地方路線を運航する地域航空会社について、監督官庁である国土交通省航空局(JCAB)では、機材の共通化や大手2社をまたぐコードシェア(共同運航)など、抜本的な見直しの検討を進めている。
有識者会議の「持続可能な地域航空のあり方に関する研究会」は6月2日、地域航空会社の今後のあり方に関する提言の中間とりまとめ案を公表した。日本国内の人口減少や高齢化などにより、需要の先細りにどう対応していくかが、地域航空会社に共通の課題となっている。
—記事の概要—
・統合含め検討
・JAL大西会長とANA平子社長に聞く
統合含め検討
検討対象となっている主な地域航空会社は、ターボプロップ(プロペラ)機を運航する5社。日本航空(JAL/JL、9201)のグループでは、鹿児島空港を拠点とする日本エアコミューター(JAC/JC)と、札幌・丘珠空港が拠点の北海道エアシステム(HAC、NTH/JL)、JALとコードシェアを実施している天草エアライン(AHX/MZ)、全日本空輸(ANA/NH)系ではANAウイングス(AKX/EH)、ANAとコードシェアする長崎のオリエンタルエアブリッジ(ORC、NGK)だ。いずれも30席から70席程度のターボプロップ機で、地方間路線を運航している。
また、JALグループの日本トランスオーシャン航空(JTA/NU)が筆頭株主の琉球エアーコミューター(RAC)も、ターボプロップ機で離島路線を運航する地域航空会社だ。
地域航空会社では、大手とのコードシェアや、JACと天草エアのように地域航空会社同士で予備機を共用する準備を進めたり、JACが天草エアとHACから整備を受託するなどの取り組みが見られるが、原則としてグループ内の連携にとどまっている。機材数も天草エアラインのように1機しか保有していない会社もあり、将来的に機材数などによるスケールメリットを出すのであれば、機材の共通化などが不可欠というのが、JCABの考えだ。
こうした大幅な運航コスト削減や、機材整備による欠航を防ぐため、今回の中間取りまとめ案では、地域航空会社の統合も含めたあらゆる選択肢が、今後の検討課題だとしている。
JAL大西会長とANA平子社長に聞く
これに対し、大手2社は地域航空会社の統合をどう見ているのだろうか。メキシコのカンクンで現地時間6月5日(日本時間6日)、Aviation Wireの取材に応じたJALの大西賢会長は、「経営統合は否定する選択肢ではないが、地域の意志を尊重するという条件付きではないか」と語る。
JALの社長に就任前の2009年からJACの社長を務めた経験を持つ大西会長は、「スケールメリットで束ねてしまえ、というのではなく、地域がどう考えているのかが重要。経営統合というと、航空会社の意志がどこかで統一されてしまう感じがする」と指摘する。
「例えば九州のJACと北海道のHACでは、地元の人が航空会社に求めるものが違う。経営合理性だけではない形で、うまくいく方法を考えるべきではないか。(航空会社に対する)地元の気持ちは熱く、自治体も必要と思って助成金を出している。経営統合は選択肢の一つだと思うが、こうした付帯条件が付くのではないか」と述べ、地域航空会社を統合することになった場合は、各航空会社が持つ地域性やニーズを重視することが不可欠だとの考えを示した。
同じく5日にカンクンで当紙の取材に応じたANAの平子裕志社長は、「需要が減っていく中で個別に維持できれば良いが、(現在の地域航空会社の体制が)いずれ立ちゆかなくなると、今から考えておいた方が良いのではないか」と語る。仮に地域航空会社を統合するとした場合のポイントとして、「我々の立場では機種の統合、お客様の立場ならマイルの統合だろう。しかし、制約が掛かるので、簡単にはいかないだろう」と述べた。
地域航空の担い手が、地元や利用者が求めるサービスを提供できなくなれば、経営統合が無意味になるのは言うまでもない。路線維持が厳しくなっていくなか、早めに手を打っていくことが不可欠だ。
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