三菱航空機が開発を進めるリージョナルジェット機「MRJ」の量産初号機を試験機に転用する、とする一部報道について、同社は12月12日、「個別事案に対して発表する段階ではない」とした。量産初号機を受領予定のローンチカスタマーのANAホールディングス(ANAHD、9202)は「何も聞いていない」とコメントした。
量産初号機を試験機に
中日新聞は12月11日、AHAHDに引き渡す量産初号機を試験機に転用すると報道。不具合の改善には、従来の5機の飛行試験機では足りなくなると判断したという。
三菱航空機は「技術的な課題に向け、対応策を練っている」とした。また、量産初号機の完成時期についても明らかにせず、「機体製造には、一般的には2年程度かかる」との回答に留めた。量産初号機は2016年6月に最終組立工程に入り、県営名古屋空港(小牧)に隣接する最終組立工場に搬入。胴体結合などに着手している。
飛行試験機は5機
MRJの試験機は地上で強度試験を実施する強度試験機2機と、実際に飛行して試験を実施する飛行試験機5機を製造。地上試験機に関しては、11月に全機静強度試験が完了した。
飛行試験機は、初号機(登録番号JA21MJ)から4号機(JA24MJ)まで計4機を、米国の飛行試験拠点である、米ワシントン州モーゼスレイクにあるグラント・カウンティ国際空港に持ち込み、飛行試験を重ねる。
このうち初号機が9月に、4号機が11月に、米国にそれぞれ到着。2号機(JA22MJ)と3号機(JA23MJ)も年内の米国へのフェリーを目指しているが、越年する可能性が高い。
2号機は5月、3号機は11月に、それぞれ初飛行に成功している。全日本空輸(ANA/NH)の塗装を施した5号機(JA25MJ)は年明けの2017年にも初飛行する見通しで、国内での飛行試験に投入する。
三菱航空機は5号機と合わせ、2018年ごろまで飛行試験を実施。2018年前半には機体の安全性を証明する、国土交通省航空局(JCAB)の型式証明を取得する。ANAHDへの量産初号機引き渡しは、2018年中ごろを計画しているが、試験の進捗によっては、1年程度の遅れが生じる可能性もある。
関連リンク
三菱航空機
ANAホールディングス
社長直轄の委員会設置
・三菱重工、MRJの社長直轄委員会を設置 納期変更せず(16年11月30日)
16年11月に全機静強度試験完了
・MRJ、全機静強度試験を完了(16年11月30日)
飛行試験機の初飛行
・MRJ、飛行試験3号機が初飛行成功(16年11月22日)
・MRJ、4号機が初飛行 名古屋から試験空域へ(16年9月25日)
・MRJ、2号機の初飛行成功(16年5月31日)
・MRJが初飛行 YS-11以来53年ぶり、”11″並びの日(15年11月11日)
初号機と4号機は米国へ
・MRJ、4号機が米国到着 飛行試験2機体制に(16年11月21日)
・3度目の正直、MRJが新千歳出発 米国へロシア経由(16年9月27日)
【お知らせ】
タイトルをYahoo!ニュース配信記事と統一しました。(16年12月12日 15:47 JST)