エアライン, 空港, 解説・コラム — 2017年3月2日 11:20 JST

井上CEO「アジアで勝てるのはピーチだけ」 ANAHD子会社化、独自性に磨き

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 3月1日で就航5周年を迎えたピーチ・アビエーション(APJ/MM)の井上慎一CEO(最高経営責任者)は1日、Aviation Wireの単独インタビューに応じ、ANAホールディングス(ANAHD、9202)が4月に連結子会社化後も、現在の独自性を堅持する姿勢を改めて示した。国内線では、今夏に第3拠点化する仙台空港から、福岡への就航などを検討していく姿勢を示唆した。

関西空港で開いた就航5周年会見で現状を説明するピーチの井上CEO=17年3月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

「ANAでは出来ないことをやる」

 ピーチはANAHDの持分法適用会社で、同社の出資比率は38.7%だったが、2月24日に連結子会社化すると発表。残る株主2社から4月10日に304億円で株式を取得し、67.0%に引き上げて子会社化する。

関空第2ターミナルで国内線の乗客に記念品を手渡すピーチの客室乗務員=17年3月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ANAHD以外の株主は、香港の投資ファンド「ファーストイースタンアビエーションホールディングス(FE)」と、日本の「産業革新機構(INCJ)」の2社。これまでの出資比率はANAHDが38.7%、FEが33.3%、INCJが28.0%だった。ANAHDが2社から株式の一部を取得後は、ANAHDが67.0%、FEが33.3%、INCJが15.1%となる。

 ピーチの井上CEOは、「ANAでは出来ないことをやるため、社内ベンチャーで始まったのがピーチ。アジアの航空会社と戦って勝てる日本の航空会社はピーチ以外にないということで、ANAHDの増資が決まった」と、子会社化の経緯を説明。就航10年後は北東アジアのリーディングLCCを目指す。

 子会社化について、井上CEOは「ピーチの角(かど)がとれるのか、井上はクビになるのかと社外から聞かれたが、まったく変わらない」と述べ、「連結化されたからと安心してはだめ。海で言えば湾内から外海に出るようなもので、波も高いし助けもなかなか来ない。社員ひとり一人が自立する必要がある」と語った。

関西空港で開いた会見で握手を交わすANAホールディングスの片野坂社長(中央右)とピーチの井上CEO=17年2月24日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 「(子会社化で)何をやらないかを明確に決めた。システム統合やコードシェアはやらない。アライアンスは論外。お客様の期待値がANAとピーチは違う。角がとれれば普通の航空会社に近づいてしまう。益々とんがらないとだめで、それがANAHDの価値向上につながる」と、独自性に磨きを掛けていくと明言した。

 ピーチは今夏に仙台空港を第3拠点化し、2018年度に新千歳空港を第4拠点化する。新千歳は中国や台湾、韓国への国際線や北海道外からの国内線に加え、北海道内を結ぶ地域間路線の開設を目指す。仙台と新千歳からは、上海への就航を計画している。

 今後の路線展開について井上CEOは、「インバウンドが増え、国内線の乗り継ぎが増えている。仙台から福岡は(需要が)あるのではないか」と、訪日客が仙台から九州へ乗り継ぐ国内線需要を取り込む考えを示した。

 一方、海外での拠点化については、「条件が整えば海外もやりたいが、空港のスロット(発着枠)が一杯だ」と述べるにとどめた。

女性比52%

 国内初のLCCであるピーチは2012年3月1日、1路線目となる関西-札幌線と2路線目の福岡線を同時開設。初便は札幌行きMM101便だった。当時の機材数は、ブランドカラーで深い赤とピンクの中間色「フーシア」を基調としたエアバスA320型機(1クラス180席)が3機で、片道運賃は福岡線が3780円から1万1780円、札幌線が4780円から1万4780円と、大手の半分以下に設定した。

5年前、関空を出発したピーチの就航初便札幌行きMM101便=12年3月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 現在の路線数は国内線14路線と国際線13路線の計27路線で、18機のA320で運航。就航以来片道4時間以内を基準に、新路線を開設してきたが、今年2月19日には、往路のフライト時間が約5時間で、同社最長路線となる那覇-バンコク線を1日1往復で就航させた。

 また、本拠地とする関西空港を発着する定期旅客便の便数は、国内線と国際線ともにピーチが最多となっている。

 累計搭乗者数は、就航約9カ月後の2012年11月29日に100万人を達成。200万人は約5カ月後の2013年5月7日に、500万人は2014年4月28日に達し、2015年8月6日の成田発関西行きMM321便で、1000万人の大台に乗せた。ピーチによると、5年間で1700万人以上が利用したという。

 現在の利用者層は、男性が48.2%で女性が51.8%、年齢層は20-30代が半数を占める。外国人比率は国際線は71.5%、台湾路線では9割にのぼる。帰省や親族訪問、介護など、観光以外の利用が目立つのが特徴だという。

 ピーチは3月1日から31日まで、就航5周年記念で日替わりセールを実施。3月3日の場合、「仁義なき、ジンギスカンとの戦い」と題して、札幌線でジンギスカンを食べに行くことを提案し、航空券を片道3555円から販売する。路線ごとにセールを展開することで、新たな利用者開拓を目指す。

*井上CEOへのインタビュー詳報はこちら

関連リンク
ピーチ・アビエーション

特集・ピーチ井上CEO就航5周年インタビュー
前編 「プロ集団じゃないとLCCは成立しない」(17年3月6日)
後編 「ピーチ変わるな、もっと行け!」(17年3月8日)

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