エアバス, エアライン, 機体, 解説・コラム — 2017年4月10日 09:10 JST

「一等航空整備士はスタートライン」 特集・ピーチ社員から見た就航5周年(3)新卒1期の整備士、和田尚子の場合

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 4月に入り、国内の航空会社では新卒の新入社員を迎える入社式が開かれた。3月1日に就航5周年を迎えたピーチ・アビエーション(APJ/MM)も新入社員を迎えたが、総合職の新卒採用は2018年度からだ。

 これまでピーチでは、ほかの航空会社での業務経験者や、異業種での体験を生かせる人を採用してきた。その中で、就航当初から新卒採用にこだわってきたのが、自社で養成するパイロットと整備士だ。業界全体で人材が不足しているため、経験者採用だけでは、やがて行き詰まるとの判断からだった。

新卒整備士1期としてピーチに入社した和田さん。「一等航空整備士の資格はスタートラインです」=17年3月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 本特集では、就航当時からピーチに在籍するさまざまな職種の社員に、入社に至ったきっかけや、5年間の仕事を振り返ってもらう。過去2回は、ブランドや社内システムに携わる、オフィスでの仕事が中心の社員に登場してもらった。今回から3回は、実際に飛行機を飛ばす立場の社員に話を聞いていく。

 第3回目は、新卒で入社した整備士、整備本部整備部の和田尚子。就航1カ月後の2012年4月1日入社の和田は、国家資格である一等航空整備士を2016年12月に取得し、日々の整備にあたっている。

 新卒の和田にとって、ピーチはどのような会社に見えたのだろうか。(文中敬称略)

*第1回:「格納庫って何ですか?」から始まった
*第2回:「お金と時間かかるFAXって何?」
*第4回:「A320で編隊飛行できるのはピーチだけ」
*最終回:「飛行機1機飛ばすって大変なんや」

—記事の概要—
アグレッシブな会社
一等航空整備士はスタートライン
目指すは慌てないマルチタスクな整備士

アグレッシブな会社

 和田は大学で就職活動中に、ピーチの新卒整備士向けの会社説明会に出席。入社試験を受けようと決めた。「当時はまだ社名がA&F Aviation株式会社でしたね。今から航空会社を作り上げていくんだ、とアグレッシブな会社だなと感じました」と、第一印象を話す。

関空に駐機されたピーチのA320の2号機と3号機。初便に充てられた初号機を含めて3機体制からスタートした=12年3月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 「大手にはない考え方で、一等航空整備士の資格を取っていきましょう、という考え方も魅力を感じました」と、自分たちなりの考え方で整備士を育てていく点も、好印象だった。

 ピーチが就航した当時の機材は、エアバスA320型機(1クラス180席)が3機。これらを25人ほどの整備士たちが整備していた。「新造機が来ると、ワーッと盛り上がっていましたね。人数が少なくて忙しいけれど、みんながこうしたいという目標を持って仕事をしていました」と、自分の成長とともに、会社が大きくなっていく様子を体感していた。

 会社がスタートしたばかりで、人手も限られていたことは、新卒の和田にとって好機だった。現在では訓練体制が確立され、現場に出られるのは入社1カ月後。しかし、当時は入社3週目には現場に入っていた。

 最初は先輩整備士の手元をライトで照らす、ライト当てから始まる。駆け出しの和田は、先輩の仕事を見ながら、作業準備の重要性を感じ取っていく。「ツールやパーツがそろっていれば、作業がしやすい。このツールをこう使って楽に作業していたなと、先輩から技を盗んでいました」と振り返る。

 他社の整備士と話をしていても、自分たちは新人の時から機体にさわれる機会が多いと感じてた和田。海外の整備委託先へ出した機体の領収検査なども、早いうちに経験した。新人がベテランに同行し、機長や一等航空整備士とのやり取りを間近で見たことが、日ごろの整備作業に役立っているという。

一等航空整備士はスタートライン

 ピーチの新卒整備士たちは、2016年から一等航空整備士の資格を取り始めた。和田は2年目の夏から、仕事の合間に勉強を始めた。

ピーチの格納庫に駐機されたA320。中学校の修学旅行で漠然とかっこいいと感じた飛行機を今は整備する立場になった=16年11月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 「試験は大きく分けると基本作業と専門知識の二つあります。ドリルの扱いやリベット打ちといった基本作業に合格すると、A320などの専門的な知識を問われます。なぜこの部品が付いているのかを、背景も含めて説明するんです」と、試験の概要を話す。

 ピーチの整備士は、4交代制で働いている。午前8時30分から午後7時までの日勤、午後4時から翌日午前2時までの遅番、午後7時から午前9時までの夜勤、午前0時から午前9時までのシフトと、便数が減る夜に人を多く割り当てている。こうした仕事の合間に勉強するため、始発で出勤し、終電で帰宅するような日も多かったという。

 一等航空整備士の国家資格を取得し、何か変わったことはあったのだろうか。和田は「まわりが見えるようになってきました」と話す。整備以外の部署にも目を向けることの重要性を感じ、「今までやってきた仕事への責任が重くなりました。見方が違ってきましたね」と、気を引き締める。

 中学校の修学旅行で空港の整備工場(格納庫)を見学し、かっこいいなと漠然と思ったことから、整備士を目指したという和田。「一等航空整備士の資格は、スタートラインです」と話す和田は、整備の現場で重要だと感じているのが、チームワークとコミュニケーションだという。

 「“ほうれんそう”は大事ですね。後輩から言われて気づくこともありますし、気がついたら言うことが大切。安全のためには立ち止まることが必要で、目上の人でも後輩でも、何かあれば言うようにしています」と、仕事の基本を徹底することの重要性を指摘する。

 こうした仕事の基礎を重視するだけではなく、道具類を効率良く使う方法を、整備士全体で考えるなど、仕事を効率良く進めるかにも目を向けている。

目指すは慌てないマルチタスクな整備士

 ピーチ初の新卒整備士として入社し、一等航空整備士の資格も取得した和田は、これからどんな整備士を目指すのだろうか。

 「常に安全について考えられ、不具合があった時に慌てずに対応できる整備士になりたいです」と話す和田は、人数が限られた職場ゆえ、「大手では板金など仕事が分かれますが、ピーチではいろいろなことをみんなでやっているので、マルチタスクな整備士になりたいですね」と、少数精鋭の整備部門の中核を担う整備士を目指す。

 そして最後に、こう付け加えた。「現場だけではなく、スタッフや乗員、客室にも目が行く柔軟な対応ができるようになりたいです」。

つづく

関連リンク
ピーチ・アビエーション

特集・ピーチ社員から見た就航5周年(全5回)
(1)「格納庫って何ですか?」から始まった ブランドマネジメント・中西理恵の場合(17年3月14日)
(2)「お金と時間かかるFAXって何?」 システムストラテジスト、坂本崇の場合(17年3月17日)
(4)「A320で編隊飛行できるのはピーチだけ」 元アクロバット操縦士、横山真隆の場合(17年5月9日)
(5)「飛行機1機飛ばすって大変なんや」 客室乗務員、坂口優子の場合(17年6月8日)

特集・ピーチ井上CEO就航5周年インタビュー
前編 「プロ集団じゃないとLCCは成立しない」(17年3月6日)
後編 「ピーチ変わるな、もっと行け!」(17年3月8日)

就航5周年
井上CEO「アジアで勝てるのはピーチだけ」 ANAHD子会社化、独自性に磨き(17年3月2日)
ピーチ、就航5周年迎える CAが記念品プレゼント(17年3月1日)
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