全日本空輸(ANA/NH)が国際線に投入するエアバスA320neoの初号機(登録番号JA211A、MSN7401)が12月17日午後5時8分、羽田空港に到着した。国内の航空会社が受領した最初のA320neoで、国内線に不定期投入後、2017年1月から中国線など近距離国際線に就航する。
A320neo(ニュー・エンジン・オプションの略)は、小型機A320の発展型。新型エンジンと大型のウイングチップ「シャークレット」を取り付けたことで燃費を15%以上改善し、2020年までに20%へ引き上げる。航続距離は6280キロ、最大離陸重量は79トン、最大運用高度は1万2100メートル(3万9698フィート)となっている。
ANAは2種類あるエンジンのうち、米プラット・アンド・ホイットニー製「PW1127G-JM」を選定。PW1100G-JMは、三菱航空機が開発中の「MRJ」が採用したものと同じ仕組みの「GTF(ギヤード・ターボファン)エンジン」で、ギヤを介してエンジンファンの回転数を制御することで、低燃費と低騒音を実現している。
ANAを傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)はA320neoを7機、長胴型のA321neoを26機発注。A320neoは2018年度にかけて、A321neoは2017年度から2023年度に受領する。A320neoは、全機が国際線仕様機となる。このほかに、国内線用としてA321ceo(従来型A321)を4機発注しており、今年11月12日から就航している。
座席数は2クラス146席で、ビジネス8席とエコノミー138席。1列あたりの座席配列は、ビジネスが2席-2席、エコノミーが3席-3席で、ビジネスは中長距離路線で使う大型機と同様、電動シートを採用。エコノミーは座面を低くすることで、小柄な人でも足つき性を良くした。
また、エコノミーを含む全席に、最新型の機内エンターテインメントシステム(IFE)や電源コンセント、充電用USB端子を設け、大型機並みの装備を小型機にも展開した。
シートピッチはビジネスが50インチ(127センチ)で、エコノミーが31インチ、シート幅はビジネスが20.3インチで、エコノミーが17.5インチ、リクライニングする角度はビジネスが127度、エコノミーが110度。シートメーカーは、ビジネスがレカロ製、エコノミーがゾディアック・シート・US(旧ウェーバー)製を採用した。
IFEは、ANAでは初採用となるゾディアック製「Rave」。タッチパネル式モニターはビジネスクラスで12インチを採用するなど、従来よりも大型化した。また、機内インターネット接続サービス「ANA WiFi サービス」にも対応している。
羽田に到着した初号機は、11月25日に製造され、12月15日(日本時間16日)に独ハンブルクで引き渡された。
機体を空輸するフェリーフライトの便名はNH9398便で、ハンブルクを16日午後6時20分に出発して、経由地であるロシアのノボシビルスクには17日午前6時31分に到着。給油後の午前8時35分に出発し、17日午後5時に羽田のA滑走路(RWY34L)に着陸。202番スポットに午後5時8分に到着した。駐機場では、横断幕を手にした社員が、フェリーフライトを担当した3人の機長らを出迎えた。
初号機を操縦した本田敦司機長は、「エンジンがパワフル。エアバス機は良く出来ていて、A320やA321ceoと比べて違和感がない」と太鼓判を押した。ANAのA320neoが搭載するエンジンPW1127G-JMの推力は1万2160キログラム(2万6808ポンド)が2基で、ANAが国内線で運航している現行のA320が搭載するCFMインターナショナル製CFM56-5A1の推力は、1万1340キログラム(2万5000ポンド)が2基となっている。
ANAでは、1月中旬から近距離国際線に投入予定。12月内は、国内線に不定期での投入を予定している。
A320neoは、日本の航空会社ではANAHDが出資するLCCのピーチ・アビエーション(APJ/MM)も、今年11月18日に10機発注。2019年4-6月期に初号機を受領し、既存機の置き換えを進める。
*写真は18枚(到着→機内→外観)。
*写真特集の前編はこちら。
*写真特集の後編はこちら。
*初便の記事はこちら。
写真特集・ANA A320neo初号機就航
第1回 大型機並み装備のビジネスクラス(16年12月27日)
第2回 狭小空間生かしたギャレーと化粧室(16年12月29日)
第3回 新型エンジンで低燃費低騒音(16年12月30日)
国内線初便就航
・ANA、日本初のA320neo就航 羽田から関空、1月から国際線(16年12月26日)
写真特集・ANA A320neo初号機(羽田到着時)
前編 近距離ビジネスも電動シート(16年12月18日)
後編 小型機だけど大型低燃費エンジン(16年12月20日)
ANAのA320neo関連
・ANA、A320neo初号機を受領 1月から近距離国際線(16年12月16日)
・国際線大型機の装備、小型機に 写真特集・ANAのA320neo新シート(16年11月12日)
・ANAのA320neo、初号機が塗装完了(16年11月1日)
・ANA、A321neoなど7機正式発注(15年4月2日)
・ANA、777-9XとA321neoなど70機正式発注 16年度から受領(14年7月31日)
ANAのA321ceo関連
・電動シートのプレミアムクラス 写真特集・ANA A321ceo国内線仕様(前編)(16年11月17日)
・初号機はハンブルク製 写真特集・ANA A321ceo国内線仕様(後編)(16年11月18日)
・ANAのA321ceo初便、宮崎から帰着 国内線初の電動シート(16年11月12日)
・ANA、A321ceo初号機就航 羽田から宮崎へ(16年11月12日)
・ANA、A321ceo初号機が羽田到着 上級クラスに電動新シート(16年10月31日)
・ANA、777-9XとA321neoなど70機正式発注 16年度から受領(14年7月31日)
A320neo関連
・ピーチ、A320neo導入 19年から10機、将来100機体制に(16年11月18日)
・エアバス、A320neo初号機納入 ルフトハンザに(16年1月21日)
・A320neo、EASAとFAAから型式証明を同時取得(15年11月25日)
・A320neo、LEAP-1A搭載機が初飛行 CFMの新エンジン(15年5月20日)
・エアバス、A320neoの初飛行成功(14年9月26日)