三菱航空機と三菱重工業(7011)は4月26日、リージョナルジェット機「MRJ」の最終組立工場の報道関係者向け見学会を開いた。
最終組立工場は、県営名古屋空港(小牧)に隣接し、2016年3月1日に建屋が竣工。愛知県の飛島工場で製造する胴体や主翼、三重県の松坂工場が手掛ける垂直尾翼や水平尾翼などを結合し、機体として完成させる。生産レートは月産10機に対応している。
工場内は、胴体や翼を結合する「構造ライン」と、全体の艤装(ぎそう)や機能試験を行う「艤装(ぎそう)ライン」から成る。構造ラインで完成した機体は一度工場の外に出て、艤装ラインに入る。各ライン6機ずつ、計12機分の作業が同時に進められる。
MRJは、メーカー標準座席数が88席の「MRJ90」と、76席の「MRJ70」の2機種で構成。エンジンはいずれも低燃費や低騒音を特長とする、米プラット・アンド・ホイットニー製のギヤード・ターボファン・エンジン(GTFエンジン)「PurePower PW1200G」を採用する。
26日は、構造ラインにMRJの6号機と7号機、MRJ70の飛行試験初号機となる8号機が、艤装ラインにはローンチカスタマーである全日本空輸(ANA/NH)のカラーリングが施された飛行試験5号機(登録番号JA25MJ)が置かれていた。
6号機と7号機は胴体と主翼の結合まで終わり、水平尾翼や垂直尾翼が取り付けられる前の状態で、MRJ70の飛行試験初号機は胴体の結合のみ終えた状態だった。
ANA塗装の飛行試験5号機は、設計変更が進んでいることから、機器配置の見直しなどに使う。このため当面は飛行試験に投入せず、最終組立工場内で作業を進めていく。
6号機は構造試験に転用するため、飛行しない。7号機は設計変更を反映した状態で飛行する計画で、量産機として航空会社へ引き渡すかは現時点で未定となっている。
また、最終組立工場の向かいには、道路を挟んで塗装工場を建設。3月に建屋が完成した。量産機は最終組立工場を出ると、塗装工場で各航空会社のカラーリングが施される。26日はANA塗装の飛行試験5号機が置かれていたが、量産が始まるとカラーリングが施された機体が最終組立工場で見られることはない。
MRJの最終組立工場は、ボーイングやエアバスの工場と同様、一般の来場者が見学できるようにする。26日の会見で、MRJのチーフエンジニアである三菱航空機の岸信夫副社長は、「秋口には一般公開したい」と語った。
三菱航空機の親会社である三菱重工は1月23日、MRJの量産初号機の納入時期について、5度目の延期となる2020年半ばにすると発表。納入の半年前にあたる、2020年初頭までに、機体の安全性を国が証明する型式証明(TC)の取得を目指す。
*最終組立工場の撮影が全面禁止のため、三菱航空機からの提供写真のみとなります。
構造ライン
艤装ライン
塗装工場
パリ航空ショー出展へ
・MRJ、パリ航空ショーで地上展示へ(17年4月27日)
・MRJ、パリ航空ショー出展検討 水谷社長「試験最優先」(17年4月20日)
・【スクープ】MRJ、ANA塗装でパリ航空ショー出展へ 3号機塗り替え(17年4月9日)
宮永社長直轄で対応
・三菱航空機、新社長に水谷常務 三菱重工・宮永社長「グループ全体でMRJ推進」(17年2月2日)
・「素材技術で差別化」特集・岐路に立つMRJ、問われる総合力(17年1月24日)
・MRJ、初号機納入2020年半ばに 5度目の延期(17年1月23日)
・岸副社長「経験不足」特集・MRJはなぜ納入遅れになるのか(15年12月25日)
米国に着く3号機
・MRJ、3号機が米国到着 4機で飛行試験、5号機は設計変更用に(17年4月3日)
・MRJ、飛行試験3号機が初飛行成功(16年11月22日)
最終組立工場
・完成間近の機体見学も 写真特集・MRJ最終組立工場(16年3月12日)
・三菱航空機、MRJの最終組立工場公開 見学通路も設置(16年3月10日)